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第五話 誕生に感謝と祝福を
第五話 六
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サーヤを先頭に、一行は食堂に足を踏み入れた。
その瞬間、ばっと花が舞った。
「マリ」
「カルリアお姉ちゃん」
「スギ兄」
「ツクシ兄ちゃん」
「シノ姉さん」
「お誕生日、おめでとー!」
元気な声に続いて、盛大な拍手が響き渡る。
ツクシ、スギナ、カルリアは勝手もわかっているので慣れた様子で「ありがとう」と嬉しそうに祝福を受けている。マリカも一瞬、大きな音にびくりと肩を震わせたものの、すぐにきゃっきゃと笑顔になった。
この状況に最もついていけないのはやはり慈乃で、目の前でウタセに手を振られるまで呆然と立ち尽くしていた。
「シノー? 大丈夫?」
「……あ、はい。大丈夫、です……」
やっと我にかえった慈乃は、周囲を見回してみる。
折り紙の飾りが四面の壁を彩り、机には花瓶に活けられた小さな花束がひとつずつ置かれている。食堂の入り口を半円形に囲むように、皆が立っていた。その足元には色とりどりの花が舞い落ちている。
ふと気になったので、かがんでいくつかを掌に拾い上げた。
紅赤色のジニア、蒲公英色のセイヨウタンポポ、柿色と黄赤色のグラデーションのガザニア、萩色のアゲラタム、白色のスイセン、白色のヒイラギ、紫式部色のムラサキシキブ、若草色のホトケノザ、薄花色のデルフィニウム、群青色のツユクサ。
慈乃の予想通り、それらは全て学び家にいる花守の花だった。
慈乃はそっと両手に花を包み込んでから立ち上がった。不思議なことに、花がぬくもりをもっているようである。
「あたたかい……」
「花守と呼応して、花の精もお祝いしてくれてるんだよ」
横合いから、ウタセが慈乃の手に乗るセイヨウタンポポをちょんとつついた。
「うん、おめでとうって言ってるよ」
セイヨウタンポポの精の声を聞いたのであろうウタセが、無邪気な笑顔で教えてくれる。
慈乃が軽く頷き返すと、下から服の裾を引かれた。
「シノ姉ちゃん! はやくすわって!」
レヤに促されて、慈乃は席に着いた。そこは主役の集まる席らしく、ツクシ達は既に着席していた。
慈乃はひとまず携帯していたハンカチに拾った花をくるんで、机の脇に退けた。それをツクシとスギナがちらりと目にしたようで、ツクシは興味深げに慈乃と花とを交互に見る。
「物好きだね~」
「きれいだったので、つい……」
隣のマリカは、側にあるハンカチが気になるのか手を伸ばしている。慈乃がハンカチの中を見せると「おはな!」と言って、一番大きなガザニアを指さした。慈乃がそれをマリカの髪に挿すと、マリカは花にも負けないくらいの明るい笑顔を見せた。
「ありがと!」
「どういたしまして」
司会の準備をしていたガザが振り返って、マリカにグーサインを送る。
「その中からガザニアを選ぶなんて、マリカは見る目があるな! 似合ってるぜ」
「かわいい?」
「おう! 可愛いぞー」
「ガザさん、司会の準備は終わったんですか」
ソラルが手伝いの手を止めて、ガザを呆れ眼で見遣る。ガザはそれへウインクを送り返した。
「あとはオレの心の準備だけ!」
「……ならさっさと始めてくださいよ」
ガザは一度深呼吸すると、声を張り上げた。
「それでは、誕生会を始めまーす! 司会はオレと、たまにソラルが務めるんで、よろしくー」
ぱちぱちと拍手があがる中、ガザは「どもども」とぺこりとしてから続ける。
「んじゃ、今日の主役の皆さんをご紹介! はい、五人はきりーつ、前に来て」
五人が前に並ぶと、ガザは順番に紹介した。
「まずは明後日が誕生日のツクシとスギナ。今年で一六歳の双子です」
ツクシはひらひらと手を振っていたが、隣のスギナは小さく頭を下げただけだった。
「次が四四日のマリカだな。マリカはいくつになるんだ?」
「んと……に?」
スギナが繋いでいた手を引くと、マリカが顔を上げた。
「練習したやつ」
「あっ、さんさい!」
自信たっぷりに三本の指を突き立てる。スギナはその様子に目元を緩ませた。
「そんで、五三日はリアの番。今年が最後の一五歳」
「今年の誕生会も期待してるよー?」
カルリアはおどけたように笑った。
「最後に五九日のシノ。……あれ、オレ、シノの年知らなくね?」
そう言って、司会補佐のソラルを困ったように見つめる。
「しっかりしてくださいよ」
ソラルは溜息をついたものの、素直に教えた。
「この間聞いたときは一八と言っていましたから、誕生日を迎えて一九です」
「ってことで一九歳になるらしい。五人ともおめでとー!」
盛大な拍手と、「おめでとう」という言葉が食堂いっぱいに満ちる。それが落ち着くと、ガザは再び場を取り仕切った。
「それではここで、誕生日プレゼントをお渡ししまーす。メリル達は前に出てきて」
ガザの合図で、メリル、ヨルメイ、アスキ、アヅ、ライモが手にプレゼントを持って、慈乃達に向かいあうようにして並び立つ。
「プレゼントを首にかけてあげような」
かがんだ慈乃の首にプレゼントをかけたのはアスキだ。
サーヤの気分によって変わる髪型は、今日は編み込みカチューシャのようにされている。普段は滅多に声を発さないアスキが「シノちゃん、おめでとう」と微笑んだ。
お礼を言って受け取ったプレゼントは厚紙と色紙で作られたメダルで、表面には慈乃の似顔絵とカモミールの花の絵と『シノ姉さん 一九歳のお誕生日おめでとう』の言の葉語の文字、裏面には制作者であろう『ウルフィニ・ヒイラギ』の名前と今日の年と日付が書かれていた。
察するに、字はヒイラギが書き、絵はウルフィニが描いたのだろう。
整った丁寧な文字を見て、ヒイラギはこんな字を書くのだということを、慈乃は初めて知った。また、慈乃は笑ったことなどないはずなのだが、ウルフィニが描いたシノは小さく笑っているようにも見える。
思わずウルフィニとヒイラギの方を見ると、思いがけずふたりともに目が合った。
ヒイラギは相変わらず何を考えているのか読めない表情をしていたが、慈乃と目が合うと微かに頷いたようだ。ウルフィニは対照的に、頬を僅かに桃色に染めて、はにかんだ。
プレゼントの授与が終わると、食事の時間になった。
普段でも、栄養や彩りに気を配った料理だが、今日は一段と力が入っているのが一目でわかる。
品数も多く、机は料理でいっぱいになった。
中でも目を惹いたのは、食用花が飾られたサラダだった。皿に敷かれたレタスの上に、キュウリ、ニンジン、タマネギの色合いが食欲をそそるポテトサラダ。その脇に、紫色や黄色のビオラが添えられている。
食事中にニアに聞いた話では、昼食同様、夕食もウタセとスイセンが積極的に手伝ってくれたらしい。さすがのニアでもひとりでやるとなるとそれなりに大変なので、非常に助かったと笑っていた。
食後に出たケーキにも、エディブルフラワーが使われていた。黄色、ピンク色、紫色のプリムラが飾られたフルーツタルトは実に華やかで、味はもちろんのことながら、見た目にも楽しめた。
こちらは昨日から仕込んでいたニアの自信作らしい。昨日から準備されていたなんて慈乃は知らなかったと言ったら、ニアは「サプライズ成功!」と嬉しそうにしていた。
その瞬間、ばっと花が舞った。
「マリ」
「カルリアお姉ちゃん」
「スギ兄」
「ツクシ兄ちゃん」
「シノ姉さん」
「お誕生日、おめでとー!」
元気な声に続いて、盛大な拍手が響き渡る。
ツクシ、スギナ、カルリアは勝手もわかっているので慣れた様子で「ありがとう」と嬉しそうに祝福を受けている。マリカも一瞬、大きな音にびくりと肩を震わせたものの、すぐにきゃっきゃと笑顔になった。
この状況に最もついていけないのはやはり慈乃で、目の前でウタセに手を振られるまで呆然と立ち尽くしていた。
「シノー? 大丈夫?」
「……あ、はい。大丈夫、です……」
やっと我にかえった慈乃は、周囲を見回してみる。
折り紙の飾りが四面の壁を彩り、机には花瓶に活けられた小さな花束がひとつずつ置かれている。食堂の入り口を半円形に囲むように、皆が立っていた。その足元には色とりどりの花が舞い落ちている。
ふと気になったので、かがんでいくつかを掌に拾い上げた。
紅赤色のジニア、蒲公英色のセイヨウタンポポ、柿色と黄赤色のグラデーションのガザニア、萩色のアゲラタム、白色のスイセン、白色のヒイラギ、紫式部色のムラサキシキブ、若草色のホトケノザ、薄花色のデルフィニウム、群青色のツユクサ。
慈乃の予想通り、それらは全て学び家にいる花守の花だった。
慈乃はそっと両手に花を包み込んでから立ち上がった。不思議なことに、花がぬくもりをもっているようである。
「あたたかい……」
「花守と呼応して、花の精もお祝いしてくれてるんだよ」
横合いから、ウタセが慈乃の手に乗るセイヨウタンポポをちょんとつついた。
「うん、おめでとうって言ってるよ」
セイヨウタンポポの精の声を聞いたのであろうウタセが、無邪気な笑顔で教えてくれる。
慈乃が軽く頷き返すと、下から服の裾を引かれた。
「シノ姉ちゃん! はやくすわって!」
レヤに促されて、慈乃は席に着いた。そこは主役の集まる席らしく、ツクシ達は既に着席していた。
慈乃はひとまず携帯していたハンカチに拾った花をくるんで、机の脇に退けた。それをツクシとスギナがちらりと目にしたようで、ツクシは興味深げに慈乃と花とを交互に見る。
「物好きだね~」
「きれいだったので、つい……」
隣のマリカは、側にあるハンカチが気になるのか手を伸ばしている。慈乃がハンカチの中を見せると「おはな!」と言って、一番大きなガザニアを指さした。慈乃がそれをマリカの髪に挿すと、マリカは花にも負けないくらいの明るい笑顔を見せた。
「ありがと!」
「どういたしまして」
司会の準備をしていたガザが振り返って、マリカにグーサインを送る。
「その中からガザニアを選ぶなんて、マリカは見る目があるな! 似合ってるぜ」
「かわいい?」
「おう! 可愛いぞー」
「ガザさん、司会の準備は終わったんですか」
ソラルが手伝いの手を止めて、ガザを呆れ眼で見遣る。ガザはそれへウインクを送り返した。
「あとはオレの心の準備だけ!」
「……ならさっさと始めてくださいよ」
ガザは一度深呼吸すると、声を張り上げた。
「それでは、誕生会を始めまーす! 司会はオレと、たまにソラルが務めるんで、よろしくー」
ぱちぱちと拍手があがる中、ガザは「どもども」とぺこりとしてから続ける。
「んじゃ、今日の主役の皆さんをご紹介! はい、五人はきりーつ、前に来て」
五人が前に並ぶと、ガザは順番に紹介した。
「まずは明後日が誕生日のツクシとスギナ。今年で一六歳の双子です」
ツクシはひらひらと手を振っていたが、隣のスギナは小さく頭を下げただけだった。
「次が四四日のマリカだな。マリカはいくつになるんだ?」
「んと……に?」
スギナが繋いでいた手を引くと、マリカが顔を上げた。
「練習したやつ」
「あっ、さんさい!」
自信たっぷりに三本の指を突き立てる。スギナはその様子に目元を緩ませた。
「そんで、五三日はリアの番。今年が最後の一五歳」
「今年の誕生会も期待してるよー?」
カルリアはおどけたように笑った。
「最後に五九日のシノ。……あれ、オレ、シノの年知らなくね?」
そう言って、司会補佐のソラルを困ったように見つめる。
「しっかりしてくださいよ」
ソラルは溜息をついたものの、素直に教えた。
「この間聞いたときは一八と言っていましたから、誕生日を迎えて一九です」
「ってことで一九歳になるらしい。五人ともおめでとー!」
盛大な拍手と、「おめでとう」という言葉が食堂いっぱいに満ちる。それが落ち着くと、ガザは再び場を取り仕切った。
「それではここで、誕生日プレゼントをお渡ししまーす。メリル達は前に出てきて」
ガザの合図で、メリル、ヨルメイ、アスキ、アヅ、ライモが手にプレゼントを持って、慈乃達に向かいあうようにして並び立つ。
「プレゼントを首にかけてあげような」
かがんだ慈乃の首にプレゼントをかけたのはアスキだ。
サーヤの気分によって変わる髪型は、今日は編み込みカチューシャのようにされている。普段は滅多に声を発さないアスキが「シノちゃん、おめでとう」と微笑んだ。
お礼を言って受け取ったプレゼントは厚紙と色紙で作られたメダルで、表面には慈乃の似顔絵とカモミールの花の絵と『シノ姉さん 一九歳のお誕生日おめでとう』の言の葉語の文字、裏面には制作者であろう『ウルフィニ・ヒイラギ』の名前と今日の年と日付が書かれていた。
察するに、字はヒイラギが書き、絵はウルフィニが描いたのだろう。
整った丁寧な文字を見て、ヒイラギはこんな字を書くのだということを、慈乃は初めて知った。また、慈乃は笑ったことなどないはずなのだが、ウルフィニが描いたシノは小さく笑っているようにも見える。
思わずウルフィニとヒイラギの方を見ると、思いがけずふたりともに目が合った。
ヒイラギは相変わらず何を考えているのか読めない表情をしていたが、慈乃と目が合うと微かに頷いたようだ。ウルフィニは対照的に、頬を僅かに桃色に染めて、はにかんだ。
プレゼントの授与が終わると、食事の時間になった。
普段でも、栄養や彩りに気を配った料理だが、今日は一段と力が入っているのが一目でわかる。
品数も多く、机は料理でいっぱいになった。
中でも目を惹いたのは、食用花が飾られたサラダだった。皿に敷かれたレタスの上に、キュウリ、ニンジン、タマネギの色合いが食欲をそそるポテトサラダ。その脇に、紫色や黄色のビオラが添えられている。
食事中にニアに聞いた話では、昼食同様、夕食もウタセとスイセンが積極的に手伝ってくれたらしい。さすがのニアでもひとりでやるとなるとそれなりに大変なので、非常に助かったと笑っていた。
食後に出たケーキにも、エディブルフラワーが使われていた。黄色、ピンク色、紫色のプリムラが飾られたフルーツタルトは実に華やかで、味はもちろんのことながら、見た目にも楽しめた。
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