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第二六話 繋がる想い
第二六話 一
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翌日、日付にすれば文月七日。この日はあかりの二〇歳の誕生日だった。
なんとなく目に留まった紅型模様の美しい赤の紗の着物を着付け、透け感のある黒茶の帯を締める。帯揚げを合わせ、三分紐にはガラス製の赤い花の帯留めを通した。
そしていつものように縁側に腰かける。常なら目の前に広がる中庭や空を眺めるところだが、今日は陽光に輝く帯留めに目が行った。
それをじっと見つめていると、背後から声が掛かった。
「あかり、おはよう」
「ゆづき」
あかりが振り返る動きに合わせて、長い赤髪がふわりと翻る。結うでもなく髪飾りをつけるでもなくただ下ろしたままの髪を見て、結月は思案気な顔をした。
「暑くないの?」
「あつい」
「だよね。あかり、かんざしの場所、わかる?」
「かんざし、あそこ」
あかりは腰を上げると棚の上に置かれた小間物の入った箱を持って結月の側に戻って来た。
「これ」
そう言って箱のふたを開ける。中には見覚えのあるつまみ細工のかんざしやガラスの朝顔のかんざしなど、数本のかんざしが収められていた。
あかりはガラスでできた朝顔が咲くかんざしを指さして「これ、すき」と言った。
「うん。じゃあ、これにしよう」
結月はあかりの背後に座り直すと「少しじっとしてて」とあかりの髪を結い始めた。
ほどなくしてきれいに結い上げられたあかりの髪に結月は朝顔のかんざしを挿して満足そうに微笑んだ。
「よし、完成」
どんな仕上がりになったのか見えないあかりは首をあちこちに巡らせている。その度にかんざしがきらきらと光を反射して光っていた。
「大丈夫。似合ってるよ」
結月が可笑しそうに小さく笑うと、あかりはようやく落ち着いた。
「あかり、今日、誕生日でしょ」
「たんじょうび」
「うん。だからお祝いしよう」
結月は立ち上がるとあかりに左手を差し出した。
「行こう、あかり。秋も昴も、待ってる」
あかりは安心してその手をとった。
なんとなく目に留まった紅型模様の美しい赤の紗の着物を着付け、透け感のある黒茶の帯を締める。帯揚げを合わせ、三分紐にはガラス製の赤い花の帯留めを通した。
そしていつものように縁側に腰かける。常なら目の前に広がる中庭や空を眺めるところだが、今日は陽光に輝く帯留めに目が行った。
それをじっと見つめていると、背後から声が掛かった。
「あかり、おはよう」
「ゆづき」
あかりが振り返る動きに合わせて、長い赤髪がふわりと翻る。結うでもなく髪飾りをつけるでもなくただ下ろしたままの髪を見て、結月は思案気な顔をした。
「暑くないの?」
「あつい」
「だよね。あかり、かんざしの場所、わかる?」
「かんざし、あそこ」
あかりは腰を上げると棚の上に置かれた小間物の入った箱を持って結月の側に戻って来た。
「これ」
そう言って箱のふたを開ける。中には見覚えのあるつまみ細工のかんざしやガラスの朝顔のかんざしなど、数本のかんざしが収められていた。
あかりはガラスでできた朝顔が咲くかんざしを指さして「これ、すき」と言った。
「うん。じゃあ、これにしよう」
結月はあかりの背後に座り直すと「少しじっとしてて」とあかりの髪を結い始めた。
ほどなくしてきれいに結い上げられたあかりの髪に結月は朝顔のかんざしを挿して満足そうに微笑んだ。
「よし、完成」
どんな仕上がりになったのか見えないあかりは首をあちこちに巡らせている。その度にかんざしがきらきらと光を反射して光っていた。
「大丈夫。似合ってるよ」
結月が可笑しそうに小さく笑うと、あかりはようやく落ち着いた。
「あかり、今日、誕生日でしょ」
「たんじょうび」
「うん。だからお祝いしよう」
結月は立ち上がるとあかりに左手を差し出した。
「行こう、あかり。秋も昴も、待ってる」
あかりは安心してその手をとった。
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