【本編完結】朱咲舞う

南 鈴紀

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第二四話 失われたもの

第二四話 一一

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 そんな日々を送っていたある日、司から呼び出しがかかった。
 時人が昴との約束通り司の身を守り切ったため、司もまたこの戦いを生き抜いていた。陰の国の現帝に捕らわれていたときに受けた傷も、今ではすっかり癒えている。
 修復され、清められた中央御殿の最上階、その謁見の間で、三人は司と向かい合って座っていた。
「皆さん、以前より顔色が良くなられたようで安心しました。……あかりさんは?」
 昴が代表して口を開く。
「今も意識は戻っておりません」
「……そう、ですか……」
 司は痛ましそうに顔を俯むけたが、次に顔を上げたときにはすっかり御上の顔に戻っていた。
「本日は皆さんにご相談したいことがあってお呼び立てしました。陰の国とのことです」
 三人は黙って話の続きを待った。
「陽の国で戦いが起こっていたのと同時刻に、陰の国の幼帝派も襲われていたそうです。協定を結んだのに援助ができなかったことを大変悔やまれておいででした。償いにはなるとは思わないけれども、新しく同盟を結ばないかと新しく即位した幼帝の名で提案がありました」
「……それを受け入れるかどうかのご相談ということですか」
「そうです。これは余がひとりで決定してはならないことだと思ったのです。皆さんはどう思われますか」
 三人は顔を見合わせ、すぐに司に向き直った。
「国のことを思えば、良いご提案かと」
「……そうですよね。御上としては受けるべき提案だとわかってはいるのです。ただ……」
 そこで司は言い淀む。しかし彼の言わんとしていることは予想がついた。
 良い提案であっても、それをすんなり受け入れられるほど気持ちの整理はついていないということだ。同盟を結び、平和が訪れたとしても、亡くなった人々は帰ってこない。傷ついた心が完全に癒えることはない。なによりあかりが戻ってこないことが心をひどくかき乱す。陰の国側も言っていたが、陰の国の事情に巻き込まれただけの陽の国からしてみれば、そんなことが償いになるとは到底思えず、すぐに許せるはずもなかった。
 けれど陽の国を担う立場としては、この同盟は結んでおくべきだと頭ではわかっている。だから司も、三人もただ頷くのだ。
 去り際に司は呟いた。
「荒地をの駆る野の先に立つ鹿も違えをすれば違うとぞ聞く」
 それは悪夢を吉夢に変える夢違えの詞だった。
「余にできることといえばこんなことしかありませんが……。どうか眠るあかりさんの夢が彼女にとって優しいものでありますように。そして早く目覚めますように」
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