221 / 388
第一六話 救いのかたち
第一六話 八
しおりを挟む
「ああ。といっても、私たちも多くを知っているわけではないのだけれどね」
春朝はあかりを通してどこか遠くを見つめ、語った。
「天翔くんはまつりちゃんがある日突然拾ってきた狐の妖だった。妖力の強さからおそらく天狐だったのだと思われる。彼は記憶を失っていて、生まれも名前も忘れていた。天翔という名前はまつりちゃんがつけたものだよ」
その後を香澄が引き継ぐ。
「二人は自然と惹かれ合っていったわ。だけれど正体のわからない天翔さんと朱咲家の姫であったまつりとではつり合いがとれないと、周囲から結婚を猛反対された。特に春朝さんと菊助さん、それから珠貴さんは必死だったわね」
「大切な幼なじみなのだから当然だよ。今思えば杞憂というものだろうがね。天翔くんは非常に努力家だったよ。まつりちゃんに見合うようにできることはなんでもやったのではないかな。おかげで周囲も彼を認めるようになった。私もそのひとりだよ」
「その後は知っての通りよ。あかりちゃんが生まれて、父親として頑張っていたわね」
わが父のことながら初めて知ることばかりだった。驚く一方で、しかし疑問が湧く。
「そのお父様の出生と今回の妖狐がどうつながるの?」
天翔の生い立ちを知ったところで、彼の毛色が金から黒に変わるわけではない。問題は何も解決していないではないか。じれったく思いながらあかりが答えを待っていると、春朝が囁くように答えた。
春朝はあかりを通してどこか遠くを見つめ、語った。
「天翔くんはまつりちゃんがある日突然拾ってきた狐の妖だった。妖力の強さからおそらく天狐だったのだと思われる。彼は記憶を失っていて、生まれも名前も忘れていた。天翔という名前はまつりちゃんがつけたものだよ」
その後を香澄が引き継ぐ。
「二人は自然と惹かれ合っていったわ。だけれど正体のわからない天翔さんと朱咲家の姫であったまつりとではつり合いがとれないと、周囲から結婚を猛反対された。特に春朝さんと菊助さん、それから珠貴さんは必死だったわね」
「大切な幼なじみなのだから当然だよ。今思えば杞憂というものだろうがね。天翔くんは非常に努力家だったよ。まつりちゃんに見合うようにできることはなんでもやったのではないかな。おかげで周囲も彼を認めるようになった。私もそのひとりだよ」
「その後は知っての通りよ。あかりちゃんが生まれて、父親として頑張っていたわね」
わが父のことながら初めて知ることばかりだった。驚く一方で、しかし疑問が湧く。
「そのお父様の出生と今回の妖狐がどうつながるの?」
天翔の生い立ちを知ったところで、彼の毛色が金から黒に変わるわけではない。問題は何も解決していないではないか。じれったく思いながらあかりが答えを待っていると、春朝が囁くように答えた。
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
8
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる