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第一〇話 夢幻のような
第一〇話 二
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小競り合いは多発したが決め手となるような大きな戦いは起こることなく、水無月に入った。梅雨のため連日雨が降り続いていたが、昨夜から天気は回復し、今や青空がのぞいている。久しぶりの太陽の光に、今日のあかりはご機嫌だった。
「なんだか、あかり、嬉しそう」
稽古の合間に、いつものように四人揃って休憩する。今日は茎茶とどら焼きが休憩のお伴だ。
「あ、わかる?」
「うん」
あかりはにっこりとした笑みを結月に向けた。結月も嬉しそうに微かに笑む。結月の向こう側では、秋之介がにやにやとした笑みを浮かべていた。
「今日のどら焼きは美味いもんな」
「それだけだと私が食い意地はってるみたいじゃない」
「違うのか?」
頬を膨らますあかりに、秋之介はきょとんとした。
「それだけじゃないよ! いい天気だなって思ってたの!」
あかりの隣で昴は小さな笑みをこぼした。
「晴れることなんて、ここ一週間なかったしね」
「晴れると気分も明るくなるでしょ?」
あかりはそう言うと、どら焼きをまた一口食べた。しっとりした黒糖生地と上品な甘さのこし餡がとても美味しい。自然と頬が緩み、幸せな心地になった。間に爽やかな茎茶を挟むと、いくらでもどら焼きが食べられそうな気がした。
秋之介のもの言いたげな視線は無視して、あかりはお茶の時間を楽しんでいた。
すると、裏庭に時人が現れた。
「昴様。こちらにいらしたのですね」
「時人くん。どうかした?」
時人は一礼すると、あかりを見てから昴に視線を戻した。
「御上様の使者から言伝を賜りました。あかり様と昴様に中央御殿に参内するようにと」
「私も?」
たいてい司に呼ばれるのは昴ひとりなので、意外な指名にあかりは目をまるくした。時人はあかりの問いにはっきりと頷く。昴は立ち上がるとあかりを促した。
あかりは急いでどら焼きを頬張ると、お茶の一滴も残さず平らげ「ごちそうさまでした!」と言って席を立った。
「なんだか、あかり、嬉しそう」
稽古の合間に、いつものように四人揃って休憩する。今日は茎茶とどら焼きが休憩のお伴だ。
「あ、わかる?」
「うん」
あかりはにっこりとした笑みを結月に向けた。結月も嬉しそうに微かに笑む。結月の向こう側では、秋之介がにやにやとした笑みを浮かべていた。
「今日のどら焼きは美味いもんな」
「それだけだと私が食い意地はってるみたいじゃない」
「違うのか?」
頬を膨らますあかりに、秋之介はきょとんとした。
「それだけじゃないよ! いい天気だなって思ってたの!」
あかりの隣で昴は小さな笑みをこぼした。
「晴れることなんて、ここ一週間なかったしね」
「晴れると気分も明るくなるでしょ?」
あかりはそう言うと、どら焼きをまた一口食べた。しっとりした黒糖生地と上品な甘さのこし餡がとても美味しい。自然と頬が緩み、幸せな心地になった。間に爽やかな茎茶を挟むと、いくらでもどら焼きが食べられそうな気がした。
秋之介のもの言いたげな視線は無視して、あかりはお茶の時間を楽しんでいた。
すると、裏庭に時人が現れた。
「昴様。こちらにいらしたのですね」
「時人くん。どうかした?」
時人は一礼すると、あかりを見てから昴に視線を戻した。
「御上様の使者から言伝を賜りました。あかり様と昴様に中央御殿に参内するようにと」
「私も?」
たいてい司に呼ばれるのは昴ひとりなので、意外な指名にあかりは目をまるくした。時人はあかりの問いにはっきりと頷く。昴は立ち上がるとあかりを促した。
あかりは急いでどら焼きを頬張ると、お茶の一滴も残さず平らげ「ごちそうさまでした!」と言って席を立った。
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