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第二〇話 青の光
第二〇話 四
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再び白虎姿に戻った秋之介の背に乗ってあかりたちは兌の方角へ急ぎ向かう。東青川から離れ、入り組んだ小路を西に南に走り抜ける。町民はすでに非難したのか町中にはひと気がなかったが、青柳家の邸が近づくにつれ交戦する音や声が雨音に紛れて聞こえてきた。
「見えた! 青柳門だ!」
秋之介が青柳門の下に駆けこむと同時に式神が飛んできた。あかりはひらりと秋之介の背から降りると、すぐさま霊剣を顕現させ「朱咲護神、急々如律令!」と斬り払った。鳥型の式神は赤い光とともに消えていく。姿はなくなってしまったが無事、邪気だけを払い、魂は元のところへ還った感覚があった。
しかし、安堵する間もなく次の攻撃が飛んでくる。
あかりと秋之介は攻撃をいなしながら、周辺の様子を観察していた。
青柳家の家臣と陰の国の式神使いはあちこちで入り乱れ戦っていたが、その中に不自然なほど人がいない空間があった。慎重に近づくと感覚を研ぎ澄ますまでもなく、肌が粟立つような不快で禍々しい気があかりを襲う。秋之介も同様で、額に脂汗が滲んでいた。しかし、それで確信した。
「ゆづが本性に戻ってたのはこういうことか」
「うん。こんなに強い気、並みの術使いでは近づけないわ……。きっとここに結界を支える符があるはず」
幸か不幸か、符の周辺には陰の国の術使いも式神も近寄れないらしく、あかりたちの邪魔をする者はいない。好機と見たあかりは結月から預かった霊符を懐から取り出し、最も重苦しい気を放つ一点に符をかざした。
「青柳護神、急々如律令」
あかりが唱えると霊符は青く輝きだし、すっと空気に溶け消える。それと同時に一帯を支配していた邪気もなくなっていた。
「……こんなにあっけないもんか?」
「確かに。結月が心配してたのよりずっと簡単だったね」
「……嫌な予感がする。早くゆづと合流しようぜ」
そうして二人は元来た道を駆け戻る。
強力な符の置かれた中央には青柳家の邸があり、上空には青い龍の姿があった。結月の姿を認められたことに一安心するも、予断を許さない状況であることに変わりはない。虎姿の秋之介が速度を上げるのを、あかりはその背に乗り感じていた。
結月のもとに向かう途中で、あかりは「あっ」と声をあげた。秋之介も耳をぴくりと震わせ、纏う鋭い気配を僅かに緩めた。
前方から昴が駆け寄ってきたのだ。
「見えた! 青柳門だ!」
秋之介が青柳門の下に駆けこむと同時に式神が飛んできた。あかりはひらりと秋之介の背から降りると、すぐさま霊剣を顕現させ「朱咲護神、急々如律令!」と斬り払った。鳥型の式神は赤い光とともに消えていく。姿はなくなってしまったが無事、邪気だけを払い、魂は元のところへ還った感覚があった。
しかし、安堵する間もなく次の攻撃が飛んでくる。
あかりと秋之介は攻撃をいなしながら、周辺の様子を観察していた。
青柳家の家臣と陰の国の式神使いはあちこちで入り乱れ戦っていたが、その中に不自然なほど人がいない空間があった。慎重に近づくと感覚を研ぎ澄ますまでもなく、肌が粟立つような不快で禍々しい気があかりを襲う。秋之介も同様で、額に脂汗が滲んでいた。しかし、それで確信した。
「ゆづが本性に戻ってたのはこういうことか」
「うん。こんなに強い気、並みの術使いでは近づけないわ……。きっとここに結界を支える符があるはず」
幸か不幸か、符の周辺には陰の国の術使いも式神も近寄れないらしく、あかりたちの邪魔をする者はいない。好機と見たあかりは結月から預かった霊符を懐から取り出し、最も重苦しい気を放つ一点に符をかざした。
「青柳護神、急々如律令」
あかりが唱えると霊符は青く輝きだし、すっと空気に溶け消える。それと同時に一帯を支配していた邪気もなくなっていた。
「……こんなにあっけないもんか?」
「確かに。結月が心配してたのよりずっと簡単だったね」
「……嫌な予感がする。早くゆづと合流しようぜ」
そうして二人は元来た道を駆け戻る。
強力な符の置かれた中央には青柳家の邸があり、上空には青い龍の姿があった。結月の姿を認められたことに一安心するも、予断を許さない状況であることに変わりはない。虎姿の秋之介が速度を上げるのを、あかりはその背に乗り感じていた。
結月のもとに向かう途中で、あかりは「あっ」と声をあげた。秋之介も耳をぴくりと震わせ、纏う鋭い気配を僅かに緩めた。
前方から昴が駆け寄ってきたのだ。
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