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第二六話 繋がる想い
第二六話 六
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玄舞家に着いて間もなく、あかりの誕生日を祝う夕食会が催された。
夕食会はつつがなく終わり、春朝、香澄、梓は先に各々の自邸へと帰っていった。
結月と秋之介は、今夜は玄舞家に泊まるらしい。夕食会の会場から昴の部屋に移動することになった。
「あかりちゃんもおいで」
昴に呼ばれて、あかりも彼らの後についていく。
いつものように車座になって座ったところで、秋之介の鼻先があかりの左手をつついた。
「あかり。手ぇ出せ」
「?」
言われるがままあかりは手のひらを上にして手を差し出した。するとその上に結月が軽く握った左手を載せる。その手がどけられると、あかりの手に四色の紐で編まれた組紐が残った。色は言わずもがな赤、青、白、黒で、組紐の片端には小さな鈴がついている。
「これ……」
あかりは袂から古くて色褪せた組紐を取り出した。取り出したそれと今しがた受け取った組紐は酷似している。
「お守りだよ。あかりちゃんの謡も聴かせたし、昔のものほど強い力はないにせよちゃんと効力はあるはずだよ」
「古い組紐は、もうほとんど力を残してなかった、から。新しく、作り直した」
「つーわけで、俺たちからの誕生日の贈り物だ。おめでとな、あかり」
「あかりちゃん、お誕生日おめでとう」
「おめでとう。こうしてまた祝うことができて、良かった、本当に」
結月、秋之介、昴の笑顔を目にして、あかりの中で蘇る声があった。
『来年もまた、結月と秋と昴と一緒に誕生日を過ごしたい。……過ごせますように』
それはいつかの自分が言霊にして残した未来への願い。
いつのことだったかまでは思い出せないのでもしかしたら今は『来年』ではないのかもしれないが、こうして再び四人そろってあかりの誕生日を迎えられただけで十分だと思えた。
気づいたらいくつもの大粒の涙があかりの頬を転がり落ちていた。
「あかりちゃん……?」
「おいおい。急にどうしたんだよ」
「あかり、泣かないで」
結月たちの声を聞くほどに、あかりの涙の粒は大きくなる。
「やくそく、たくさん。まもれない。ごめん、なさい……っ」
たくさんの約束を未来のためにと交わしてきた。それなのに誰と何を約束したのかが思い出せない。きっとひとつだって忘れていいはずがないのに。
「やくそく、まもりたい。どうする? わからない……!」
悔しい、情けない、悲しい。こんなにも暴れる感情が自分の中にあったなんてあかりは知らなかった。
「っ……ぅ! ごめ、なさ……っ! ごめ……」
ふわりと。
泣きじゃくり、謝ることしかできないあかりを優しく抱きしめたのは結月だった。
「あかり。もう、謝らないで。泣かないで」
「ゆ、づき……」
結月は声を落として、あかりを落ち着かせるように語って聞かせる。
「あかりとは、たくさん約束、した。そのうちの、ひとつはね……」
『結月とずっと一緒にいたい。でも、それだけじゃなくて昴と秋とも一緒にいられたらなぁって思ってるんだよ。戦いのない世界で、今みたいに四人ずっと一緒にいたいの。平和で笑顔があって幸せな日々が続く……。そんな未来を、結月と秋と昴と一緒に私は生きたいな』
『……うん。叶えよう、一緒に』
「約束を、一緒に、叶えようって言った。だから、あかりが謝る必要、ない」
「やくそく、まもれない。それでも……?」
「あかりは、約束を破ってなんか、ない。だってこれから、果たしてくれるんでしょう?」
あかりが目を大きく見開くと、眦に残った最後のひとしずくが散っていく。
(やくそく、まもる、これから。だから、わたし、は……)
初めて、失ってしまったあかりを形づくる全てを取り戻したいと強く強く願った。
「わたし、は……しりたい、とりもどしたい……! やくそく、を、かなえたい!」
赤い光がわっと舞い踊る中、散りゆく涙が新しいお守りに落ちる。
あかりの強い想いに共鳴して、お守りから発された赤い光があかりの視界を覆いつくした。
夕食会はつつがなく終わり、春朝、香澄、梓は先に各々の自邸へと帰っていった。
結月と秋之介は、今夜は玄舞家に泊まるらしい。夕食会の会場から昴の部屋に移動することになった。
「あかりちゃんもおいで」
昴に呼ばれて、あかりも彼らの後についていく。
いつものように車座になって座ったところで、秋之介の鼻先があかりの左手をつついた。
「あかり。手ぇ出せ」
「?」
言われるがままあかりは手のひらを上にして手を差し出した。するとその上に結月が軽く握った左手を載せる。その手がどけられると、あかりの手に四色の紐で編まれた組紐が残った。色は言わずもがな赤、青、白、黒で、組紐の片端には小さな鈴がついている。
「これ……」
あかりは袂から古くて色褪せた組紐を取り出した。取り出したそれと今しがた受け取った組紐は酷似している。
「お守りだよ。あかりちゃんの謡も聴かせたし、昔のものほど強い力はないにせよちゃんと効力はあるはずだよ」
「古い組紐は、もうほとんど力を残してなかった、から。新しく、作り直した」
「つーわけで、俺たちからの誕生日の贈り物だ。おめでとな、あかり」
「あかりちゃん、お誕生日おめでとう」
「おめでとう。こうしてまた祝うことができて、良かった、本当に」
結月、秋之介、昴の笑顔を目にして、あかりの中で蘇る声があった。
『来年もまた、結月と秋と昴と一緒に誕生日を過ごしたい。……過ごせますように』
それはいつかの自分が言霊にして残した未来への願い。
いつのことだったかまでは思い出せないのでもしかしたら今は『来年』ではないのかもしれないが、こうして再び四人そろってあかりの誕生日を迎えられただけで十分だと思えた。
気づいたらいくつもの大粒の涙があかりの頬を転がり落ちていた。
「あかりちゃん……?」
「おいおい。急にどうしたんだよ」
「あかり、泣かないで」
結月たちの声を聞くほどに、あかりの涙の粒は大きくなる。
「やくそく、たくさん。まもれない。ごめん、なさい……っ」
たくさんの約束を未来のためにと交わしてきた。それなのに誰と何を約束したのかが思い出せない。きっとひとつだって忘れていいはずがないのに。
「やくそく、まもりたい。どうする? わからない……!」
悔しい、情けない、悲しい。こんなにも暴れる感情が自分の中にあったなんてあかりは知らなかった。
「っ……ぅ! ごめ、なさ……っ! ごめ……」
ふわりと。
泣きじゃくり、謝ることしかできないあかりを優しく抱きしめたのは結月だった。
「あかり。もう、謝らないで。泣かないで」
「ゆ、づき……」
結月は声を落として、あかりを落ち着かせるように語って聞かせる。
「あかりとは、たくさん約束、した。そのうちの、ひとつはね……」
『結月とずっと一緒にいたい。でも、それだけじゃなくて昴と秋とも一緒にいられたらなぁって思ってるんだよ。戦いのない世界で、今みたいに四人ずっと一緒にいたいの。平和で笑顔があって幸せな日々が続く……。そんな未来を、結月と秋と昴と一緒に私は生きたいな』
『……うん。叶えよう、一緒に』
「約束を、一緒に、叶えようって言った。だから、あかりが謝る必要、ない」
「やくそく、まもれない。それでも……?」
「あかりは、約束を破ってなんか、ない。だってこれから、果たしてくれるんでしょう?」
あかりが目を大きく見開くと、眦に残った最後のひとしずくが散っていく。
(やくそく、まもる、これから。だから、わたし、は……)
初めて、失ってしまったあかりを形づくる全てを取り戻したいと強く強く願った。
「わたし、は……しりたい、とりもどしたい……! やくそく、を、かなえたい!」
赤い光がわっと舞い踊る中、散りゆく涙が新しいお守りに落ちる。
あかりの強い想いに共鳴して、お守りから発された赤い光があかりの視界を覆いつくした。
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