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第一七話 諦めない未来
第一七話 一二
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「こんな頼りないお父様だったけれど、大好きだと言ってくれて嬉しかったよ」
「頼りないなんて思ったこと、一度もないよ。お父様は私にとってかけがえのない存在だったんだから」
「そう、言ってくれるんだね……」
柔らかな赤の瞳がきらりと煌めく。姿は狐のままだが、あかりには見慣れた人間姿の父が泣いているように見えた。
「あのときのことは悔やんでも悔やみきれない。……喉の傷は、もう大丈夫かい?」
「うん、昴たちのおかげだよ。声だってほら、元に戻ってるでしょ」
天翔は頷いたまま顔を上げない。俯いたときにこぼれ落ちたきれいな雫が赤の光の空間に弾ける。その涙のように天翔の姿はいつしか透けていた。
「まつりは怒るかな……。あかりを一人にしてしまうこと、傷つけたこと。ああ、でも、罪を重ね過ぎたわたしでは彼女のもとには行けないかもしれないなぁ」
自嘲的な笑みをこぼす天翔に、あかりは「大丈夫だよ」と強く言いきった。
「お父様の抱えた罪も業も、私がちゃんと祓うから」
はっとした表情で天翔が顔を上げる。あかりはにっこりと笑ってみせた。心残りがあるのならそれは大丈夫だと伝えて安心してほしい。別れるなら泣き顔ではなく笑顔を胸に残してほしかった。
「確かにお父様とお母様がいないのは寂しいけど、私はひとりじゃないよ。結月や秋、昴たちがいてくれるから。それに怪我のことも、私は恨んでなんかいないよ。辛かったのは否定しない。だけど代わりに得られたものもたくさんあったから」
「あかり……」
天翔は呆然としていたが、やがて涙で顔を濡らして微笑んだ。
「あかりはますますお母様に似てきたね。……それなら、きっと大丈夫だ」
いま一度、お互いに微笑みを交わし合う。
それで覚悟は決まった。
「頼りないなんて思ったこと、一度もないよ。お父様は私にとってかけがえのない存在だったんだから」
「そう、言ってくれるんだね……」
柔らかな赤の瞳がきらりと煌めく。姿は狐のままだが、あかりには見慣れた人間姿の父が泣いているように見えた。
「あのときのことは悔やんでも悔やみきれない。……喉の傷は、もう大丈夫かい?」
「うん、昴たちのおかげだよ。声だってほら、元に戻ってるでしょ」
天翔は頷いたまま顔を上げない。俯いたときにこぼれ落ちたきれいな雫が赤の光の空間に弾ける。その涙のように天翔の姿はいつしか透けていた。
「まつりは怒るかな……。あかりを一人にしてしまうこと、傷つけたこと。ああ、でも、罪を重ね過ぎたわたしでは彼女のもとには行けないかもしれないなぁ」
自嘲的な笑みをこぼす天翔に、あかりは「大丈夫だよ」と強く言いきった。
「お父様の抱えた罪も業も、私がちゃんと祓うから」
はっとした表情で天翔が顔を上げる。あかりはにっこりと笑ってみせた。心残りがあるのならそれは大丈夫だと伝えて安心してほしい。別れるなら泣き顔ではなく笑顔を胸に残してほしかった。
「確かにお父様とお母様がいないのは寂しいけど、私はひとりじゃないよ。結月や秋、昴たちがいてくれるから。それに怪我のことも、私は恨んでなんかいないよ。辛かったのは否定しない。だけど代わりに得られたものもたくさんあったから」
「あかり……」
天翔は呆然としていたが、やがて涙で顔を濡らして微笑んだ。
「あかりはますますお母様に似てきたね。……それなら、きっと大丈夫だ」
いま一度、お互いに微笑みを交わし合う。
それで覚悟は決まった。
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