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第一七話 諦めない未来
第一七話 一〇
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あかりは妖狐に向かって勢いよく駆け出した。味方の支援を十分に受けられない以上、時間稼ぎが必要な反閇は難しい。
(だったら言霊で私の想いをお父様に届けるだけ……!)
「ねえ、お父様、聞こえる⁉ 私、あかりだよ!」
正気を失った妖狐は何の躊躇いもなくあかりに突っ込んできた。同時に視界の端に烏の影が見えたが、青い光に遮られる。烏はあかりを狙っていたようだが、結月の方を先に片付けた方がいいと踏んだらしく、狙いを結月に切り替えたようだった。烏は勢いそのまま結月の方へ飛んでいった。
「やあっ!」
あかりは霊剣で妖狐の攻撃を弾いたが、勢いに圧されて地面を削るように後退した。
(重い……! 呪詛をのせてるから⁉)
たった一撃なのに腕がじんと痺れる。容赦のない攻撃に父の名残がもうほとんどないことを察したあかりの胸の内に悲しみが打ち広がる。天翔を救う道はやはり一本しかないのだと惨い現実をまざまざと突き付けられた気分だった。けれどもあかりはもう絶望しない。
(お父様を救うことを諦めないって決めた。例えそれがどんな方法だとしても、それでお父様に安らぎがもたらされるなら……)
妖狐が大口を開けて飛びかかってこようとする。あかりは妖狐の身を躱しながら、言霊を放った。
「朱咲護神、除災与楽、急々如律令!」
それでもなお妖狐は勢いを殺さず、あかりがいたところに着地した。妖狐はすぐさま反転して息つく暇もなく再度あかりに攻撃を仕掛けた。あかりも応戦して霊剣を振って妖狐の攻撃をいなす。
強さは五分五分で、互いに一歩も引かない。
あかりは言霊を繰りだし妖狐に語りかけ、霊剣を操ることで妖狐の容赦ない攻撃を打ち消した。対して妖狐は自身が傷を負うことに頓着せず、無鉄砲にあかりに向かっていく。
そのように何度も攻守を繰り返しているうちにも体力はどんどん削られていった。ほんの僅かにあかりが後れを取ると、妖狐はその隙をついてきた。
(しまった!)
あかりは咄嗟に対応しようとしたが間に合わない。妖狐の牙があかりの腕を刺すかと思われた寸前に、あかりと妖狐の間に黒い結界が現れた。
「あかりちゃん、気をつけて!」
「昴! ありがとう」
妖狐は宙がえりをすると目の前に現れた結界を蹴って元の場所に戻った。
(このままいけば体力と時間の勝負になる……。早いところ決着をつけないと!)
(だったら言霊で私の想いをお父様に届けるだけ……!)
「ねえ、お父様、聞こえる⁉ 私、あかりだよ!」
正気を失った妖狐は何の躊躇いもなくあかりに突っ込んできた。同時に視界の端に烏の影が見えたが、青い光に遮られる。烏はあかりを狙っていたようだが、結月の方を先に片付けた方がいいと踏んだらしく、狙いを結月に切り替えたようだった。烏は勢いそのまま結月の方へ飛んでいった。
「やあっ!」
あかりは霊剣で妖狐の攻撃を弾いたが、勢いに圧されて地面を削るように後退した。
(重い……! 呪詛をのせてるから⁉)
たった一撃なのに腕がじんと痺れる。容赦のない攻撃に父の名残がもうほとんどないことを察したあかりの胸の内に悲しみが打ち広がる。天翔を救う道はやはり一本しかないのだと惨い現実をまざまざと突き付けられた気分だった。けれどもあかりはもう絶望しない。
(お父様を救うことを諦めないって決めた。例えそれがどんな方法だとしても、それでお父様に安らぎがもたらされるなら……)
妖狐が大口を開けて飛びかかってこようとする。あかりは妖狐の身を躱しながら、言霊を放った。
「朱咲護神、除災与楽、急々如律令!」
それでもなお妖狐は勢いを殺さず、あかりがいたところに着地した。妖狐はすぐさま反転して息つく暇もなく再度あかりに攻撃を仕掛けた。あかりも応戦して霊剣を振って妖狐の攻撃をいなす。
強さは五分五分で、互いに一歩も引かない。
あかりは言霊を繰りだし妖狐に語りかけ、霊剣を操ることで妖狐の容赦ない攻撃を打ち消した。対して妖狐は自身が傷を負うことに頓着せず、無鉄砲にあかりに向かっていく。
そのように何度も攻守を繰り返しているうちにも体力はどんどん削られていった。ほんの僅かにあかりが後れを取ると、妖狐はその隙をついてきた。
(しまった!)
あかりは咄嗟に対応しようとしたが間に合わない。妖狐の牙があかりの腕を刺すかと思われた寸前に、あかりと妖狐の間に黒い結界が現れた。
「あかりちゃん、気をつけて!」
「昴! ありがとう」
妖狐は宙がえりをすると目の前に現れた結界を蹴って元の場所に戻った。
(このままいけば体力と時間の勝負になる……。早いところ決着をつけないと!)
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∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽
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※作者創作の世界観です。史実等とは合致しない部分、異なる部分が多数あります。
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