カモミールの福音 ~花と〈家族〉に癒される優しい世界の物語~

南 鈴紀

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第一〇話 日常の一幕

第一〇話 四

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「すごろく、神経衰弱、かるた……これは?」
 慈乃は一部を声に出して呟く。共通するのは遊びという点だが、何を話し合うことがあったのか。
 ミトドリは軽く頷くと、慈乃の問いに答えた。
「梅雨の間は外で遊べないだろう? 何か大会でも催したら退屈しないかもしれないとウタと話していたんだ」
「いいですね」
「せっかくレヤ達もいるんだし、何かやりたいことあったら教えて?」
 ウタセがレヤ、フィオ、ホノに向き直る。すぐに勢いよく挙手したのはレヤだった。
「はいっ! オレ、独楽回しやりたい!」
「レヤは独楽回すの上手だよね」
「フィオとすっげー練習したし! な、フィオ」
「な」
 レヤとフィオはお互いの顔を見て、にかっと笑いあった。その仲睦まじい様子にウタセもミトドリも微笑んだ。
 一方ホノは、慈乃も巻き込んで話し合っていた。目的はホノ達未就学児が梅雨でも楽しめる中遊びを考えることなのだが、社会科見学という名目上慈乃も積極的に案を出すことになったのだ。
「シノ姉は何かある?」
「独楽……あ、おはじきなんてどうでしょ……」
 そこまでいって、ホノに睨まれた。慈乃はその視線の意味を察して、慌てて言い直した。
「……どうかしら」
「おはじきって飾るものじゃないの?」
「点を取り合って遊べるのよ」
 慈乃はおはじき遊びのルールを簡単に説明した。遊び方に決まったものはないが、慈乃が一番親しんだものを例にする。
「おはじきを並べて、枠の外に弾き飛ばしたものを持ち点にしていって、最後に一番多く取れたひとの勝ちとか。他にも遊び方はあるけれど」
「へー、そうなのね。知らなかった!」
「催し物でなくとも、一緒に遊んでみる?」
「うん、遊びたい!」
 静観していたウタセがリストにおはじきを追加してから、慈乃とホノを振り返った。
「シノの話し方はどうしたの? びっくりしたんだけど」
「おままごとの間は、家族と話すときにですとかますはなしねって決めたの。ね、シノ姉」
 慈乃はホノに頷き返した。
「さっき話してたのと言い、まるで姉妹のようだね」
 ミトドリも微笑を湛えて、慈乃とホノを交互に見た。
「当たり前よ。役でも役じゃなくても、シノ姉はわたしのお姉ちゃんなんだから」
 ホノはきっぱりと言い切ると、慈乃を見てにっこり笑った。慈乃もつられて目元を和らげる。
「ええ、そうね。ホノちゃんは妹ですから、『姉妹のよう』ではないですよ、ミトさん」
「ふふ、そうだったね。これは失礼」
 ミトドリは愉しげに目を細めた。それはふたりの仲に対してか、慈乃の変化に対してか、あるいはそのどちらに対しても、かもしれない。
慈乃にはミトドリの考えは推し量れなかったが、自身の変化には少なからず気づくものがあった。以前だったら、ホノが言ったようなことも素直には受け入れられなかっただろう。しかし、今は純粋に嬉しく思い、受け止められるだけの余裕がある。
さらにいえば、ミトドリのことを愛称で呼んだこともそうだ。ミトドリは言及しなかったが、気づいたかもしれない。
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