カモミールの福音 ~花と〈家族〉に癒される優しい世界の物語~

南 鈴紀

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第二四話 再び紡ぐ物語

第二四話 一六

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昼食後、慈乃たちはさっそく街へ下りることにした。
 ニアの言ったように今日は天気が良い。真っ青な空は高く、薄く白い雲がたなびいていた。丘を吹き抜ける風はすっかり冷たく、秋の深まりを身に染みて感じた。
「ところで、皆さんはどこに行こうとしているのですか」
前を歩くシキブとサーヤが、慈乃の隣にいるヒイラギに視線を集めた。ヒイラギがぼそりと答える。
「新作スイーツを、買いに行く……」
「なるほど」
 生菓子が彼らの目的となると、ニアのおつかいは先に済ませてしまった方がいいかもしれない。頼まれたものは幸い軽いものだった。
 慈乃がそのように伝えると、三人も同意してくれた。
「シノ姉さんこそ、ニア姉さんに何を頼まれたのさ」
「エディブルフラワーです」
 慈乃が答えると、ヒイラギ達が不思議そうな顔をした。
「今日、なんか祝い事、あったか……?」
「在庫を切らしただけではないかしらぁ」
「シノ姉さんは何か聞いてないの?」
「いいえ。特には」
 慈乃も何故今日、急におつかいを頼まれたのかはわからない。理由も聞いていなかった。
「わからないことを考えても仕方ないか」
 サーヤがさっぱりと言うと、ヒイラギとシキブも「そうだな」「そうよねぇ」と声をそろえたので、慈乃もこれ以上頭を悩ませていても仕方ないと思い直した。
 雑談をしながら慈乃達は丘を進み、やがて街についた。
 最初に寄ったのはひいきにしている食用花を取り扱う店だった。
「あら、お姉さん。久しぶりじゃない」
 店員は慈乃のことを覚えていたらしい。久しぶりに顔を見せたことにすぐに気づいたようだった。
「ご無沙汰しています」
「元気そうでよかったわー。今日は何をお求め?」
「赤系と黄系のミックスを一つずつと、ビオラの詰め合わせを二ついただけますか」
「はいよ。今包むからちょっと待っててね」
 店員は手際よく注文の品を包んだ。代金を渡して、慈乃は包みを受け取った。
「ありがとうございます」
「こちらこそ。また来てね!」
 店員に見送られ、慈乃達は店を後にすると、今度はヒイラギが行きたがっているケーキ屋を目指した。頻繁に通う店だそうで、道には迷わず目的の店に着いた。
 店内に入り、慈乃はシキブとサーヤとともにショーケースの中のケーキや棚やテーブルに並べられた焼き菓子を眺めていた。見ているだけでも心が華やぐそれらに目を奪われていると、新作スイーツを購入したヒイラギが慈乃達のもとに戻って来た。
「あら、ヒーさん。早かったですねぇ」
「目的のものは買えた?」
「ああ」
 四人は連れ立って外へ出た。秋になり、短くなった太陽は僅かに傾きかけていた。
「皆さん、用事は済みましたか」
「はいぃ」
「では、帰りましょうか。この頃、日も短くなってきましたしね」
「うん」
 街を出て、丘を上る。その頃にはもう空は橙色に染まり、夕陽が燦然と輝いていた。風に揺れた丘の草がちらちらと陽光を反射した。
「夕方は冷えるね」
 軽く腕をさすりながらサーヤが呟いた。
「そうねぇ。夕飯は何かしらぁ。温かいものがいいわねぇ」
「自分は、シチューが食べたい……」
「ちょっと早くない?」
 広大な丘に三人の笑い声が吸い込まれる。慈乃は彼らの後ろ姿を眺めて、ひっそりと微笑みを浮かべたのだった。
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