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第一二話 葉月の凶事
第一二話 六
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「……っ‼」
「あかりちゃん‼」
昴は受け身をとり、素早く体勢を整えると、あかりを抱きとめた。
「……」
あかりは何か言おうと口を動かしていたが、言葉は声にならない。
それもそのはず、あかりは妖狐に喉を裂かれたからだ。
昴の腕の中で、あかりの体が重くなっていくのを感じる。触れた指は急速に冷えていった。
昴の結界が破られた今は昴とあかりは炎に囲まれている。熱される皮膚は熱く乾いていくのに、昴の背中には冷たい汗が流れた。
視界の片隅で妖狐が突然取り乱すように暴れ出した。昴は僅かに残った冷静な判断力でやっと集まってきた家臣に指示を出した。
「時人くん達は妖狐を確保して!」
その間にもあかりの状態はどんどん悪くなっていく。次第に瞳の焦点が合わなくなっていくのがわかった。
「あかりちゃん……!」
呼びかけてみてもあかりからは反応が返ってこない。
すると、炎と煙の向こう側から、結月と秋之介が走り寄ってきた。
「あかり……っ‼」
「昴! 一体何が……⁉」
一部始終を見ていたのか、二人は血相を変えていた。自分も似たような顔色だろうことは自覚していたが、ここは最年長らしく振る舞わなければという義務感だけが昴の口を動かした。
「話は後で。ゆづくんは霊符でこのあたりの鎮火をしてくれる? 秋くんには僕の手伝いをしてほしい」
「わかった」
「ああ」
結月と秋之介は一様にあかりの身を案じていたが、まずは昴の指示に従った。
「水神演舞、急々如律令」
青い光とともにさあっと細い雨が降り注ぐ。昴たちの周囲は完全に火が鎮まった。
「秋くん、この布を裂いてくれる?」
昴が懐から取り出した清潔な手ぬぐいを、秋之介は言いつけ通りに細く破った。
昴は血に染まったあかりの首に手をあてる。脈動は微かにだが感じられた。
「病傷平癒、玄舞護神、急々如律令……!」
先ほどの妖狐との攻防で霊力も体力もかなり消耗してしまっていた。大きな力を使うことは辛かったが、目の前のあかりのためなら負担にも思わない。効力を上げるため、指についたあかりの血を『水』の力として利用して術を使う。
昴の思いの強さに比例するように、黒い光が輝きを増した。
それでもなお、あかりの首からは出血が止まらない。同時に傷口から瘴気を感じた。
「ちっ……!」
昴は焦燥から苛立ちに駆られていた。
大規模な術をここで使ってしまったら、自力では邸に戻れないかもしれない。しかしそうも言っていられないあかりの傷の深さに、昴は覚悟を決めた。
秋之介から受け取った布で一度指についたあかりの血を拭うと、昴は自身の親指の腹の皮膚を食い破った。たちまち血が流れ出る。
「青柳、白古、朱咲、玄舞、空陳、南寿、北斗、三体、玉女!」
あかりにまとわりつく瘴気を払ってから、昴はもう一度「病傷平癒、玄舞護神、急々如律令!」と唱えた。
黒い光は輝くというよりかは閃くといった表現の方が近く、先ほどよりも眩しかった。
「あかりちゃん‼」
昴は受け身をとり、素早く体勢を整えると、あかりを抱きとめた。
「……」
あかりは何か言おうと口を動かしていたが、言葉は声にならない。
それもそのはず、あかりは妖狐に喉を裂かれたからだ。
昴の腕の中で、あかりの体が重くなっていくのを感じる。触れた指は急速に冷えていった。
昴の結界が破られた今は昴とあかりは炎に囲まれている。熱される皮膚は熱く乾いていくのに、昴の背中には冷たい汗が流れた。
視界の片隅で妖狐が突然取り乱すように暴れ出した。昴は僅かに残った冷静な判断力でやっと集まってきた家臣に指示を出した。
「時人くん達は妖狐を確保して!」
その間にもあかりの状態はどんどん悪くなっていく。次第に瞳の焦点が合わなくなっていくのがわかった。
「あかりちゃん……!」
呼びかけてみてもあかりからは反応が返ってこない。
すると、炎と煙の向こう側から、結月と秋之介が走り寄ってきた。
「あかり……っ‼」
「昴! 一体何が……⁉」
一部始終を見ていたのか、二人は血相を変えていた。自分も似たような顔色だろうことは自覚していたが、ここは最年長らしく振る舞わなければという義務感だけが昴の口を動かした。
「話は後で。ゆづくんは霊符でこのあたりの鎮火をしてくれる? 秋くんには僕の手伝いをしてほしい」
「わかった」
「ああ」
結月と秋之介は一様にあかりの身を案じていたが、まずは昴の指示に従った。
「水神演舞、急々如律令」
青い光とともにさあっと細い雨が降り注ぐ。昴たちの周囲は完全に火が鎮まった。
「秋くん、この布を裂いてくれる?」
昴が懐から取り出した清潔な手ぬぐいを、秋之介は言いつけ通りに細く破った。
昴は血に染まったあかりの首に手をあてる。脈動は微かにだが感じられた。
「病傷平癒、玄舞護神、急々如律令……!」
先ほどの妖狐との攻防で霊力も体力もかなり消耗してしまっていた。大きな力を使うことは辛かったが、目の前のあかりのためなら負担にも思わない。効力を上げるため、指についたあかりの血を『水』の力として利用して術を使う。
昴の思いの強さに比例するように、黒い光が輝きを増した。
それでもなお、あかりの首からは出血が止まらない。同時に傷口から瘴気を感じた。
「ちっ……!」
昴は焦燥から苛立ちに駆られていた。
大規模な術をここで使ってしまったら、自力では邸に戻れないかもしれない。しかしそうも言っていられないあかりの傷の深さに、昴は覚悟を決めた。
秋之介から受け取った布で一度指についたあかりの血を拭うと、昴は自身の親指の腹の皮膚を食い破った。たちまち血が流れ出る。
「青柳、白古、朱咲、玄舞、空陳、南寿、北斗、三体、玉女!」
あかりにまとわりつく瘴気を払ってから、昴はもう一度「病傷平癒、玄舞護神、急々如律令!」と唱えた。
黒い光は輝くというよりかは閃くといった表現の方が近く、先ほどよりも眩しかった。
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