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第一九話 水無月の狂乱
第一九話 一二
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それから数日後。玄舞家の稽古場で四人揃って模擬実戦をすることになった。
白古家が大火にのまれてから初めて四人が集まった。というのも結月が、秋之介が落ち着くまではとあえて距離を置いていたからだ。
幼なじみの感覚としては久しぶりに相当するが、あの日からまだ一〇日も経っていない。
秋之介は自分が結月に八つ当たりをした自覚があるらしくきまり悪そうにしていたが、結月の方はさほど気にした様子は見せなかった。
「おはよう、秋」
「お、おはよう」
秋之介は戸惑いながらも挨拶を返す。
最初は二人のやりとりを心配してうかがっていたあかりだったが、以前の時のような言い合いにはならず、ひとまずは安心して昴と顔を見合わせる。昴も微笑んで頷いてくれた。
「じゃあ早速模擬実戦を始めようか。組み分けは……」
「その前にちょっといいか」
昴の言葉を遮ったのは秋之介だ。あかりと結月が不思議そうな視線を秋之介に送る傍ら、昴が「どうしたの、秋くん」と話を促す。
ずっと前から決めていたのだろう。秋之介は迷いなく即座に答えた。
「いつもは変化や短刀で戦ってたけど、今回からは憑依で戦いたい」
場に沈黙が落ちる。誰もが難しい顔をしていた。
その反応も織り込み済みだったのか、秋之介はよどみなく理由を話した。
「この間の火事で痛感した。憑依によって自分の身への危険性が増すとしても、それが誰かを守るためになるなら背負って然るべきものだって。躊躇ってたからこんなことになったんだ。だったらもう迷いを捨てたい」
「秋くん」
落とされた声は硬く冷たいものだった。それでも秋之介は怯むことなく昴の瞳を正面から見つめ返した。
「それは自己犠牲ではないの?」
「違う」
間隙なく否定する秋之介を見つめ返す昴の瞳はいやに冷めていた。
「本当に? 僕には秋くんが自分の身を犠牲にしようとしてるように思えるよ。そんなことで得た強い力なんて要らない。僕の大事な幼なじみの一人を傷つけるのは、例え君自身であっても許せないよ」
「なんで今さらそんなこと言うんだよ。過去にだって憑依で戦ったことは何回もあったじゃねえか。でもそのときは何も言わなかったのに……!」
募る苛立ちからか早口でまくし立てる秋之介の声は徐々に大きくなる。それにも眉ひとつ動かさず、昴は淡々と冷静に言い返した。
「今の秋くんは不安定だからだよ。そんな君が憑依を頼ったらどうなると思う?」
「不安定ってなんだよ。俺は……!」
「秋」
秋之介と昴が言い合う様をはらはらと見ていることしかできなかったあかりとは対照的に、結月がいよいよ制止の声をあげる。そこには秋之介のような熱も、昴のような冷たさもなく、言外に中立の立場であるといっているようなものだった。
白古家が大火にのまれてから初めて四人が集まった。というのも結月が、秋之介が落ち着くまではとあえて距離を置いていたからだ。
幼なじみの感覚としては久しぶりに相当するが、あの日からまだ一〇日も経っていない。
秋之介は自分が結月に八つ当たりをした自覚があるらしくきまり悪そうにしていたが、結月の方はさほど気にした様子は見せなかった。
「おはよう、秋」
「お、おはよう」
秋之介は戸惑いながらも挨拶を返す。
最初は二人のやりとりを心配してうかがっていたあかりだったが、以前の時のような言い合いにはならず、ひとまずは安心して昴と顔を見合わせる。昴も微笑んで頷いてくれた。
「じゃあ早速模擬実戦を始めようか。組み分けは……」
「その前にちょっといいか」
昴の言葉を遮ったのは秋之介だ。あかりと結月が不思議そうな視線を秋之介に送る傍ら、昴が「どうしたの、秋くん」と話を促す。
ずっと前から決めていたのだろう。秋之介は迷いなく即座に答えた。
「いつもは変化や短刀で戦ってたけど、今回からは憑依で戦いたい」
場に沈黙が落ちる。誰もが難しい顔をしていた。
その反応も織り込み済みだったのか、秋之介はよどみなく理由を話した。
「この間の火事で痛感した。憑依によって自分の身への危険性が増すとしても、それが誰かを守るためになるなら背負って然るべきものだって。躊躇ってたからこんなことになったんだ。だったらもう迷いを捨てたい」
「秋くん」
落とされた声は硬く冷たいものだった。それでも秋之介は怯むことなく昴の瞳を正面から見つめ返した。
「それは自己犠牲ではないの?」
「違う」
間隙なく否定する秋之介を見つめ返す昴の瞳はいやに冷めていた。
「本当に? 僕には秋くんが自分の身を犠牲にしようとしてるように思えるよ。そんなことで得た強い力なんて要らない。僕の大事な幼なじみの一人を傷つけるのは、例え君自身であっても許せないよ」
「なんで今さらそんなこと言うんだよ。過去にだって憑依で戦ったことは何回もあったじゃねえか。でもそのときは何も言わなかったのに……!」
募る苛立ちからか早口でまくし立てる秋之介の声は徐々に大きくなる。それにも眉ひとつ動かさず、昴は淡々と冷静に言い返した。
「今の秋くんは不安定だからだよ。そんな君が憑依を頼ったらどうなると思う?」
「不安定ってなんだよ。俺は……!」
「秋」
秋之介と昴が言い合う様をはらはらと見ていることしかできなかったあかりとは対照的に、結月がいよいよ制止の声をあげる。そこには秋之介のような熱も、昴のような冷たさもなく、言外に中立の立場であるといっているようなものだった。
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