245 / 390
第一七話 諦めない未来
第一七話 八
しおりを挟む
「天地の父母たる六甲六旬十二時神・青柳・蓬星・天上玉女・六戊・蔵形之神、我が母神たる朱咲に願い奉る」
あかりの言霊に呼応するように霊剣が赤い光を帯び始める。
あかりに向けられた本気に身を震わせた妖狐は、上体を低くすると後ろ足で強く地面を蹴った。あかりより前方に構える秋之介と結月の攻撃を受けるのもお構いなしに、妖狐は真っ直ぐに反閇に集中するあかりに向かって駆けていく。
「行かせるかよっ!」
素早く反転した秋之介はすぐに妖狐を追い抜き、呪詛に用心しながらも鋭い爪を振りかぶった。耳にかすめたものの痛がる素振りも見せずに妖狐は秋之介を無視して走り続ける。
「くそっ!」
悪態をつきながらも、秋之介は妖狐と並走して牽制する。
まもなくあかりの元へ辿り着くといった直前で結月が霊符と護符を同時に放った。
「水神演舞、動静緊縛、青柳護神、急々如律令」
青い光が広がり、妖狐の下にだけざあっと雨が降る。かつて朱咲の加護を受けていただけあって妖狐は水に弱いらしく、痛みには反応を見せなかったのに雨には怯んでいるようだった。その一瞬の隙に動きを止める霊符が発動するがこちらは咄嗟に対応した妖狐が食い破ってしまった。
妖狐は緩みかけた速度をもとに戻すと、再びあかり目がけて突っ込んだ。
「青柳、白古、朱咲、玄舞、空陳、南寿、北斗、三体、玉女!」
それを昴があかりの周囲に新たに結界を張ることで阻止する。妖狐は見えない壁に弾かれ、宙返りをして後方に着地した。
三人が奮戦している間も、あかりの祝詞は朗々と紡がれていた。
「乾尊燿霊、坤順内営、二儀交泰、六合利貞、配天享地、永寧粛清、応感玄黄、上衣下裳、震離艮巽、虎歩龍翔、今日行算、玉女侍傍、追吾者死、捕吾者亡、牽牛織女、化成江河、急急如律令」
禹歩の足運びで円を描きながら霊剣を片手に大きく堂々と舞い踊る。反閇の儀式は順調だった。
「天神の母、玉女。南地の母、朱咲。我を護り、我を保けよ。我に侍えて行き、某郷里に至れ。杳杳冥冥、我を見、声を聞く者はなく、その情を覩る鬼神なし。我を喜ぶ者は福し、我を悪む者は殃せらる。百邪鬼賊、我に当う者は亡び、千万人中、我を見る者は喜ぶ」
儀式はいよいよ終局を迎えようとしていた。
あかりの言霊に呼応するように霊剣が赤い光を帯び始める。
あかりに向けられた本気に身を震わせた妖狐は、上体を低くすると後ろ足で強く地面を蹴った。あかりより前方に構える秋之介と結月の攻撃を受けるのもお構いなしに、妖狐は真っ直ぐに反閇に集中するあかりに向かって駆けていく。
「行かせるかよっ!」
素早く反転した秋之介はすぐに妖狐を追い抜き、呪詛に用心しながらも鋭い爪を振りかぶった。耳にかすめたものの痛がる素振りも見せずに妖狐は秋之介を無視して走り続ける。
「くそっ!」
悪態をつきながらも、秋之介は妖狐と並走して牽制する。
まもなくあかりの元へ辿り着くといった直前で結月が霊符と護符を同時に放った。
「水神演舞、動静緊縛、青柳護神、急々如律令」
青い光が広がり、妖狐の下にだけざあっと雨が降る。かつて朱咲の加護を受けていただけあって妖狐は水に弱いらしく、痛みには反応を見せなかったのに雨には怯んでいるようだった。その一瞬の隙に動きを止める霊符が発動するがこちらは咄嗟に対応した妖狐が食い破ってしまった。
妖狐は緩みかけた速度をもとに戻すと、再びあかり目がけて突っ込んだ。
「青柳、白古、朱咲、玄舞、空陳、南寿、北斗、三体、玉女!」
それを昴があかりの周囲に新たに結界を張ることで阻止する。妖狐は見えない壁に弾かれ、宙返りをして後方に着地した。
三人が奮戦している間も、あかりの祝詞は朗々と紡がれていた。
「乾尊燿霊、坤順内営、二儀交泰、六合利貞、配天享地、永寧粛清、応感玄黄、上衣下裳、震離艮巽、虎歩龍翔、今日行算、玉女侍傍、追吾者死、捕吾者亡、牽牛織女、化成江河、急急如律令」
禹歩の足運びで円を描きながら霊剣を片手に大きく堂々と舞い踊る。反閇の儀式は順調だった。
「天神の母、玉女。南地の母、朱咲。我を護り、我を保けよ。我に侍えて行き、某郷里に至れ。杳杳冥冥、我を見、声を聞く者はなく、その情を覩る鬼神なし。我を喜ぶ者は福し、我を悪む者は殃せらる。百邪鬼賊、我に当う者は亡び、千万人中、我を見る者は喜ぶ」
儀式はいよいよ終局を迎えようとしていた。
0
あなたにおすすめの小説
【完結】姉は聖女? ええ、でも私は白魔導士なので支援するぐらいしか取り柄がありません。
猫屋敷 むぎ
ファンタジー
誰もが憧れる勇者と最強の騎士が恋したのは聖女。それは私ではなく、姉でした。
復活した魔王に侯爵領を奪われ没落した私たち姉妹。そして、誰からも愛される姉アリシアは神の祝福を受け聖女となり、私セレナは支援魔法しか取り柄のない白魔導士のまま。
やがてヴァルミエール国王の王命により結成された勇者パーティは、
勇者、騎士、聖女、エルフの弓使い――そして“おまけ”の私。
過去の恋、未来の恋、政略婚に揺れ動く姉を見つめながら、ようやく私の役割を自覚し始めた頃――。
魔王城へと北上する魔王討伐軍と共に歩む勇者パーティは、
四人の魔将との邂逅、秘められた真実、そしてそれぞれの試練を迎え――。
輝く三人の恋と友情を“すぐ隣で見つめるだけ”の「聖女の妹」でしかなかった私。
けれど魔王討伐の旅路の中で、“仲間を支えるとは何か”に気付き、
やがて――“本当の自分”を見つけていく――。
そんな、ちょっぴり切ない恋と友情と姉妹愛、そして”世界を救う”私の成長物語です。
※本作の章構成:
第一章:アカデミー編
第二章:討伐軍北上編
第三章:魔王決戦編
※「カクヨム」、「小説家になろう」にも掲載(異世界転生・恋愛12位)
※ アルファポリス完結ファンタジー8位。応援ありがとうございます。
伯爵令嬢の秘密の知識
シマセイ
ファンタジー
16歳の女子高生 佐藤美咲は、神のミスで交通事故に巻き込まれて死んでしまう。異世界のグランディア王国ルナリス伯爵家のミアとして転生し、前世の記憶と知識チートを授かる。魔法と魔道具を秘密裏に研究しつつ、科学と魔法を融合させた夢を追い、小さな一歩を踏み出す。
【完結】追放された子爵令嬢は実力で這い上がる〜家に帰ってこい?いえ、そんなのお断りです〜
Nekoyama
ファンタジー
魔法が優れた強い者が家督を継ぐ。そんな実力主義の子爵家の養女に入って4年、マリーナは魔法もマナーも勉学も頑張り、貴族令嬢にふさわしい教養を身に付けた。来年に魔法学園への入学をひかえ、期待に胸を膨らませていた矢先、家を追放されてしまう。放り出されたマリーナは怒りを胸に立ち上がり、幸せを掴んでいく。
主人公の恋敵として夫に処刑される王妃として転生した私は夫になる男との結婚を阻止します
白雪の雫
ファンタジー
突然ですが質問です。
あなたは【真実の愛】を信じますか?
そう聞かれたら私は『いいえ!』『No!』と答える。
だって・・・そうでしょ?
ジュリアーノ王太子の(名目上の)父親である若かりし頃の陛下曰く「私と彼女は真実の愛で結ばれている」という何が何だか訳の分からない理屈で、婚約者だった大臣の姫ではなく平民の女を妃にしたのよ!?
それだけではない。
何と平民から王妃になった女は庭師と不倫して不義の子を儲け、その不義の子ことジュリアーノは陛下が側室にも成れない身分の低い女が産んだ息子のユーリアを後宮に入れて妃のように扱っているのよーーーっ!!!
私とジュリアーノの結婚は王太子の後見になって欲しいと陛下から土下座をされてまで請われたもの。
それなのに・・・ジュリアーノは私を後宮の片隅に追いやりユーリアと毎晩「アッー!」をしている。
しかも!
ジュリアーノはユーリアと「アッー!」をするにしてもベルフィーネという存在が邪魔という理由だけで、正式な王太子妃である私を車裂きの刑にしやがるのよ!!!
マジかーーーっ!!!
前世は腐女子であるが会社では働く女性向けの商品開発に携わっていた私は【夢色の恋人達】というBLゲームの、悪役と位置づけられている王太子妃のベルフィーネに転生していたのよーーーっ!!!
思い付きで書いたので、ガバガバ設定+矛盾がある+ご都合主義。
世界観、建築物や衣装等は古代ギリシャ・ローマ神話、古代バビロニアをベースにしたファンタジー、ベルフィーネの一人称は『私』と書いて『わたくし』です。
【完結】大魔術師は庶民の味方です2
枇杷水月
ファンタジー
元侯爵令嬢は薬師となり、疫病から民を守った。
『救国の乙女』と持て囃されるが、本人はただ薬師としての職務を全うしただけだと、称賛を受け入れようとはしなかった。
結婚祝いにと、国王陛下から贈られた旅行を利用して、薬師ミュリエルと恋人のフィンは、双方の家族をバカンスに招待し、婚約式を計画。
顔合わせも無事に遂行し、結婚を許された2人は幸せの絶頂にいた。
しかし、幸せな2人を妬むかのように暗雲が漂う。襲いかかる魔の手から家族を守るため、2人は戦いに挑む。
【完結】使えない令嬢として一家から追放されたけど、あまりにも領民からの信頼が厚かったので逆転してざまぁしちゃいます
腕押のれん
ファンタジー
アメリスはマハス公国の八大領主の一つであるロナデシア家の三姉妹の次女として生まれるが、頭脳明晰な長女と愛想の上手い三女と比較されて母親から疎まれており、ついに追放されてしまう。しかしアメリスは取り柄のない自分にもできることをしなければならないという一心で領民たちに対し援助を熱心に行っていたので、領民からは非常に好かれていた。そのため追放された後に他国に置き去りにされてしまうものの、偶然以前助けたマハス公国出身のヨーデルと出会い助けられる。ここから彼女の逆転人生が始まっていくのであった!
私が死ぬまでには完結させます。
追記:最後まで書き終わったので、ここからはペース上げて投稿します。
追記2:ひとまず完結しました!
旦那様、離婚しましょう ~私は冒険者になるのでご心配なくっ~
榎夜
恋愛
私と旦那様は白い結婚だ。体の関係どころか手を繋ぐ事もしたことがない。
ある日突然、旦那の子供を身籠ったという女性に離婚を要求された。
別に構いませんが......じゃあ、冒険者にでもなろうかしら?
ー全50話ー
冷遇王妃はときめかない
あんど もあ
ファンタジー
幼いころから婚約していた彼と結婚して王妃になった私。
だが、陛下は側妃だけを溺愛し、私は白い結婚のまま離宮へ追いやられる…って何てラッキー! 国の事は陛下と側妃様に任せて、私はこのまま離宮で何の責任も無い楽な生活を!…と思っていたのに…。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる