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第一〇話 夢幻のような
第一〇話 一八
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就寝の準備まで済ませたあかりは自室の布団の上で、開いた障子の向こうから射しこむ月明かりにかんざしを透かして眺めていた。
(本当にきれいだな)
淡く空色に色づいたガラスの朝顔は月光を受けて青白い光を放っていた。儚くも美しい光は、あかりに一抹の寂しさを呼び起こさせた。
(もし、お母様やお父様がいたら……)
毎年のように両親に祝われていた頃がふと懐かしく思えた。あの頃は来る年来る年、祝われることが当然だと思っていた。一三歳の誕生日会が朱咲家の皆に祝われる最後の年になるだなんて思いもよらなかったのだ。
だからこそ、生き残った者たちに、誰よりも幼なじみたちに祝ってもらえた今日という日が尊く思えた。もう、失いたくないとも。
かざしたかんざしをじっと見つめて、あかりはひとり、胸の内で願った。
(来年も、結月と秋と昴に祝ってほしい)
明日になればまた任務が待っている。それほどまでに現実は芳しくないことはわかっているが、今日くらいはそんな甘い未来を夢想しても許されるだろう。
夢幻のような一日を心にしっかりと刻み込み、あかりは眠りについた。
(本当にきれいだな)
淡く空色に色づいたガラスの朝顔は月光を受けて青白い光を放っていた。儚くも美しい光は、あかりに一抹の寂しさを呼び起こさせた。
(もし、お母様やお父様がいたら……)
毎年のように両親に祝われていた頃がふと懐かしく思えた。あの頃は来る年来る年、祝われることが当然だと思っていた。一三歳の誕生日会が朱咲家の皆に祝われる最後の年になるだなんて思いもよらなかったのだ。
だからこそ、生き残った者たちに、誰よりも幼なじみたちに祝ってもらえた今日という日が尊く思えた。もう、失いたくないとも。
かざしたかんざしをじっと見つめて、あかりはひとり、胸の内で願った。
(来年も、結月と秋と昴に祝ってほしい)
明日になればまた任務が待っている。それほどまでに現実は芳しくないことはわかっているが、今日くらいはそんな甘い未来を夢想しても許されるだろう。
夢幻のような一日を心にしっかりと刻み込み、あかりは眠りについた。
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