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☆第二十六話 お嬢様の提案☆
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床面積のある二階建ての煉瓦倉庫を改修した自警団本部の正面入り口を、二人の若い男性自警団員が護っている。
正人はマントを翻しながら、二人の前へとユックリ着地。
「今晩は、ご苦労様です」
「おっ…こ今晩は…っ!」
空からの登場に驚かされたらしい二人は、慌てながらも綺麗な敬礼をくれた。
「ただいま団長はっ、各町内会組織のリーダーの方々と、会議中でして…っ!」
「はい、存じております。実は、ドングリウル自警団長へ、シーデリア様から 提案を預かって参りました」
「す、少しお待ちください!」
団員の一人が本部舎へと駆け込み、暫しして、ドングリウル団長が共に出て来る。
「アダ――マサトさん。何か、シーデリアさんから…?」
「はい。実は…」
正人は小声で、シーデリアの提案を伝えた。
「…それはっ、なるほど検討の価値ありですねっ! 丁度いま、各町内会組織の会長さんたちと会合中ですので、マサトさんも、このまま出席して下さい」
「はい」
自警団長に連れられて、正人は初めて自警団本部へと入り、会合室へと向かう。
早足での移動中、女性団長が、会合の状況を伝えてくれた。
「実は、会合はいまだ 解決策を見い出せない状況でして…」
「そうなのですか?」
「皆、お守りを回収するという事には異議無しなのですが…その方法に、皆が同意するアイディアが なかなか…」
一度、無料で手にしたプレゼントを、どうやって手放させるかは、たしかに難しいだろう。
「羊皮紙の件を人々に知られると、パニックになる恐れもありますし…何より、犯罪組織がそれを知ったら、すぐにでも魔方陣を活性化させてしまうかもしれません…!」
「そうですね…」
その可能性は、正人も懸念をしている。
とはいえ、回収に時間が掛かってしまえば、それだけ一般の人々を危険に晒し続けてしまうのだ。
件の羊皮紙を回収するには、テロ組織に感づかれず、更に魔法陣だと知らない人々が自ら差し出してくれる状況を作り出すのが、最善だろう。
「会合では…その方法が、なかなか…」
ドングリウルは口にしないが、広く撒かれたお守りとの交換用として対価を用意するにしても、予算などの限界もある。
そこまで話して、会合室の前へ到着をしたら、女性団長の美顔がパっと明るくなった。
「そういう意味でも、シーデリア嬢の提案は、まさしく『渡りに船』です! 流石は大店(おおだな)商人のお嬢様ですよ!」
会合室の扉が開かれると、各町内会組織の会長さんたちが、みなコチラに向く。
初老の男性七人と、同じく女性が二人。
「ドングリウルさん…ん?」
「その男性は…?」
美しい女性剣士の後ろに立つ、引き締まった肉体を目に痛い色合いのスーツで飾った銀色マスクの珍妙青年に、会長さんたちの興味が移った。
ドングリウルが、紹介をしてくれる。
「皆様も お聞き覚えがあると想います。最近、このオドサンの街を護ってくれている勇士の一人で、名をアイア――えぇ…ァ、アィァン・ァ…ダム…氏です…っ!」
「は…なんと?」
「ア、アイアン…っ?」
よく聞き取れなかった男性会長さんは耳を傾け、聞こえたらしい女性の会長さんは、聞き間違いかと顔を少ししかめた。
自身には未だ理由が分からないが、ヒーローの名前を言い辛い人もいるらしいので、青年は自ら、堂々と笑顔で名乗る。
「皆さん、初めまして。私はこの街の平和を守るお手伝いをさせて戴いてております、アイアン・アダムという者ですっ!」
「「「「「「「…ぉおお~っ!」」」」」」」
「「んまぁ…っ♪」」
「………」
男性会長さんたちは、その自信溢れる様子から逞しい若さを感じ、女性会長さんたちは驚き呆れながらもちょっと笑ってしまって、そしてうら若きドングリウルは羞恥に美顔を耳まで染めていた。
会長さんたちのリーダーらしい、白い髭を蓄えた老人が、仮面ヒーローへ問う。
「して…あなたの用件は?」
「はい。グラン商会の一支店舗を担当している、末娘のシーデリア嬢を 皆様もご存じかと想います」
「ええ。まだお若いのに、なかなかのヤリ手だと伺っておりますわ」
皮肉とかではなく、会長さんたちからシーデリアへの評価は、年齢以上と見て良いだろう。
「実は、此度の羊皮紙問題に関しまして、シーデリアさんから 回収に関する提案を預かって参りました」
「ほほぉ」
人々が無料で手に入れたお守りの回収方法として、決定的なアイディアが出てこない会長連合にとっては、耳に入れてみる価値がある話だろう。
正人は、ドングリウルの許可を貰って、列席の会長さんたちへ話し始めた。
「シーデリアさんの提案は、お守りを持参して来店されたお客様がたへ、その引き替えとして、シーデリアさんのお店限定ですが、割り引きチケットを配布する。というモノです」
「「「「「「「「「割引チケット…っ!?」」」」」」」」」
皆が驚いたのも、無理は無い。
そもそもグラン商会が扱っている商品は、基本的には一般市民には手が出ないような、高級品のブランド食器類や高級輸入雑貨である。
それら商品はただ高額なだけでなく、歴史ある工房や新たなデザイナーによる最新作など、いまや王室御用達の芸術品と称えられる逸品ばかりだ。
それらは特に、女性たちにとって憧れの的でもあり、シーデリアの担当している支店で扱われている割と低価格帯の商品ですら、一般女性には手が出し辛かったりする。
「そこで、シーデリアさんは『全品割引チケット』と交換をする事で、件の危険なお守りを回収しよう。というアイディアです」
「「「ふぅむ…」」」
会長たちは考え、シーデリアの代理人とも言える仮面ヒーローへ、再び問う。
「しかし…それでは グラン商会にとって、損益となってしまうのでは?」
その件も、実は正人が金髪お嬢様へ問うた懸案である。
「それに関しましても、シーデリアさんは『お店の宣伝になります。そして何より、オドサンの街あってのグラン商会です』と、答えておりました」
「「「ぅむむ…」」」
支店長とはいえ、グラン商会の若き末娘が、街への愛と決意を、ハッキリと示した言葉であった。
「割引チケットとの交換も『新たな店舗に焦ったグラン商会の小娘の、物知らずな苦肉の策と、犯罪組織への隠れ蓑にも なりましょう』とも、シーデリアさんは語ってます」
商売の世界で、支店を一店舗だけ任されている十七歳の少女がどのように見られるか。
それらも理解をしている上でのシーデリアの提案に、初老の会長たちも、素直に驚かされている。
「「「そ、それ程までの、決意を…っ!」」」
会長さんたちが思案をしていると、ドングリウルがシーデリアの提案の後押し。
「皆さん、この提案には オドサンの街だけでなく、人々の安全を護りたいという、シーデリアさんの想いが強く表れていると、私は感じます! そして人々も、喜んで件のお守りを手放してくれると、私も思います! 如何でしょうか?」
しばしの沈黙の後、会長連合の責任者である髭の老人が、告げる。
「…我々は、各町内の 商店の方々の代表者でもあります。その意味でも…ワシはワシの町内の商店主たちへ、明日にでも この提案を説明したいと考えます」
シーデリアの提案を受け入れた。
という意味だ。
「ふむ…そうですねぇ」
グラン商会という大店が動き、しかも若い娘の預かる支店の行動であり、逆にそれを各町内の個人店舗が力を合わせてでも出来るのかといえば、やはり現実的では無い。
「わたしも、これから皆へ 説明をしましょう」
「私も」
「うむ、私も!」
会長連の老人たちが、みなシーデリアのアイディアへ賛成を示し、対策を検討していてドングリウル自警団長の大きな瞳にも、涙が浮かぶ。
「み、皆さん…っ!」
「ありがとうございます! では、僕はあらためて、シーデリアさんへ伝えに戻ります。それでは!」
綺麗な礼を見せた仮面のヒーローは、眩しい笑顔を残して自警団本部から飛び出すと、薄曇りな夜空へと消えていった。
「いくらなんでも、もう日を跨いでいるし…シーデリアさんも――って、起きてるっ!?」
安宿への帰空路で、念のためにとシーデリアの別宅を見たら、なんと居間の窓明かりが灯っている。
「もしかして…僕が報告に寄ると、信じてくれているのかな…?」
それは自意識過剰かも。
とか想いつつも、万が一にも裏切るような事はしたくない正人は、窓へ寄って、小さく声がけ。
「ぁの…」
『お待ちしておりました』
食い気味の二つ返事でメイド長であるアリスの返事を頂いて、超人ヒーローでもちょっとビビったり。
「いらっしゃい、マサト様♪」
窓が開けられると、さっきとは違う衣装で着飾ったシーデリアが、満面の笑みで出迎えてくれた。
とはいえ、さすがに眠たそうな瞳ではある。
「ぁあのっ、シーデリアさん…っ!」
思いがけず、女性を夜中過ぎまで待たせてしまった事実に、仮面青年は慌てた。
「はい♪ …ふわわ…ぁ、失礼を…っ!」
つい欠伸が出て、恥ずかしそうに俯いた媚顔が真っ赤な金髪お嬢様は、黒髪メイドから教育的指導も受ける。
「ですからお嬢様、いくらなんでも夜更かしが過ぎます。ご覧になって下さい。マサト殿も、さすがに心配をしておいででございますです」
「マサト様…申し訳御座いませんでした…シュン」
正人を待って起きていたシーデリアを、待ち人の狼狽えっぷりまで利用して叱る、隙の無いアリスであった。
「い、いえ…それで、先ほどの シーデリアさんの提案ですが…」
時間も時間なので、正人は手早く、しかし出来るだけ丁寧に経緯を説明し、大人しく聞いていたシーデリアも、パァっと明るい笑顔が輝く。
「まぁ…有り難う御座います、マサト様♪ では早速、割引チケットの手配を――」
「それは日が昇ってからで御座いますです、お嬢様」
またメイド長に注意をされたシーデリアであった。
~第二十六話 終わり~
正人はマントを翻しながら、二人の前へとユックリ着地。
「今晩は、ご苦労様です」
「おっ…こ今晩は…っ!」
空からの登場に驚かされたらしい二人は、慌てながらも綺麗な敬礼をくれた。
「ただいま団長はっ、各町内会組織のリーダーの方々と、会議中でして…っ!」
「はい、存じております。実は、ドングリウル自警団長へ、シーデリア様から 提案を預かって参りました」
「す、少しお待ちください!」
団員の一人が本部舎へと駆け込み、暫しして、ドングリウル団長が共に出て来る。
「アダ――マサトさん。何か、シーデリアさんから…?」
「はい。実は…」
正人は小声で、シーデリアの提案を伝えた。
「…それはっ、なるほど検討の価値ありですねっ! 丁度いま、各町内会組織の会長さんたちと会合中ですので、マサトさんも、このまま出席して下さい」
「はい」
自警団長に連れられて、正人は初めて自警団本部へと入り、会合室へと向かう。
早足での移動中、女性団長が、会合の状況を伝えてくれた。
「実は、会合はいまだ 解決策を見い出せない状況でして…」
「そうなのですか?」
「皆、お守りを回収するという事には異議無しなのですが…その方法に、皆が同意するアイディアが なかなか…」
一度、無料で手にしたプレゼントを、どうやって手放させるかは、たしかに難しいだろう。
「羊皮紙の件を人々に知られると、パニックになる恐れもありますし…何より、犯罪組織がそれを知ったら、すぐにでも魔方陣を活性化させてしまうかもしれません…!」
「そうですね…」
その可能性は、正人も懸念をしている。
とはいえ、回収に時間が掛かってしまえば、それだけ一般の人々を危険に晒し続けてしまうのだ。
件の羊皮紙を回収するには、テロ組織に感づかれず、更に魔法陣だと知らない人々が自ら差し出してくれる状況を作り出すのが、最善だろう。
「会合では…その方法が、なかなか…」
ドングリウルは口にしないが、広く撒かれたお守りとの交換用として対価を用意するにしても、予算などの限界もある。
そこまで話して、会合室の前へ到着をしたら、女性団長の美顔がパっと明るくなった。
「そういう意味でも、シーデリア嬢の提案は、まさしく『渡りに船』です! 流石は大店(おおだな)商人のお嬢様ですよ!」
会合室の扉が開かれると、各町内会組織の会長さんたちが、みなコチラに向く。
初老の男性七人と、同じく女性が二人。
「ドングリウルさん…ん?」
「その男性は…?」
美しい女性剣士の後ろに立つ、引き締まった肉体を目に痛い色合いのスーツで飾った銀色マスクの珍妙青年に、会長さんたちの興味が移った。
ドングリウルが、紹介をしてくれる。
「皆様も お聞き覚えがあると想います。最近、このオドサンの街を護ってくれている勇士の一人で、名をアイア――えぇ…ァ、アィァン・ァ…ダム…氏です…っ!」
「は…なんと?」
「ア、アイアン…っ?」
よく聞き取れなかった男性会長さんは耳を傾け、聞こえたらしい女性の会長さんは、聞き間違いかと顔を少ししかめた。
自身には未だ理由が分からないが、ヒーローの名前を言い辛い人もいるらしいので、青年は自ら、堂々と笑顔で名乗る。
「皆さん、初めまして。私はこの街の平和を守るお手伝いをさせて戴いてております、アイアン・アダムという者ですっ!」
「「「「「「「…ぉおお~っ!」」」」」」」
「「んまぁ…っ♪」」
「………」
男性会長さんたちは、その自信溢れる様子から逞しい若さを感じ、女性会長さんたちは驚き呆れながらもちょっと笑ってしまって、そしてうら若きドングリウルは羞恥に美顔を耳まで染めていた。
会長さんたちのリーダーらしい、白い髭を蓄えた老人が、仮面ヒーローへ問う。
「して…あなたの用件は?」
「はい。グラン商会の一支店舗を担当している、末娘のシーデリア嬢を 皆様もご存じかと想います」
「ええ。まだお若いのに、なかなかのヤリ手だと伺っておりますわ」
皮肉とかではなく、会長さんたちからシーデリアへの評価は、年齢以上と見て良いだろう。
「実は、此度の羊皮紙問題に関しまして、シーデリアさんから 回収に関する提案を預かって参りました」
「ほほぉ」
人々が無料で手に入れたお守りの回収方法として、決定的なアイディアが出てこない会長連合にとっては、耳に入れてみる価値がある話だろう。
正人は、ドングリウルの許可を貰って、列席の会長さんたちへ話し始めた。
「シーデリアさんの提案は、お守りを持参して来店されたお客様がたへ、その引き替えとして、シーデリアさんのお店限定ですが、割り引きチケットを配布する。というモノです」
「「「「「「「「「割引チケット…っ!?」」」」」」」」」
皆が驚いたのも、無理は無い。
そもそもグラン商会が扱っている商品は、基本的には一般市民には手が出ないような、高級品のブランド食器類や高級輸入雑貨である。
それら商品はただ高額なだけでなく、歴史ある工房や新たなデザイナーによる最新作など、いまや王室御用達の芸術品と称えられる逸品ばかりだ。
それらは特に、女性たちにとって憧れの的でもあり、シーデリアの担当している支店で扱われている割と低価格帯の商品ですら、一般女性には手が出し辛かったりする。
「そこで、シーデリアさんは『全品割引チケット』と交換をする事で、件の危険なお守りを回収しよう。というアイディアです」
「「「ふぅむ…」」」
会長たちは考え、シーデリアの代理人とも言える仮面ヒーローへ、再び問う。
「しかし…それでは グラン商会にとって、損益となってしまうのでは?」
その件も、実は正人が金髪お嬢様へ問うた懸案である。
「それに関しましても、シーデリアさんは『お店の宣伝になります。そして何より、オドサンの街あってのグラン商会です』と、答えておりました」
「「「ぅむむ…」」」
支店長とはいえ、グラン商会の若き末娘が、街への愛と決意を、ハッキリと示した言葉であった。
「割引チケットとの交換も『新たな店舗に焦ったグラン商会の小娘の、物知らずな苦肉の策と、犯罪組織への隠れ蓑にも なりましょう』とも、シーデリアさんは語ってます」
商売の世界で、支店を一店舗だけ任されている十七歳の少女がどのように見られるか。
それらも理解をしている上でのシーデリアの提案に、初老の会長たちも、素直に驚かされている。
「「「そ、それ程までの、決意を…っ!」」」
会長さんたちが思案をしていると、ドングリウルがシーデリアの提案の後押し。
「皆さん、この提案には オドサンの街だけでなく、人々の安全を護りたいという、シーデリアさんの想いが強く表れていると、私は感じます! そして人々も、喜んで件のお守りを手放してくれると、私も思います! 如何でしょうか?」
しばしの沈黙の後、会長連合の責任者である髭の老人が、告げる。
「…我々は、各町内の 商店の方々の代表者でもあります。その意味でも…ワシはワシの町内の商店主たちへ、明日にでも この提案を説明したいと考えます」
シーデリアの提案を受け入れた。
という意味だ。
「ふむ…そうですねぇ」
グラン商会という大店が動き、しかも若い娘の預かる支店の行動であり、逆にそれを各町内の個人店舗が力を合わせてでも出来るのかといえば、やはり現実的では無い。
「わたしも、これから皆へ 説明をしましょう」
「私も」
「うむ、私も!」
会長連の老人たちが、みなシーデリアのアイディアへ賛成を示し、対策を検討していてドングリウル自警団長の大きな瞳にも、涙が浮かぶ。
「み、皆さん…っ!」
「ありがとうございます! では、僕はあらためて、シーデリアさんへ伝えに戻ります。それでは!」
綺麗な礼を見せた仮面のヒーローは、眩しい笑顔を残して自警団本部から飛び出すと、薄曇りな夜空へと消えていった。
「いくらなんでも、もう日を跨いでいるし…シーデリアさんも――って、起きてるっ!?」
安宿への帰空路で、念のためにとシーデリアの別宅を見たら、なんと居間の窓明かりが灯っている。
「もしかして…僕が報告に寄ると、信じてくれているのかな…?」
それは自意識過剰かも。
とか想いつつも、万が一にも裏切るような事はしたくない正人は、窓へ寄って、小さく声がけ。
「ぁの…」
『お待ちしておりました』
食い気味の二つ返事でメイド長であるアリスの返事を頂いて、超人ヒーローでもちょっとビビったり。
「いらっしゃい、マサト様♪」
窓が開けられると、さっきとは違う衣装で着飾ったシーデリアが、満面の笑みで出迎えてくれた。
とはいえ、さすがに眠たそうな瞳ではある。
「ぁあのっ、シーデリアさん…っ!」
思いがけず、女性を夜中過ぎまで待たせてしまった事実に、仮面青年は慌てた。
「はい♪ …ふわわ…ぁ、失礼を…っ!」
つい欠伸が出て、恥ずかしそうに俯いた媚顔が真っ赤な金髪お嬢様は、黒髪メイドから教育的指導も受ける。
「ですからお嬢様、いくらなんでも夜更かしが過ぎます。ご覧になって下さい。マサト殿も、さすがに心配をしておいででございますです」
「マサト様…申し訳御座いませんでした…シュン」
正人を待って起きていたシーデリアを、待ち人の狼狽えっぷりまで利用して叱る、隙の無いアリスであった。
「い、いえ…それで、先ほどの シーデリアさんの提案ですが…」
時間も時間なので、正人は手早く、しかし出来るだけ丁寧に経緯を説明し、大人しく聞いていたシーデリアも、パァっと明るい笑顔が輝く。
「まぁ…有り難う御座います、マサト様♪ では早速、割引チケットの手配を――」
「それは日が昇ってからで御座いますです、お嬢様」
またメイド長に注意をされたシーデリアであった。
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