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第二三話 昇る朝陽と舞う朱咲
第二三話 一〇
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後悔するが一歩遅かった。
秋之介の腹に短刀が深く突き刺さり、かと思えば勢いよく引き抜かれた。
「ぐぅ……っ!」
秋之介は呻きながらその場に膝をついた。腹から流れ出た血が秋之介の白い袴を鮮烈な赤に染め上げていく。
「先ほども言ったろう? 我のことを忘れてはいまいか、と」
秋之介の頭上で現帝が嗤う。
(痛ってぇ。けど、ここでぶっ倒れるわけにはいかねぇ。あかりもゆづも昴も、命懸けで戦ってんだぞ……っ)
秋之介は腹を押さえてゆらりと立ち上がった。父から引き継がれた愛用の短刀を依り代に、秋之介は菊助の霊魂に語りかける。
「親父……、力を貸してくれ。……白古護神、急々如律令!」
短刀から白い閃光がほとばしり、秋之介の身を覆う。光が収束すると、そこには秋之介の姿はなく、代わりに彼にそっくりな、けれども年嵩の男が堂々と立っていた。
『あいつが俺を頼るなんて滅多にねえしな。ここは父親らしくひと肌脱ぐか。っつーことだから、てめえの相手は俺がしてやるよ』
菊助はにやりと笑うと現帝に斬りかかった。霊力は秋之介の方が大きいが、それをも上回るほどに洗練された刀捌きで、現帝も嗤いを収める。
「なかなかやるな」
『そりゃどーも』
数十合打ち合うも実力は互角と言ったところで、なかなか勝負が決しない。
大見得をきったものの菊助は次第に焦りを感じていた。
(こいつの傷の深さ、残りの体力と霊力を考えてもあんまり無茶できねぇな)
姿は菊助のものに代わっていても、本体は秋之介の方だ。自分自身の身なら多少の無理は通せても、なんだかんだいっても大事な一人息子の身に万が一のことがあってはいけない。
煩雑な思考に悩まされる菊助の手が鈍る。現帝がその隙を見逃すはずもなかった。
(やべ……っ)
短刀を弾き飛ばされそうになった刹那、菊助の思考に秋之介の声が割り込んだ。
(しっかりしろよ、親父!)
𠮟咤の声と同時に緩んでいた手に力がこもる。菊助は現帝の攻撃を寸でのところで避けた。
続く現帝の攻撃を捌ききりながら、菊助は秋之介の声に耳を傾けていた。
(あかりもゆづも昴も、命を懸けて戦ってんだ! 元より俺だけ無事に済むなんて思ってねえ。俺の持てる力をすべて使っていい。あかりが反閇できるだけの時間さえ稼げればいいんだ。俺に遠慮なんかすんじゃねえ!)
(秋之介、おまえ……)
息子は親が思う以上に成長していたようだ。そのことに気づかされて、ようやく気持ちが定まった。
菊助の顔に強気な笑みが浮かぶ。
『言ったな。だったら俺について来いよ!』
(ああ!)
今まで以上の速度で短刀が振りぬかれた。
秋之介の腹に短刀が深く突き刺さり、かと思えば勢いよく引き抜かれた。
「ぐぅ……っ!」
秋之介は呻きながらその場に膝をついた。腹から流れ出た血が秋之介の白い袴を鮮烈な赤に染め上げていく。
「先ほども言ったろう? 我のことを忘れてはいまいか、と」
秋之介の頭上で現帝が嗤う。
(痛ってぇ。けど、ここでぶっ倒れるわけにはいかねぇ。あかりもゆづも昴も、命懸けで戦ってんだぞ……っ)
秋之介は腹を押さえてゆらりと立ち上がった。父から引き継がれた愛用の短刀を依り代に、秋之介は菊助の霊魂に語りかける。
「親父……、力を貸してくれ。……白古護神、急々如律令!」
短刀から白い閃光がほとばしり、秋之介の身を覆う。光が収束すると、そこには秋之介の姿はなく、代わりに彼にそっくりな、けれども年嵩の男が堂々と立っていた。
『あいつが俺を頼るなんて滅多にねえしな。ここは父親らしくひと肌脱ぐか。っつーことだから、てめえの相手は俺がしてやるよ』
菊助はにやりと笑うと現帝に斬りかかった。霊力は秋之介の方が大きいが、それをも上回るほどに洗練された刀捌きで、現帝も嗤いを収める。
「なかなかやるな」
『そりゃどーも』
数十合打ち合うも実力は互角と言ったところで、なかなか勝負が決しない。
大見得をきったものの菊助は次第に焦りを感じていた。
(こいつの傷の深さ、残りの体力と霊力を考えてもあんまり無茶できねぇな)
姿は菊助のものに代わっていても、本体は秋之介の方だ。自分自身の身なら多少の無理は通せても、なんだかんだいっても大事な一人息子の身に万が一のことがあってはいけない。
煩雑な思考に悩まされる菊助の手が鈍る。現帝がその隙を見逃すはずもなかった。
(やべ……っ)
短刀を弾き飛ばされそうになった刹那、菊助の思考に秋之介の声が割り込んだ。
(しっかりしろよ、親父!)
𠮟咤の声と同時に緩んでいた手に力がこもる。菊助は現帝の攻撃を寸でのところで避けた。
続く現帝の攻撃を捌ききりながら、菊助は秋之介の声に耳を傾けていた。
(あかりもゆづも昴も、命を懸けて戦ってんだ! 元より俺だけ無事に済むなんて思ってねえ。俺の持てる力をすべて使っていい。あかりが反閇できるだけの時間さえ稼げればいいんだ。俺に遠慮なんかすんじゃねえ!)
(秋之介、おまえ……)
息子は親が思う以上に成長していたようだ。そのことに気づかされて、ようやく気持ちが定まった。
菊助の顔に強気な笑みが浮かぶ。
『言ったな。だったら俺について来いよ!』
(ああ!)
今まで以上の速度で短刀が振りぬかれた。
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