246 / 390
第一七話 諦めない未来
第一七話 九
しおりを挟む
「青柳、白古、朱咲、玄舞、空陳、南寿、北斗、三体、玉女。急々……」
「あかりっ‼」
突如、霊剣を持っていない方の腕を強く引かれた。反閇の儀式に集中しきっていたため、あかりは予想だにしない出来事にろくな対応ができなかった。とり落とした霊剣が地面にぶつかると同時に音もなく霧散していく。均衡を崩したあかりは結月と一緒に地面に倒れこんだが、結月がかばってくれたのであかりに痛みはなかった。
一秒にも満たない後に、あかりたちの頭上を一羽の烏が凄まじい速さで通りすぎていった。見上げた烏はくちばしに紙をくわえていた。
結月は地面から起き上がるとあかりに手を差し伸べてくれた。その手を取りながら、あかりも立ち上がる。
「あかり、なんともない?」
「うん、びっくりしたけど……。一体何が?」
結月が鋭い視線で烏のくわえる紙を睨んだ。
「あの符の気……」
結月の呟きに従って、あかりは烏のくわえる紙に気を集中させた。途端にぶわりと肌が粟立つ。この感覚は忘れられるはずもない。あかりは目を大きく見開いた。
「式神に降す符……⁉」
「そう。妖狐の呪詛も厄介だけど、あの符には絶対に当たっちゃいけない」
「……うん」
以前にあの符に当たったとき、酷い幻覚を見せられたことが思い出される。母や幼なじみたちの甘く毒々しい誘惑の声、仕草はそっくりなのに無機質な青い瞳をもつ結月の姿が蘇り、あかりの胸は不快感にざわついた。
「あかりちゃん、ゆづくん!」
昴の叫び声にあかりははっと我に返った。先ほどの烏の式神が旋回して、再びあかりに向かって襲いかかる。
「狙いはあかりか……⁉」
「心上護神、身上護神、急々如律令!」
あかりの側にいた結月がすかさず護符を発動させる。青い光を避けるように烏は空高くに舞い上がると、あかりたちの頭上を円を描くように飛んだ。
あかりと結月のもとに秋之介と昴が駆け寄る。昴は周囲に結界を張り直すと、厳しい目をして烏を見上げた。
「あの霊符って……」
「だよな。南朱湖で拾った霊符と同じ気配がする」
霊符に明るい結月が頷くことで、昴と秋之介の予想が正しいことを裏付ける。
「どうしたら……」
あかりが言いきらないうちに、頭上から烏が、前方からは妖狐が飛びかかってくる。昴の結界を力業で破って同時に襲い掛かってくるものの、瞬間顕現させた霊剣で「朱咲護神、急々如律令!」の声とともにあかりは霊剣を払った。式神たちは後退して、再度距離をとる。
「このままじゃ埒が明かねえな」
秋之介が苛立たしげに舌打ちする。
一方で結月は冷静に何かを考えているようだった。思案気にあかりをちらりと見てから結月が口を開く。
「霊符にはおれが応戦した方が、いいと思う。あかりのこと、心配だけど、きっと天翔様を救えるって、信じてるから」
あかりは結月が寄せてくれた信頼に応えるように力強く頷いた。
「うん、必ずお父様を救ってみせるよ」
「その作戦でいくか。じゃあ、俺はあかりとゆづの支援だな」
「僕はみんなの後方支援かな」
自然と各々の役割が決まっていく。皆が構えをとるのを見計らって、あかりは大きく息を吸い込んだ。
「行こう!」
「あかりっ‼」
突如、霊剣を持っていない方の腕を強く引かれた。反閇の儀式に集中しきっていたため、あかりは予想だにしない出来事にろくな対応ができなかった。とり落とした霊剣が地面にぶつかると同時に音もなく霧散していく。均衡を崩したあかりは結月と一緒に地面に倒れこんだが、結月がかばってくれたのであかりに痛みはなかった。
一秒にも満たない後に、あかりたちの頭上を一羽の烏が凄まじい速さで通りすぎていった。見上げた烏はくちばしに紙をくわえていた。
結月は地面から起き上がるとあかりに手を差し伸べてくれた。その手を取りながら、あかりも立ち上がる。
「あかり、なんともない?」
「うん、びっくりしたけど……。一体何が?」
結月が鋭い視線で烏のくわえる紙を睨んだ。
「あの符の気……」
結月の呟きに従って、あかりは烏のくわえる紙に気を集中させた。途端にぶわりと肌が粟立つ。この感覚は忘れられるはずもない。あかりは目を大きく見開いた。
「式神に降す符……⁉」
「そう。妖狐の呪詛も厄介だけど、あの符には絶対に当たっちゃいけない」
「……うん」
以前にあの符に当たったとき、酷い幻覚を見せられたことが思い出される。母や幼なじみたちの甘く毒々しい誘惑の声、仕草はそっくりなのに無機質な青い瞳をもつ結月の姿が蘇り、あかりの胸は不快感にざわついた。
「あかりちゃん、ゆづくん!」
昴の叫び声にあかりははっと我に返った。先ほどの烏の式神が旋回して、再びあかりに向かって襲いかかる。
「狙いはあかりか……⁉」
「心上護神、身上護神、急々如律令!」
あかりの側にいた結月がすかさず護符を発動させる。青い光を避けるように烏は空高くに舞い上がると、あかりたちの頭上を円を描くように飛んだ。
あかりと結月のもとに秋之介と昴が駆け寄る。昴は周囲に結界を張り直すと、厳しい目をして烏を見上げた。
「あの霊符って……」
「だよな。南朱湖で拾った霊符と同じ気配がする」
霊符に明るい結月が頷くことで、昴と秋之介の予想が正しいことを裏付ける。
「どうしたら……」
あかりが言いきらないうちに、頭上から烏が、前方からは妖狐が飛びかかってくる。昴の結界を力業で破って同時に襲い掛かってくるものの、瞬間顕現させた霊剣で「朱咲護神、急々如律令!」の声とともにあかりは霊剣を払った。式神たちは後退して、再度距離をとる。
「このままじゃ埒が明かねえな」
秋之介が苛立たしげに舌打ちする。
一方で結月は冷静に何かを考えているようだった。思案気にあかりをちらりと見てから結月が口を開く。
「霊符にはおれが応戦した方が、いいと思う。あかりのこと、心配だけど、きっと天翔様を救えるって、信じてるから」
あかりは結月が寄せてくれた信頼に応えるように力強く頷いた。
「うん、必ずお父様を救ってみせるよ」
「その作戦でいくか。じゃあ、俺はあかりとゆづの支援だな」
「僕はみんなの後方支援かな」
自然と各々の役割が決まっていく。皆が構えをとるのを見計らって、あかりは大きく息を吸い込んだ。
「行こう!」
0
あなたにおすすめの小説
【完結】捨て去られた王妃は王宮で働く
ここ
ファンタジー
たしかに私は王妃になった。
5歳の頃に婚約が決まり、逃げようがなかった。完全なる政略結婚。
夫である国王陛下は、ハーレムで浮かれている。政務は王妃が行っていいらしい。私は仕事は得意だ。家臣たちが追いつけないほど、理解が早く、正確らしい。家臣たちは、王妃がいないと困るようになった。何とかしなければ…
退屈令嬢のフィクサーな日々
ユウキ
恋愛
完璧と評される公爵令嬢のエレノアは、順風満帆な学園生活を送っていたのだが、自身の婚約者がどこぞの女生徒に夢中で有るなどと、宜しくない噂話を耳にする。
直接関わりがなければと放置していたのだが、ある日件の女生徒と遭遇することになる。
《完結》悪役聖女
ヴァンドール
ファンタジー
聖女になり、王妃となるため十年間も教育を受けて来たのに蓋を開ければ妹が聖女の力を持っていて私はには聖女の力が無かった。そのため祖国を追放されて隣国へと旅立ったがそこで……
つまらなかった乙女ゲームに転生しちゃったので、サクッと終わらすことにしました
蒼羽咲
ファンタジー
つまらなかった乙女ゲームに転生⁈
絵に惚れ込み、一目惚れキャラのためにハードまで買ったが内容が超つまらなかった残念な乙女ゲームに転生してしまった。
絵は超好みだ。内容はご都合主義の聖女なお花畑主人公。攻略イケメンも顔は良いがちょろい対象ばかり。てこたぁ逆にめちゃくちゃ住み心地のいい場所になるのでは⁈と気づき、テンションが一気に上がる!!
聖女など面倒な事はする気はない!サクッと攻略終わらせてぐーたら生活をGETするぞ!
ご都合主義ならチョロい!と、野望を胸に動き出す!!
+++++
・重複投稿・土曜配信 (たま~に水曜…不定期更新)
竜皇女と呼ばれた娘
Aoi
ファンタジー
この世に生を授かり間もなくして捨てられしまった赤子は洞窟を棲み処にしていた竜イグニスに拾われヴァイオレットと名づけられ育てられた
ヴァイオレットはイグニスともう一頭の竜バシリッサの元でスクスクと育ち十六の歳になる
その歳まで人間と交流する機会がなかったヴァイオレットは友達を作る為に学校に通うことを望んだ
国で一番のグレディス魔法学校の入学試験を受け無事入学を果たし念願の友達も作れて順風満帆な生活を送っていたが、ある日衝撃の事実を告げられ……
【長編・完結】私、12歳で死んだ。赤ちゃん還り?水魔法で救済じゃなくて、給水しますよー。
BBやっこ
ファンタジー
死因の毒殺は、意外とは言い切れない。だって貴族の後継者扱いだったから。けど、私はこの家の子ではないかもしれない。そこをつけいられて、親族と名乗る人達に好き勝手されていた。
辺境の地で魔物からの脅威に領地を守りながら、過ごした12年間。その生が終わった筈だったけど…雨。その日に辺境伯が連れて来た赤ん坊。「セリュートとでも名付けておけ」暫定後継者になった瞬間にいた、私は赤ちゃん??
私が、もう一度自分の人生を歩み始める物語。給水係と呼ばれる水魔法でお悩み解決?
生きるために逃げだした。幸せになりたい。
白水緑
ファンタジー
屋敷内に軟禁状態だったリリアは、宝物を取り戻したことをきっかけに屋敷から逃げ出した。幸せになるために。体力も力もない。成り行きに身を任せる結果になっても、自分の道は自分で選びたい。
2020/9/19 第一章終了
続きが書け次第また連載再開します。
2021/2/14 第二章開幕
2021/2/28 完結
私と母のサバイバル
だましだまし
ファンタジー
侯爵家の庶子だが唯一の直系の子として育てられた令嬢シェリー。
しかしある日、母と共に魔物が出る森に捨てられてしまった。
希望を諦めず森を進もう。
そう決意するシェリーに異変が起きた。
「私、別世界の前世があるみたい」
前世の知識を駆使し、二人は無事森を抜けられるのだろうか…?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる