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第二六話 繋がる想い
第二六話 七
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あかりがそっとまぶたを押し上げると、そこは何もないただただ白い空間だった。
『あかり』
鈴音に呼ばれてあかりはくるりと振り返った。
そこには美しい五色の羽を持った鳳凰が堂々と宙に浮かんでいた。
「こえ、しってる。あなた、だれ?」
三度目の同じ問いに、少女の声で鳳凰は答える。
『妾は、朱咲』
「すざく……」
『そうじゃ。ずっとそなたに会いたいと思っておったよ、妾の愛し子』
朱咲は優しい微笑みの吐息をこぼした。
「わたし、も、あなたに、あいたかった」
会えば、忘れている何かを思い出せるような気がして。
朱咲は『知っておったよ』と大きく頷いた。
『妾はあかりの中にいたのだから。そなたにはほんに酷な選択をさせてしまった。そのことをずっと申し訳なく思っていた。謝りたかったのに交感するための霊力もそなたは失ってしまって……どうなることかと思っておったが、こうしてまた話す機会が訪れたのじゃ』
朱咲から告げられた真実のほとんどをあかりは理解できなかったが、唯一わかったことがある。
「あなた、は……わたしに、なにがあったか、しっている?」
『知っているよ』
ならば、とあかりは一歩、足を踏み出した。
「わたし、しりたい。おしえて、ほしい」
『……それが、辛く苦しい過去であってもか?』
躊躇いなくあかりは頷く。過去に置いてきてしまったものを取り戻したいと願ったときに、あかりは迷いを捨てた。
朱咲の言うように辛く苦しい過去だったのかもしれない。けれど、結月たちと過ごしているうちに、きっとそれだけではない優しくてあたたかな思い出もあったはずだと信じられたから。
『ならば、強く願うと良い。そのお守りが不完全なあかりの想いの力を補ってくれるはずじゃ』
(つよく、ねがう……)
あかりは手の中にあった二つのお守りをぎゅっと握りしめた。
「わたし、は……なくしたぜんぶ、を、とりもどしたい!」
『その願い、聞き届けたぞ』
白かった世界は一瞬にして赤色に染まった。
『あかり』
鈴音に呼ばれてあかりはくるりと振り返った。
そこには美しい五色の羽を持った鳳凰が堂々と宙に浮かんでいた。
「こえ、しってる。あなた、だれ?」
三度目の同じ問いに、少女の声で鳳凰は答える。
『妾は、朱咲』
「すざく……」
『そうじゃ。ずっとそなたに会いたいと思っておったよ、妾の愛し子』
朱咲は優しい微笑みの吐息をこぼした。
「わたし、も、あなたに、あいたかった」
会えば、忘れている何かを思い出せるような気がして。
朱咲は『知っておったよ』と大きく頷いた。
『妾はあかりの中にいたのだから。そなたにはほんに酷な選択をさせてしまった。そのことをずっと申し訳なく思っていた。謝りたかったのに交感するための霊力もそなたは失ってしまって……どうなることかと思っておったが、こうしてまた話す機会が訪れたのじゃ』
朱咲から告げられた真実のほとんどをあかりは理解できなかったが、唯一わかったことがある。
「あなた、は……わたしに、なにがあったか、しっている?」
『知っているよ』
ならば、とあかりは一歩、足を踏み出した。
「わたし、しりたい。おしえて、ほしい」
『……それが、辛く苦しい過去であってもか?』
躊躇いなくあかりは頷く。過去に置いてきてしまったものを取り戻したいと願ったときに、あかりは迷いを捨てた。
朱咲の言うように辛く苦しい過去だったのかもしれない。けれど、結月たちと過ごしているうちに、きっとそれだけではない優しくてあたたかな思い出もあったはずだと信じられたから。
『ならば、強く願うと良い。そのお守りが不完全なあかりの想いの力を補ってくれるはずじゃ』
(つよく、ねがう……)
あかりは手の中にあった二つのお守りをぎゅっと握りしめた。
「わたし、は……なくしたぜんぶ、を、とりもどしたい!」
『その願い、聞き届けたぞ』
白かった世界は一瞬にして赤色に染まった。
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追記:2025/09/20
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もし気になる方は、
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