カモミールの福音 ~花と〈家族〉に癒される優しい世界の物語~

南 鈴紀

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第一三話 夏風邪の魔法

第一三話 一九

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「読み聞かせなんてどうですか」
 自らの幼少期を思い出しての提案だった。慈乃の母は慈乃が寝つくまで絵本や創作した物語を暗唱してくれた。母の優しさが滲む物語や物語を紡ぐ柔らかな声が慈乃はダイス下った。
 ホノも快く賛成してくれたので、彼女が寝るまで読み聞かせをすることに決定した。
「どんなお話がいいですか」
「シノ姉の『たびのさきに』がまた聞きたいわ。シノ姉が話してくれたのってお花見の時が最後だったでしょ? ちゃんと最後までシノ姉に話してほしいの」
 そのときの情けない姿を思い出して慈乃は羞恥に頬を赤くしたが、室内は薄暗かったのでニアとホノにはわからなかったようだ。内心ほっとため息を吐きながら、物語を紡ぎ始めた。
「『とおいほしの ちいさなくにの おはなしです。テルルとフレレという ふたりの しまいが いました。ふたりは なにをするにも いつもいっしょで とてもなかよしでした。テルルの ゆめは いつかいっしょに フレレと たびをすることでした。おおきくなって そのゆめは かないました。』」
 ホノもニアも静かに慈乃の声に聞き入っていた。
「『さいしょに いったのは しぜんの ゆたかなくに でした。たべものが いっぱいで、ふっとたひと ばかりです。みちのはしには たくさんの たべのこしが すててありました。つぎの くには たたかいを していました。ひとがひとを きずつけているのです。ふたりは みちばたで くるしそうにしているひとに おみずを わけてあげました。しかし やけどだらけの そのひとは まもなく しんでしまいました。』」
 集中して聞いてくれているのであろうホノの気配が右隣から感じられた。慈乃はそれを嬉しく思いながら語り続けた。
「『みっつめのくには まずしいところでした。ちいさなこどもが たべものを くださいと あたまを さげています。しかし、みんな しらないふりを していきます。どのひとにも よゆうが ないのです。ふたりが たべものを さしだすと、そのこは たべものだけをもって はしって にげてしまいました。よっつめのくには さばくの くにでした。すないがい なにもない さびしいくに でした。」
 慈乃の丁寧な語り口調が良い子守唄になったかのように、ホノはうつらうつらし始めた。それでも物語をしっかり聞き届けようと目を開けていた。ニアがくすりと笑った。
「フレレは げんじつを しりました。そして ふかく なげきました。「こんなせかいで いきていくことは できないよ」 テルルは いいました。「こんなせかいだから いきてみようよ」 フレレは びっくりしました。「なんで そんなことが いえるの」 すると テルルは わらいました。「だって こうして せかいを しった わたしたちなら なにかを かえることが できるかもしれないよ」」「できないよ」 「まだ やってもいないのに わからないよ」 フレレは たびに でたときのことを おもいだしました。さいしょは たびにでるなんて できないと おもっていたこと。しかし、テルルは ゆめを かなえたのです。テルルといっしょなら もしかしたら かなしいせかいを かえることが できるかもしれない。フレレは テルルを しんじることにしました。ふたりの たびは まだ はじまった ばかりです。 おしまい』」
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