カモミールの福音 ~花と〈家族〉に癒される優しい世界の物語~

南 鈴紀

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第一二話 私と僕はどこか似ている

第一二話 二

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 特に反対されることなく送り出された慈乃は、ウタセとともに先生宅のあるという街外れへと向かっていた。自宅兼診療所のそこは三番地と四番地の境に位置するらしい。普段はあまり通らない道をウタセの案内で進む。
 周囲の花園に茂る青草は深みを増し、その間から顔を覗かせる色とりどりの花々も一層色合いを濃くしている。春はとうに過ぎ、夏の始まりを予感させる風景だった。湿り気を帯びた風が吹き、土のにおいを立ち上らせた。
 ウタセは胸いっぱいに新鮮な空気を吸い込んだ。
「こっちの方は梅雨明けが近そうだね」
 四番地へ寄るにつれて、日射しは白さを増していく。四番地は夏本番だろう。三番地にもいずれ訪れる夏を思い、慈乃は小さく息をついた。
「夏は楽しみですが、梅雨が終わるのはもったいないと思ってしまいます」
「そうなの? あんまり聞かない感想だけど」
 ウタセが目をまるくする。
 梅雨といっても日本ほどじめじめとした気候でもなく、慈乃はここの梅雨がそれほど苦ではない。それに加え、梅雨に増える中遊びの時間が慈乃は好きだった。天気が良いと外に遊びに行ってしまう子ども達も、雨が降ると遊戯室に集い、和気あいあいと遊んでいる。普段ならあまり目にすることのないグループから生まれる会話やいつものグループであってもその日その時で異なるやりとりは、今の時季ならではだと慈乃は思っていた。
 それがもうすぐ見られなくなると思うと、梅雨が過ぎ去るのが惜しまれる。
 慈乃がそのように打ち明けると、ウタセはくすくすと笑った。
「なるほどね。言われてみればそうだよねえ」
「この前の休日ではライちゃんとアヅくんが下の子の面倒を見てましたし、ソラくん以上の男の子五人が集まって遊んでいました」
 慈乃は四日前のことを思い返した。
ライモは慈乃の作った絵本をアスキ、ヨルメイ、テオ、ウルフィニに読み聞かせており、アヅはホノ、レヤ、フィオ、メリルにあやとりを教えていた。
また、ガザ、トゥナ、ソラルのおなじみの三人に、スイセンとヒイラギが加わり、その日の遊戯室でのメインイベントである工作をやっていたのも慈乃は目にした。ビー玉をゴールまで運ぶための迷路を箱を切り貼りすることで作っていたのだが、懐かしいと和やかに始まったそれは次第に本格化していき、最終的には大作が完成した。慈乃も完成作品で遊んでみたが、障害物に阻まれ、落とし穴に落とされ、ゴールするのに苦労した。
「あの迷路でしょ? 僕も見たよ」
 ウタセも件の迷路には心当たりがあるようだった。苦笑を浮かべてはいたが、感心しているような口ぶりでもある。
「明日の休みで二階層にするんだとかってラギとガザが張り切ってたよ」
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