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第二九話 思い出を形に残して
第二九話 三
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夕食の席が偶然にもミトドリの向かいだった慈乃は事情を話し、カメラについて訊いてみた。ミトドリは慈乃の提案に賛成したが、「ただ……」と顔を曇らせた。
「カメラはどこかに行ってしまってね」
「え?」
まるでカメラに足でも生えたかのような言い回しに慈乃は戸惑いを覚える。隣で話を聞いていたらしいソラルが呆れた目でミトドリを見ていた。
「そんなわけないでしょう。ミトさん、また物を失くしたんですか」
「いやぁ、勝手になくなっているんだから不思議だよねぇ」
ミトドリはおおらかに笑うだけだ。ソラルはため息を吐くと慈乃を振り返った。
「カメラは諦めた方が早いかもしれないですよ」
「そんな……」
見るからに悲しそうな顔をする慈乃に、ミトドリは慌てて笑いを引っ込めた。
「そんな顔をしなくともきちんと探すさ。そうだな……。明日の朝に部屋においで」
「あ、ありがとうございます……!」
慈乃がぱっと表情を明るくすると、ミトドリはほっと胸を撫でおろした。
まるで娘に嫌われたくない父親のようだと思いながら、ソラルは苦笑をこぼした。
「ミト兄、入るよー?」
翌朝、朝食後に慈乃とウタセはミトドリの部屋にやって来た。ウタセが部屋の扉を叩くと、がさごそという物音に混じってミトドリの声が返ってきた。
「どうぞ」
「お邪魔しまーす」
慈乃を後ろに下がらせたウタセが慎重に扉を手前に開けると、目の前で本が雪崩を起こした。相変わらず足の踏み場もない雑然とした部屋を眺めて、ウタセは大きなため息を吐いた。
「もう。この間片付けたばっかりなのに、またこんなに散らかして……」
ミトドリは手を止めると慈乃とウタセに向き直った。
「ああ、二人とも。今ちょうど見つかったよ」
そういうとミトドリは雑多な物の山の中から手を引き抜いた。その手にはカメラがある。
「はい、どうぞ」
「ありがとうございます……!」
慈乃は嬉々としてミトドリからカメラを受け取った。
どんな日常の風景を切り取ろうか、想像するだけで胸が躍る。
上機嫌な慈乃を見て、ミトドリとウタセは目を細めた。
「ありがとう、ミト兄。じゃあ、シノ、行こうか」
「撮り終わったらわたしにも見せておくれね」
「はい……!」
こうして慈乃とウタセはミトドリの部屋を後にし、撮影会が始まった。
「カメラはどこかに行ってしまってね」
「え?」
まるでカメラに足でも生えたかのような言い回しに慈乃は戸惑いを覚える。隣で話を聞いていたらしいソラルが呆れた目でミトドリを見ていた。
「そんなわけないでしょう。ミトさん、また物を失くしたんですか」
「いやぁ、勝手になくなっているんだから不思議だよねぇ」
ミトドリはおおらかに笑うだけだ。ソラルはため息を吐くと慈乃を振り返った。
「カメラは諦めた方が早いかもしれないですよ」
「そんな……」
見るからに悲しそうな顔をする慈乃に、ミトドリは慌てて笑いを引っ込めた。
「そんな顔をしなくともきちんと探すさ。そうだな……。明日の朝に部屋においで」
「あ、ありがとうございます……!」
慈乃がぱっと表情を明るくすると、ミトドリはほっと胸を撫でおろした。
まるで娘に嫌われたくない父親のようだと思いながら、ソラルは苦笑をこぼした。
「ミト兄、入るよー?」
翌朝、朝食後に慈乃とウタセはミトドリの部屋にやって来た。ウタセが部屋の扉を叩くと、がさごそという物音に混じってミトドリの声が返ってきた。
「どうぞ」
「お邪魔しまーす」
慈乃を後ろに下がらせたウタセが慎重に扉を手前に開けると、目の前で本が雪崩を起こした。相変わらず足の踏み場もない雑然とした部屋を眺めて、ウタセは大きなため息を吐いた。
「もう。この間片付けたばっかりなのに、またこんなに散らかして……」
ミトドリは手を止めると慈乃とウタセに向き直った。
「ああ、二人とも。今ちょうど見つかったよ」
そういうとミトドリは雑多な物の山の中から手を引き抜いた。その手にはカメラがある。
「はい、どうぞ」
「ありがとうございます……!」
慈乃は嬉々としてミトドリからカメラを受け取った。
どんな日常の風景を切り取ろうか、想像するだけで胸が躍る。
上機嫌な慈乃を見て、ミトドリとウタセは目を細めた。
「ありがとう、ミト兄。じゃあ、シノ、行こうか」
「撮り終わったらわたしにも見せておくれね」
「はい……!」
こうして慈乃とウタセはミトドリの部屋を後にし、撮影会が始まった。
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