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第一九話 迷子の色
第一九話 二
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食堂には既に何人かの人影があった。
廊下でウタセとスギナに会ったことといい、今朝は予定より行動が遅くなってしまっているようだ。考え事をしながら行動しているため、効率が落ちてしまっているのだろう。
(せめて仕事くらいしっかりこなさないと……)
慈乃は内心反省し、急いで厨房に入った。
ニアに今朝の献立を確認してから作業にとりかかる。時間がおしていることはニアも承知なのか、それとも慈乃に気を遣ってか、珍しく会話のないまま朝食づくりは進行した。
その甲斐あって時間は巻き返すことができ、料理を提供する時間はいつもと変わらない時刻だった。
「さっすがあたしとシノ! 間に合って良かった」
洗った手を拭いながらニアは食堂に入った。少し遅れて慈乃も後に続く。
空いている席に慈乃が腰を下ろすと、前に立ったニアがいつもの朝食前の号令をかけた。
「みんなー、おててを合わせて、いただきます!」
「いただきます!」
今朝の席は向かいにニア、左隣にホノ、斜向かいにクルルが着席していた。リンドウが近くにいないことに安堵してしまったのも束の間、じとっとした視線を向けられていることに気が付いた。
「どうかしましたか、クルルちゃん」
おそるおそる顔を上げて視線の主を見れば、クルルは眉間にしわを寄せていた。
「暗い」
「え?」
返ってきた短い言葉に慈乃は呆けた声をもらした。そのやり取りを見ていたクルルの隣に座るトゥナが軽く身を乗り出す。
「シノ姉の顔が暗くて心配なんじゃないかな」
「解説しないでちょうだい!」
右隣を睨みつけていたクルルだったが、改めて慈乃に向き直るとまたしても険しい表情を浮かべた。しかし心なしかその頬は淡く朱に染まっている。クルルは長いため息を吐いた。
「辛気臭い顔して、何かあったの?」
「それは……」
慈乃が言い淀むと、クルルは思いの外あっさりと引き下がった。
「まあ、別に言いたくなきゃ言わないでいいけど。でも、いつまでもそんな顔してないでよね。……話くらい聞いてあげるし」
それまで黙って慈乃達の会話を聞いていたホノが手を挙げた。
「わたしもわたしも。お話ならいつでもしましょう」
「……はい。ありがとうございます、おふたりとも」
言葉とは裏腹に慈乃の顔は浮かないままで、クルルとホノは思案気な顔を見合わせた。
(クルルちゃん達までに心配かけて、情けない。さっきだって仕事はしっかりしようって決めたばかりじゃない)
上手く笑うことはできないが、感情を表に出さないようにすることは得意だ。せめてと慈乃は暗い表情をしないよう努めた。
(大丈夫よ。以前に戻ったと思えば慣れたものだし、リンドウくんだってそのうち落ち着くはず……)
それまでは自分が耐えて、我慢すればいい。それで事は丸く収まって、昨日今日の出来事もそんなこともあったと笑い話にできる日が来るかもしれない。
視野が狭くなった慈乃にはまわりの声を聞く余裕はなかった。考えつくのは自己犠牲に酔ったくだらないことばかりで、我ながら呆れると心の内で嘲った。
賑やかな朝食の時間はいつもだったら早く時間が過ぎてしまうのを名残惜しく思うのに、今日ばかりはゆっくりと進んでいるようで気疲れしてしまった。
廊下でウタセとスギナに会ったことといい、今朝は予定より行動が遅くなってしまっているようだ。考え事をしながら行動しているため、効率が落ちてしまっているのだろう。
(せめて仕事くらいしっかりこなさないと……)
慈乃は内心反省し、急いで厨房に入った。
ニアに今朝の献立を確認してから作業にとりかかる。時間がおしていることはニアも承知なのか、それとも慈乃に気を遣ってか、珍しく会話のないまま朝食づくりは進行した。
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おそるおそる顔を上げて視線の主を見れば、クルルは眉間にしわを寄せていた。
「暗い」
「え?」
返ってきた短い言葉に慈乃は呆けた声をもらした。そのやり取りを見ていたクルルの隣に座るトゥナが軽く身を乗り出す。
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「解説しないでちょうだい!」
右隣を睨みつけていたクルルだったが、改めて慈乃に向き直るとまたしても険しい表情を浮かべた。しかし心なしかその頬は淡く朱に染まっている。クルルは長いため息を吐いた。
「辛気臭い顔して、何かあったの?」
「それは……」
慈乃が言い淀むと、クルルは思いの外あっさりと引き下がった。
「まあ、別に言いたくなきゃ言わないでいいけど。でも、いつまでもそんな顔してないでよね。……話くらい聞いてあげるし」
それまで黙って慈乃達の会話を聞いていたホノが手を挙げた。
「わたしもわたしも。お話ならいつでもしましょう」
「……はい。ありがとうございます、おふたりとも」
言葉とは裏腹に慈乃の顔は浮かないままで、クルルとホノは思案気な顔を見合わせた。
(クルルちゃん達までに心配かけて、情けない。さっきだって仕事はしっかりしようって決めたばかりじゃない)
上手く笑うことはできないが、感情を表に出さないようにすることは得意だ。せめてと慈乃は暗い表情をしないよう努めた。
(大丈夫よ。以前に戻ったと思えば慣れたものだし、リンドウくんだってそのうち落ち着くはず……)
それまでは自分が耐えて、我慢すればいい。それで事は丸く収まって、昨日今日の出来事もそんなこともあったと笑い話にできる日が来るかもしれない。
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