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第九話 訪れる転機
第九話 七
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花見から一週間も経たないうちに戦いが起こった。あの花見がいかに束の間の平穏の中に成り立っていたか、あかりは身に沁みて感じた。
(狐火と言霊を意識して……)
あかりは咒言を唱えようとしたが、その前に式神が飛んでくる。同時に青い光が閃いた。
「心身護神、急々如律令」
「ありがとう、結月」
「おれが、支援する。あかりは、そのまま続けて」
あかりは頷くと、再び意識を集中させた。あかりの後方では昴が結界を張り直していて、前方では秋之介が式神を払っていた。側では結月が霊符を発動させるのが気配でわかったが、次第にそれらもあかりの意識からはじき出された。
(朱咲様、どうか聞き届けてください……!)
あかりは大きく息を吸い込んだ。
「奇一奇一たちまち雲霞を結ぶ、宇内八方御方長南、たちまち急戦を貫き、南都に達し、朱咲に感ず、奇一奇一たちまち感通」
一言一句に想いをのせる。一挙手一投足に意識を払う。
「急々如律令!」
業も邪気も燃やし尽くすような狐火をまとった霊剣で、あかりは周囲を大きく斬り払った。赤い光の波紋が広がり、それにあてられた式神が悲鳴もなく浄化されていく。
感触からして邪気払いは成功だといえた。
式神使いも変事を察したのか慌てて逃げる。その後を秋之介と昴が追っていった。あかりと結月も彼らに続こうと足を踏み出そうとした。しかし、遮る黒い影に止まらざるをえなかった。
「あのときの妖狐……⁉」
黒い影の正体は三月ほど前に見た黒い妖狐だった。
だが、明らかに様子が違う。あのときは陰の国の式神使いに追われており、あかりをじっと見つめるだけだったが、今回はぼんやりとした敵意を感じる。
あかりと結月が警戒態勢をとると、妖狐の背後から草を踏みしめる音がして、人が現れた。上下とも黒い袴姿で目深に外套につく帽子をかぶっている。恰好から陰の国の式神使いだとすぐにわかったが、発せられる気配は尋常でなく重苦しい。あかりたちは数えきれないほどの敵を相手にしてきたが、こんな気の式神使いに出会ったことはなかった。
「……」
式神使いは無言で妖狐を見下ろす。あまりに冷たい視線に傍観者のあかりの背筋ですら凍えるようだった。
その瞬間、ぼんやりとしていた敵意が明確な害意に変わった。
妖狐が弾丸のようにあかりたち目がけて突っ込んでくる。あかりはとっさに霊剣で攻撃を弾き返した。結月も護符を展開する。
退いて距離をとるも、妖狐はお構いなしに再び攻撃を仕掛けてくる。容赦ない連撃にあかりは守りに徹する他、為す術がない。隙を見出して式神使いに目をやったが表情は隠れてうかがい知れず、悠然と佇んでいるだけだった。
(私と結月だけじゃ、厳しい……⁉)
今の実力では式神使いも倒せず、妖狐を式神から解放することも難しいのが現実だった。
(この妖狐だけでも、救ってあげたいのに……っ!)
しかし剣を振るったら最後、この式神は魂ごと消滅してしまいそうな気がした。あかりの直感ではあったが、まず間違いないだろうと確信していた。
結月は戦いの隙にあかりをちらと見やった。
「あかり。ここはひかないと、まずい、かも」
横目で見ただけであったが、結月にも余裕がなさそうだった。あかりは頷くと、止まない猛攻を退けながら相手に隙ができるのを待つことにした。
(狐火と言霊を意識して……)
あかりは咒言を唱えようとしたが、その前に式神が飛んでくる。同時に青い光が閃いた。
「心身護神、急々如律令」
「ありがとう、結月」
「おれが、支援する。あかりは、そのまま続けて」
あかりは頷くと、再び意識を集中させた。あかりの後方では昴が結界を張り直していて、前方では秋之介が式神を払っていた。側では結月が霊符を発動させるのが気配でわかったが、次第にそれらもあかりの意識からはじき出された。
(朱咲様、どうか聞き届けてください……!)
あかりは大きく息を吸い込んだ。
「奇一奇一たちまち雲霞を結ぶ、宇内八方御方長南、たちまち急戦を貫き、南都に達し、朱咲に感ず、奇一奇一たちまち感通」
一言一句に想いをのせる。一挙手一投足に意識を払う。
「急々如律令!」
業も邪気も燃やし尽くすような狐火をまとった霊剣で、あかりは周囲を大きく斬り払った。赤い光の波紋が広がり、それにあてられた式神が悲鳴もなく浄化されていく。
感触からして邪気払いは成功だといえた。
式神使いも変事を察したのか慌てて逃げる。その後を秋之介と昴が追っていった。あかりと結月も彼らに続こうと足を踏み出そうとした。しかし、遮る黒い影に止まらざるをえなかった。
「あのときの妖狐……⁉」
黒い影の正体は三月ほど前に見た黒い妖狐だった。
だが、明らかに様子が違う。あのときは陰の国の式神使いに追われており、あかりをじっと見つめるだけだったが、今回はぼんやりとした敵意を感じる。
あかりと結月が警戒態勢をとると、妖狐の背後から草を踏みしめる音がして、人が現れた。上下とも黒い袴姿で目深に外套につく帽子をかぶっている。恰好から陰の国の式神使いだとすぐにわかったが、発せられる気配は尋常でなく重苦しい。あかりたちは数えきれないほどの敵を相手にしてきたが、こんな気の式神使いに出会ったことはなかった。
「……」
式神使いは無言で妖狐を見下ろす。あまりに冷たい視線に傍観者のあかりの背筋ですら凍えるようだった。
その瞬間、ぼんやりとしていた敵意が明確な害意に変わった。
妖狐が弾丸のようにあかりたち目がけて突っ込んでくる。あかりはとっさに霊剣で攻撃を弾き返した。結月も護符を展開する。
退いて距離をとるも、妖狐はお構いなしに再び攻撃を仕掛けてくる。容赦ない連撃にあかりは守りに徹する他、為す術がない。隙を見出して式神使いに目をやったが表情は隠れてうかがい知れず、悠然と佇んでいるだけだった。
(私と結月だけじゃ、厳しい……⁉)
今の実力では式神使いも倒せず、妖狐を式神から解放することも難しいのが現実だった。
(この妖狐だけでも、救ってあげたいのに……っ!)
しかし剣を振るったら最後、この式神は魂ごと消滅してしまいそうな気がした。あかりの直感ではあったが、まず間違いないだろうと確信していた。
結月は戦いの隙にあかりをちらと見やった。
「あかり。ここはひかないと、まずい、かも」
横目で見ただけであったが、結月にも余裕がなさそうだった。あかりは頷くと、止まない猛攻を退けながら相手に隙ができるのを待つことにした。
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