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第四話 休日の触れ合い
第四話 一三
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目の前には小さいながらも、華やかさに目を惹かれる花屋があった。
オレンジ色が眩しいガーベラ、優しげなピンク色のスイートピー、印象的な赤色のカーネーション、春を予感させる黄色のナノハナなどの切り花やいくつものモモの花をつけた切り枝が店内奥に置かれており、真っ白な花をこんもりと咲かせるノースポール、凛とした紫色が美しいカンパニュラ、白とピンクのグラデーションが可愛らしいラナンキュラスなどの鉢植えが店外の軒先に並べられていた。店先の目立つところにはミニブーケやリース、バスケットなども少しずつ飾られている。
この街らしくて、とても絵になる光景だと慈乃は感嘆の息を吐いた。
テオが花に駆け寄る後を追うように、スイセンと慈乃も花屋に入る。
テオが真っ先に興味を抱いたのはスイセンの花で、指をさして振り返った。
「あったよ、お兄ちゃんのおはな!」
スイセンは花を見て一瞬だけ不快そうな表情を浮かべたものの、すぐにテオに向き直ると優しく微笑んだ。
「うん、スイセンだね。黄色と白色と、どっちにしようか」
テオは目の前に並ぶ黄色の花と白色の花をじっと見てから、スイセンの顔を見上げた。そこで悩む素振りを見せたが、それも僅かの間だった。
「こっち。スイお兄ちゃんとおんなじいろ」
テオが選んだのは白色のスイセンだった。彼の言うように、スイセンの髪と瞳の色は、花弁の白色と副花冠の黄色をそっくりそのまま写し取ったかのようで美しい。
「わかった、白だね。他に入れたい花はある?」
「あとはねー、お姉ちゃんの……えっと、かも……、カモミール? いれたい」
スイセンは困ったように、慈乃へと振り返った。
「ぼく、カモミールってあまり見かけたことがないんですけど、この時季の花屋にあるものなんでしょうか」
「少なくとも、花期はまだ、ですが……」
そんな二人の様子に気づいたのか、店員の女性がどうしたのかと訊いてきたので、スイセンがカモミールを取り扱っているのか尋ねた。店員は申し訳なさそうに眉を寄せて言った。
「すみません。うちではカモミールなんて珍しい花は取り扱っていないんです。私が小さい頃にはまだあったんですけど、出回り期はもう少し先だったと思います」
スイセンがお礼を言うと、店員は「ごゆっくりどうぞ」とその場を離れた。
テオも雰囲気で事情を察したようで、残念そうな顔をしていた。
「仕方ないね。違うのにしようか」
スイセンに促されて、じっくりと花の吟味をしたテオは、青紫色の愛らしいムスカリ、ほんのりピンク色をしたひらひらのスイートピー、明るい黄色のナノハナを選んだ。
まとまりはないものの、小さな子どもらしく色とりどりの花で束ねられたミニブーケは彼らの部屋にきっとよく似合うだろう。
テオは小さな花束を両手で大事そうに持った。
スイセンはそんなテオの様子に満足げに笑った。
「それじゃあ、花がしおれる前に帰ろうか。シノさんも、それで大丈夫ですか」
特に異論はなかったので慈乃が首を縦に振ると、スイセンはゆっくりと学び家の方角へと歩き出した。
夕方にさしかかった街は、昼間以上にひとでごった返していた。
「はぐれないように、手をつなごうか」
「うん」
本当の兄弟のようで心が和むな、とぼんやり二人を眺めていた慈乃に、手が差し出された。腕を辿り、僅かに視線を下げると、いつの間に反対隣に回り込んでいたのか、にこりとした笑顔のスイセンと目が合った。
慈乃の戸惑いをよそに、スイセンはさらりと言った。
「両手が空いているのはシノさんだけなので」
つまり、慈乃を真ん中に手をつなごうということか。
「テオはそっちね」
スイセンは荷物を左手に抱え直し、空いた右手で慈乃の左手を取った。
テオも花束をそっと右手に握ると、左腕をいっぱいに伸ばした。
遠慮がちに二人の手を取る。慈乃は両手に伝わる自分より高い体温が、自らの心を温めてくれているように感じていた。
オレンジ色が眩しいガーベラ、優しげなピンク色のスイートピー、印象的な赤色のカーネーション、春を予感させる黄色のナノハナなどの切り花やいくつものモモの花をつけた切り枝が店内奥に置かれており、真っ白な花をこんもりと咲かせるノースポール、凛とした紫色が美しいカンパニュラ、白とピンクのグラデーションが可愛らしいラナンキュラスなどの鉢植えが店外の軒先に並べられていた。店先の目立つところにはミニブーケやリース、バスケットなども少しずつ飾られている。
この街らしくて、とても絵になる光景だと慈乃は感嘆の息を吐いた。
テオが花に駆け寄る後を追うように、スイセンと慈乃も花屋に入る。
テオが真っ先に興味を抱いたのはスイセンの花で、指をさして振り返った。
「あったよ、お兄ちゃんのおはな!」
スイセンは花を見て一瞬だけ不快そうな表情を浮かべたものの、すぐにテオに向き直ると優しく微笑んだ。
「うん、スイセンだね。黄色と白色と、どっちにしようか」
テオは目の前に並ぶ黄色の花と白色の花をじっと見てから、スイセンの顔を見上げた。そこで悩む素振りを見せたが、それも僅かの間だった。
「こっち。スイお兄ちゃんとおんなじいろ」
テオが選んだのは白色のスイセンだった。彼の言うように、スイセンの髪と瞳の色は、花弁の白色と副花冠の黄色をそっくりそのまま写し取ったかのようで美しい。
「わかった、白だね。他に入れたい花はある?」
「あとはねー、お姉ちゃんの……えっと、かも……、カモミール? いれたい」
スイセンは困ったように、慈乃へと振り返った。
「ぼく、カモミールってあまり見かけたことがないんですけど、この時季の花屋にあるものなんでしょうか」
「少なくとも、花期はまだ、ですが……」
そんな二人の様子に気づいたのか、店員の女性がどうしたのかと訊いてきたので、スイセンがカモミールを取り扱っているのか尋ねた。店員は申し訳なさそうに眉を寄せて言った。
「すみません。うちではカモミールなんて珍しい花は取り扱っていないんです。私が小さい頃にはまだあったんですけど、出回り期はもう少し先だったと思います」
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「仕方ないね。違うのにしようか」
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まとまりはないものの、小さな子どもらしく色とりどりの花で束ねられたミニブーケは彼らの部屋にきっとよく似合うだろう。
テオは小さな花束を両手で大事そうに持った。
スイセンはそんなテオの様子に満足げに笑った。
「それじゃあ、花がしおれる前に帰ろうか。シノさんも、それで大丈夫ですか」
特に異論はなかったので慈乃が首を縦に振ると、スイセンはゆっくりと学び家の方角へと歩き出した。
夕方にさしかかった街は、昼間以上にひとでごった返していた。
「はぐれないように、手をつなごうか」
「うん」
本当の兄弟のようで心が和むな、とぼんやり二人を眺めていた慈乃に、手が差し出された。腕を辿り、僅かに視線を下げると、いつの間に反対隣に回り込んでいたのか、にこりとした笑顔のスイセンと目が合った。
慈乃の戸惑いをよそに、スイセンはさらりと言った。
「両手が空いているのはシノさんだけなので」
つまり、慈乃を真ん中に手をつなごうということか。
「テオはそっちね」
スイセンは荷物を左手に抱え直し、空いた右手で慈乃の左手を取った。
テオも花束をそっと右手に握ると、左腕をいっぱいに伸ばした。
遠慮がちに二人の手を取る。慈乃は両手に伝わる自分より高い体温が、自らの心を温めてくれているように感じていた。
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