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第二六話 繋がる想い
第二六話 八
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「生まれてきてくれて、私たちのもとにやってきてくれて、ありがとう。あなたはきっとこの世を、あなたの大事な人たちを、あなた自身をも照らすあかりとなるわ」
「ああ、きっとそうだね。……『あかり』、この子にぴったりの名前だ」
慈愛に満ちた声が降り注ぎ、柔らかで温かい体温に包み込まれる。懐かしくて、でも忘れられるはずがないこの声と体温は……。
(お母様、お父様)
「奇一奇一たちまち雲霞を結ぶ、宇内八方御方長南、たちまち急戦を貫き、南都に達し、朱咲に感ず、奇一奇一たちまち感通、急々如律令」
朝日が射しこむ祈祷の間に清らかな赤い光が舞う。
「きらきら!」
まだ話せるようになったばかりのあかりはきゃっきゃと両腕を伸ばして光の粒に触れようとする。そんなあかりをまつりは微笑んで見守っていた。
「きいつ、きいつ……えっと?」
「あら、もう真似できるの? いつかあかりにもできるようになるわよ。さあ、朝ごはんにしましょうか」
「ごはん!」
まつりに抱き上げられたあかりはその腕の中で無邪気に笑った。
「あかり、お父様との約束は言えるかい?」
「なにがあってもさいごまであきらめないこと」
「お母様との約束は?」
「れいけんはまもるためにつかうこと。のりとはこころをこめてうたうこと」
あかりが一言一句間違えずに答えると、天翔もまつりも満足げに微笑んだ。
「よくできたね」
「昴くんたちの言うことはよく聞いて、気をつけて任務にあたるのよ」
「うん! やくそく、ちゃんとまもるよ!」
あかりが大きく手を振ると、両親も手を振り返して送り出してくれた。
「あげる。お疲れ様」
任務の後。まだ幼い結月は右の袂から青い紙包みを取り出してあかりに手渡す。
「ありがとう!」
紙包みを受け取ったとたん、あかりはぱっと花を咲かせたような笑顔を見せる。先ほどの任務中に見せた鬼気迫るような真剣な表情はもうどこにもない。
任務終わりにいつも結月がくれるものは決まっていて、中身は見ずともわかる。
「お前、力使うと腹減ったーってうるせえからな」
「しょうがないでしょ。そういうものなんだから」
にやにや笑う秋之介をひと睨みするが、秋之介には全く効果がなかった。
あかりは結月からもらった青い紙包みを開けた。中には予想通り金平糖が入っていた。青、白、かなり珍しいが黒、そして一番多いのは赤だ。赤い金平糖を一粒つまんで、ぱくりと口に入れた。舌の上にじんわりと甘さが広がる。
あかりはへらりと幸せそうに笑った。
「甘いものって幸せになるよね~。結月も食べる?」
「ううん。あかりがそうやって笑ってるの見るだけで、おれも、しあわせ」
「じゃあ、うんと美味しそうに食べるね!」
「うん」
金平糖は幸せの味がした。
「ゆづくん」
昴の声は珍しく硬く厳しいものだった。
言われる前から内容に見当がついていた結月の顔は暗い。
「……わかってる」
「わかってない」
結月の言葉尻に被せるようにして昴が言い放つ。
「君が妖を攻撃したくない気持ちはできれば尊重したいよ。だけど、もうそんなことは言っていられなくなってきた。このままだとゆづくんの命が危ないんだよ」
「でも……」
結月は手元の霊符を見下ろした。呪符に比べて護符の方が枚数が多い。
優しい結月は同族の妖を攻撃することを未だに躊躇っていた。
「結月……」
あかりが瞳を揺らして結月を見上げると、彼ははっとした表情になって、それから俯いた。
「わかった……」
この日以降、結月の霊符は護符より呪符の方が多くなった。
「ああ、きっとそうだね。……『あかり』、この子にぴったりの名前だ」
慈愛に満ちた声が降り注ぎ、柔らかで温かい体温に包み込まれる。懐かしくて、でも忘れられるはずがないこの声と体温は……。
(お母様、お父様)
「奇一奇一たちまち雲霞を結ぶ、宇内八方御方長南、たちまち急戦を貫き、南都に達し、朱咲に感ず、奇一奇一たちまち感通、急々如律令」
朝日が射しこむ祈祷の間に清らかな赤い光が舞う。
「きらきら!」
まだ話せるようになったばかりのあかりはきゃっきゃと両腕を伸ばして光の粒に触れようとする。そんなあかりをまつりは微笑んで見守っていた。
「きいつ、きいつ……えっと?」
「あら、もう真似できるの? いつかあかりにもできるようになるわよ。さあ、朝ごはんにしましょうか」
「ごはん!」
まつりに抱き上げられたあかりはその腕の中で無邪気に笑った。
「あかり、お父様との約束は言えるかい?」
「なにがあってもさいごまであきらめないこと」
「お母様との約束は?」
「れいけんはまもるためにつかうこと。のりとはこころをこめてうたうこと」
あかりが一言一句間違えずに答えると、天翔もまつりも満足げに微笑んだ。
「よくできたね」
「昴くんたちの言うことはよく聞いて、気をつけて任務にあたるのよ」
「うん! やくそく、ちゃんとまもるよ!」
あかりが大きく手を振ると、両親も手を振り返して送り出してくれた。
「あげる。お疲れ様」
任務の後。まだ幼い結月は右の袂から青い紙包みを取り出してあかりに手渡す。
「ありがとう!」
紙包みを受け取ったとたん、あかりはぱっと花を咲かせたような笑顔を見せる。先ほどの任務中に見せた鬼気迫るような真剣な表情はもうどこにもない。
任務終わりにいつも結月がくれるものは決まっていて、中身は見ずともわかる。
「お前、力使うと腹減ったーってうるせえからな」
「しょうがないでしょ。そういうものなんだから」
にやにや笑う秋之介をひと睨みするが、秋之介には全く効果がなかった。
あかりは結月からもらった青い紙包みを開けた。中には予想通り金平糖が入っていた。青、白、かなり珍しいが黒、そして一番多いのは赤だ。赤い金平糖を一粒つまんで、ぱくりと口に入れた。舌の上にじんわりと甘さが広がる。
あかりはへらりと幸せそうに笑った。
「甘いものって幸せになるよね~。結月も食べる?」
「ううん。あかりがそうやって笑ってるの見るだけで、おれも、しあわせ」
「じゃあ、うんと美味しそうに食べるね!」
「うん」
金平糖は幸せの味がした。
「ゆづくん」
昴の声は珍しく硬く厳しいものだった。
言われる前から内容に見当がついていた結月の顔は暗い。
「……わかってる」
「わかってない」
結月の言葉尻に被せるようにして昴が言い放つ。
「君が妖を攻撃したくない気持ちはできれば尊重したいよ。だけど、もうそんなことは言っていられなくなってきた。このままだとゆづくんの命が危ないんだよ」
「でも……」
結月は手元の霊符を見下ろした。呪符に比べて護符の方が枚数が多い。
優しい結月は同族の妖を攻撃することを未だに躊躇っていた。
「結月……」
あかりが瞳を揺らして結月を見上げると、彼ははっとした表情になって、それから俯いた。
「わかった……」
この日以降、結月の霊符は護符より呪符の方が多くなった。
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