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第一四話 交わす約束
第一四話 四
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さらに秋が深まり、本格的な冬の到来を感じるようになった頃。
この日もあかりは町へ仕事をしに出掛けていた。今日の仕事は北の地にある小さな医院での受付業務だ。あかりの仕事ぶりが評価され、ここに仕事で来るのは今回で三回目だった。
院長は優し気な雰囲気の四〇代の男性だ。彼はふわりとした笑みを湛えて言った。
「あかりちゃんが来てくれると助かるよ。君がいるだけで医院が明るくなる気がする。今日もよろしくね」
あかりは元気よく頷いた。来院する患者は少ないに越したことはないが、ここに来たからには少しでも元気を取り戻してほしいと思う。院長の期待や患者の希望のために、あかりは自分にできることを頑張るつもりでいた。
幸か不幸か、その日の患者数は前回、前々回に比べて多くなっているような気がした。
受付開始から一刻ほど経って、あかりは違和感を抱き、顏を曇らせた。
(やっぱり、気のせいじゃないよね)
当初は考えすぎかと思ったが、今日はいつにも増して目まぐるしい。来院簿に記された名前の数も確実に多かった。
午前中の忙しさをなんとか凌いで、少し遅い昼休憩の時間となった。このときは一度医院自体を閉めてしまうので室内には院長とあかり、数人の職員がいるだけとなった。
あかりがふうと息を吐いていると、休憩室に院長がやってきた。
「お疲れ様、あかりちゃん」
『お疲れ様です』
「今日は朝から忙しかったよね。疲れただろう?」
『疲れたというよりも、患者さんが多いのが気になって……』
顔を曇らせたあかりに、院長は重々しく頷きを返した。
「そうだよね。わたしもそれが気になってね」
あいまいに頷いたあかりはそれきり黙ってしまった。
(……凶兆……)
感覚を研ぎ澄ませてみると僅かにだが空気が濁っていることに気がついた。覚えのありすぎるこの感覚は陰の国から運ばれてくる邪気の気配そのものだった。このくらいならばすぐにこれ以上の悪影響がでることはないだろうが、後で昴に知らせて邪気払いを提案した方が良さそうだ。
それはそれとして、あかりまでいつまでも暗い顔はしていられない。午後からは気持ちを切り替えて業務に集中しようと思った。
この日もあかりは町へ仕事をしに出掛けていた。今日の仕事は北の地にある小さな医院での受付業務だ。あかりの仕事ぶりが評価され、ここに仕事で来るのは今回で三回目だった。
院長は優し気な雰囲気の四〇代の男性だ。彼はふわりとした笑みを湛えて言った。
「あかりちゃんが来てくれると助かるよ。君がいるだけで医院が明るくなる気がする。今日もよろしくね」
あかりは元気よく頷いた。来院する患者は少ないに越したことはないが、ここに来たからには少しでも元気を取り戻してほしいと思う。院長の期待や患者の希望のために、あかりは自分にできることを頑張るつもりでいた。
幸か不幸か、その日の患者数は前回、前々回に比べて多くなっているような気がした。
受付開始から一刻ほど経って、あかりは違和感を抱き、顏を曇らせた。
(やっぱり、気のせいじゃないよね)
当初は考えすぎかと思ったが、今日はいつにも増して目まぐるしい。来院簿に記された名前の数も確実に多かった。
午前中の忙しさをなんとか凌いで、少し遅い昼休憩の時間となった。このときは一度医院自体を閉めてしまうので室内には院長とあかり、数人の職員がいるだけとなった。
あかりがふうと息を吐いていると、休憩室に院長がやってきた。
「お疲れ様、あかりちゃん」
『お疲れ様です』
「今日は朝から忙しかったよね。疲れただろう?」
『疲れたというよりも、患者さんが多いのが気になって……』
顔を曇らせたあかりに、院長は重々しく頷きを返した。
「そうだよね。わたしもそれが気になってね」
あいまいに頷いたあかりはそれきり黙ってしまった。
(……凶兆……)
感覚を研ぎ澄ませてみると僅かにだが空気が濁っていることに気がついた。覚えのありすぎるこの感覚は陰の国から運ばれてくる邪気の気配そのものだった。このくらいならばすぐにこれ以上の悪影響がでることはないだろうが、後で昴に知らせて邪気払いを提案した方が良さそうだ。
それはそれとして、あかりまでいつまでも暗い顔はしていられない。午後からは気持ちを切り替えて業務に集中しようと思った。
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