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第二〇話 青の光
第二〇話 三
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昴が玄舞家の家臣と仮の住まいを提供している白古家の家臣に指示を出している間に、あかりは白い虎姿の秋之介の背に乗って青柳家の邸を目指して駆けていた。
北玄山を抜けると東青川の上流に出る。川はまだ氾濫していなかったが、一刻の猶予もなさそうだった。
「結月、聞こえる⁉」
激しい濁流と雨の音にかき消されないようにあかりは叫ぶ。あかりの言霊は赤い光に変わり、天へと昇っていった。そして青い龍の側でぱっと弾け散る。同時に龍ははっと地上に目を遣り、駆け続けるあかりと秋之介の姿を捉えた。龍は地上に向かって勢いよく下降すると途中で人間姿に変じ、危なげなく着地した。そしてあかりとこちらも人間姿に変化した秋之介と合流した。
「結月、大丈夫だった⁉」
「あかり、秋も……。来てくれて、良かった」
「一体何があったんだ? ゆづが本性に戻るなんて」
結月に余裕はないらしく、張り詰めた表情で口早に現状を説明した。
「邸の周辺に結界術が張られてる。式神を生け贄にしてるせいで結界の質が逆転していて、昴が扱うような守りの結界じゃなくて、破壊の結界になってるみたい。かなり強力で危険な符を使ってるようだけど、五枚の符のうち二枚はおれが無効化した」
そこまで聞いてあかりは、異変を察知したときに昴が『結界術……⁉』と呟いたこと、結月が本性に戻っていたことの理由に納得がいった。
結月の説明は続く。
「おれは霊符の扱いに慣れてるし、昴も結界術には明るいから多分一人でもなんとかなると思う。だけどあかりと秋は一緒に行動した方がいい。残りの三つのうちの一つの符を、これで無効化してきてほしい」
そう言って結月が袂から取り出したのは青い霊符だった。雨に打たれているにも関わらず、紙でできた霊符は一切濡れていない。あかりが慎重に受け取ると、霊符から神威に近い神聖で強力な気と馴染みある結月の気が感じられた。
「場所は上から確認した。二人は兌の方角へ行って。昴には後から坎の符をお願いする」
「結月は?」
結月は一層厳しい顔つきになると青柳家の邸のある方を睨み据えた。
「今回布陣された符の中央。……一番強力で厄介なところに行く」
「向かわせるだけ危険だからって家臣はそっちに行かせてないんだろ? 一人で大丈夫なのか?」
結月は邸の方から視線を移すと秋之介を横目に見た。結月はいつも以上に真剣な瞳に覚悟を決めたような顔つきをしていて、あかりは傍らで密かに息をのんでいた。
「できるできないの問題じゃない。おれが、やらないといけない」
結月の決意は固く、現状他に打つ手が浮かばないことから秋之介も同意するしかなかったのだろう。吐き出しそうになったため息を飲みこんで、秋之介は頷いた。
「……わかったよ。俺たちも無効化出来次第、結月のところに向かう」
「うん。気をつけて」
「結月もね」
結月は頷くと瞬時に龍の姿に戻って、雨に逆らうように空へ昇っていった。
「私たちも急ごう」
「ああ」
北玄山を抜けると東青川の上流に出る。川はまだ氾濫していなかったが、一刻の猶予もなさそうだった。
「結月、聞こえる⁉」
激しい濁流と雨の音にかき消されないようにあかりは叫ぶ。あかりの言霊は赤い光に変わり、天へと昇っていった。そして青い龍の側でぱっと弾け散る。同時に龍ははっと地上に目を遣り、駆け続けるあかりと秋之介の姿を捉えた。龍は地上に向かって勢いよく下降すると途中で人間姿に変じ、危なげなく着地した。そしてあかりとこちらも人間姿に変化した秋之介と合流した。
「結月、大丈夫だった⁉」
「あかり、秋も……。来てくれて、良かった」
「一体何があったんだ? ゆづが本性に戻るなんて」
結月に余裕はないらしく、張り詰めた表情で口早に現状を説明した。
「邸の周辺に結界術が張られてる。式神を生け贄にしてるせいで結界の質が逆転していて、昴が扱うような守りの結界じゃなくて、破壊の結界になってるみたい。かなり強力で危険な符を使ってるようだけど、五枚の符のうち二枚はおれが無効化した」
そこまで聞いてあかりは、異変を察知したときに昴が『結界術……⁉』と呟いたこと、結月が本性に戻っていたことの理由に納得がいった。
結月の説明は続く。
「おれは霊符の扱いに慣れてるし、昴も結界術には明るいから多分一人でもなんとかなると思う。だけどあかりと秋は一緒に行動した方がいい。残りの三つのうちの一つの符を、これで無効化してきてほしい」
そう言って結月が袂から取り出したのは青い霊符だった。雨に打たれているにも関わらず、紙でできた霊符は一切濡れていない。あかりが慎重に受け取ると、霊符から神威に近い神聖で強力な気と馴染みある結月の気が感じられた。
「場所は上から確認した。二人は兌の方角へ行って。昴には後から坎の符をお願いする」
「結月は?」
結月は一層厳しい顔つきになると青柳家の邸のある方を睨み据えた。
「今回布陣された符の中央。……一番強力で厄介なところに行く」
「向かわせるだけ危険だからって家臣はそっちに行かせてないんだろ? 一人で大丈夫なのか?」
結月は邸の方から視線を移すと秋之介を横目に見た。結月はいつも以上に真剣な瞳に覚悟を決めたような顔つきをしていて、あかりは傍らで密かに息をのんでいた。
「できるできないの問題じゃない。おれが、やらないといけない」
結月の決意は固く、現状他に打つ手が浮かばないことから秋之介も同意するしかなかったのだろう。吐き出しそうになったため息を飲みこんで、秋之介は頷いた。
「……わかったよ。俺たちも無効化出来次第、結月のところに向かう」
「うん。気をつけて」
「結月もね」
結月は頷くと瞬時に龍の姿に戻って、雨に逆らうように空へ昇っていった。
「私たちも急ごう」
「ああ」
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