【本編完結】朱咲舞う

南 鈴紀

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第二五話 希望の灯

第二五話 六

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 美しく色づいた葉は散り行き、その上を真っ白な雪が覆う。
 あかりは中庭に降り積もった雪に指先で触れると、狐の耳と尾までぶるりと震わせた。
「つめたい。さむい。……きらい」
 そうしてぱたぱたと室内に戻ってきて、秋之介の隣に座った。
「お?」
「あき、ふわふわ。あったかい。すき」
 あかりは白虎姿の秋之介の首に抱き着くと顔をうずめた。
「ったく、しょうがねえなぁ」
 言葉とは裏腹に秋之介は嬉しそうにしている。昴は微笑ましそうに二人のやりとりを見守っていたが、結月は面白くなさそうにして温かい緑茶をすすっていた。
「ゆづー。そう拗ねんなよ」
 秋之介がにやつきながら結月をからかうと、結月は冷ややかな視線とともに秋之介を睨み返した。
「拗ねてない」
「いや、どこがだよ! 気に入らないって顔に書いてあんぞ!」
 昴はいよいよ声を立てて笑った。
「本当にゆづくんと秋くんは仲が良いよね。まあ、僕たちのお姫様に好きって言ってもらえるのは羨ましいかな。ね、あかりちゃ……」
「ふふ。みんな、なかよし。うれしい」
 昴だけではなく、結月も秋之介も驚きに目を瞠り、言葉を失った。
 目覚めてから今日まで、あかりの表情は虚ろで、それこそ人形のようでもあった。その彼女が初めて笑ったのだから。
 ずっと見たいと願っていた笑顔とは少し違うけれど、それでもどんな形であれあかりが笑ってくれただけで今は十分だと思えた。
 あかりは稚く無邪気な笑顔で言葉を並べた。
「あき、すき。すばる、すき。ゆづき、すき」
 単にあかりが思ったことを言葉にしただけかもしれないが、昴には先ほど語りかけた『あかりに好きと言ってもらえるのは羨ましい』という台詞の返事のようにも聞こえた。
(君はいつだって、僕たちに希望を見せてくれるね)
 何も変わらない日々が続いていると思っていたが、実際は少しずつ何かが変わっていたのかもしれない。あかりの笑顔はまさに希望の光そのもので、それだけで明るい未来を想像できた。
『平和で笑顔があって幸せな日々が続く……。そんな未来を、結月と秋と昴と一緒に私は生きたいな』
 その約束が果たされる日はきっとやってくる。
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