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☆第百二十七話 戦う方法☆
しおりを挟む無限の青空空間に浮かぶ大地を、ひょいひょいと飛び移りながら、章太郎たちは女王の許へと向かう。
「だいぶ 慣れてきたな」
コツさえ掴めれば、重力のある大地から目的の大地までジャンプをして、無重力空間を抜けて大地の引力に任せて着地をするのも、ほぼ感覚だけで出来るようになっていた。
そんな感じでしばらく進むと、何かとても大きな、暖かいけど荒れた感情みたいな強い気を、雪が感じ取った。
「! 皆様、前方に気配を感じます…っ!」
「む…っ!」
ブーケも意識をすると、ケモぐるみな小美人たちが、教えてくれる。
「はい、共に進む あちらには」
「蜃鬼楼の~、女王様が~」
「おいでで~っすっ! はいいっ♪」
「いよいよ、女王との対面か…っ!」
章太郎も、緊張をする。
「どんな感じなんだろうね~♪」
「ほ、本当に…っ!」
緊張感の無さそうな桃太郎と、緊張してドモる金太郎。
「あ、見えて来た~♪」
一応鳥類である美鶴の視力が、何かを捕らえる。
「…? 大きな大地が見えるぞ」
「翠深衣にも、見えました~っ!」
「主様、あちらを…っ!」
真っ直ぐの方向に幾つかの浮遊大地が見えて、大地郡の中に一際大きな大陸が見えた。
平たいイメージな大陸ではなく、一方向の半球面が伸びて山々になったような、不思議な球体である、
「あれか…」
「はい~」
周囲の浮遊大地を従えるかのような、広い中央浮遊大陸は、山や森での緑に囲まれていて、水平位置からは中が見えない、
「大陸の上空側へと、道筋を変更すれば、よく見えますですわ」
言われて、みんなで浮遊大陸の上空の浮遊大地へと、ジャンプを変更。
目的の球体大陸を上空に見る逆位置の大地へと着地をして、見上げる。
「うぅ…っ!」
「大丈夫ですよ」
男子三人の中でも視力が優れている金太郎が、ツキノワグマのツキノに支えられつつ、軽く驚愕を見せた。
大きな浮遊大陸は、大地部分のフチが緑の山々に囲まれていて、その中は、普通に緩い起伏ある土地を形作っている。
緑の山や丘や森の間には、よく肥えた土地もあり、中央の広場を取り囲むように、人類世界の神殿やら神社仏閣のような建築物が、所狭しと並んでいた。
広場と呼ぶには広い大地の中心には、白くて丸くて直径二キロほどの、やや潰れた饅頭みたいな物体が、プルプルと震えて見える。
水饅頭みたいな半透明物体の中心と言える内部には、赤い光の球体も透けていた。
「…もしかして、あれが女王様?」
「超正解ですぇ~っ♪ はいいっ!」
「うひょ~、でっかいね~♪」
「あ、あの中に…蜃鬼楼の、女王…っ!」
頭上の逆さま位置で緑の山々に囲まれた神殿郡の中心に震える、半透明な巨大水饅頭。
自分たちの世界では有り得ない不思議な光景に、男子三人だけでなく、女子勢やお供たちや鬼たちも、しばし呆然と見入ってしまった。
「それでは~、女王様を削る~、作戦ですが~」
「削り始めますと、削った部分が、いわゆる悪意のある蜃鬼楼へと、変化をしますので」
「それらを排除し終わったらぁ~っ、皆様にはっ、女王様の救出をぉ、お願いいたします~っ♪ うんうんん~っ♪」
「?」
章太郎は、三人の言葉に違和感を感じた。
「三人で削り終わったらって…俺たちが、それをやるんじゃないの?」
章太郎と一緒に、ブーケも感じた疑問を問う。
「ふむ。それに、キミたち三体で、これから多数に現れるであろう蜃鬼楼たちを、どうにか出来るのか?」
もしそうだったら、章太郎たちがいなくても大丈夫な筈である。
「はい~、それは~、ですね~」
ケモぐるみなハト派蜃鬼楼たちから、意外な事実を知らされた。
「今から、皆様のような力強い方たちを探しに別の世界へ出ている、ハト派の蜃鬼楼たちへ、集合を掛けますのです」
「そうすればぁ~っ、これから出てくるタカ派蜃鬼楼たちに対してぇっ、ちょっとだけ戦える数が揃うのですよ~んっ! こりゃあ凄い~っ♪」
「ちょっだけ…?」
やはり、ケモぐるみ系蜃鬼楼たちだけでは、敵意ある蜃鬼楼を倒しきる事は、出来ないらしい。
「それでも~、タカ派の蜃気楼たちは~、そこそこ減らせると~、思うのです~」
「それで~、キミたちは、大丈夫なの~?」
「なんかよー。話を聞いてると、それってお前たちも数 減らすんじゃねーのか?」
美鶴と月夜の鋭い指摘に、小美人たちは、ケロっと答える。
「はい。蜃鬼楼同士の戦いは常に、一対一の対消滅と、なりますので」
「一対一の対消滅…ぇええっ!?」
とんでもない事実を事も無げに話す蜃鬼楼たちに、章太郎は驚きを隠せなかった。
「ついしょうめつ…?」
鬼大将たちにも、意味はわからない様子だ。
「つ、対消滅ってっ…つまりそのっ、敵意ある蜃鬼楼と、キミたち友好的な蜃鬼楼がっ、一対一で消えちゃうって、事…っ?」
「はい~」
まるで当然みたいな、当事者たち物言いに、章太郎は思わず声を荒げてしまう。
「そっ――そんなのダメに決まってるだろっ!」
「ぅぉぇえっ? ナゼですか~?」
いつも明るいウサギぐるみ蜃鬼楼も、流石に驚いた様子。
「消滅するとかっ、そんな事、納得出来るワケ無いだろっ! そんな光景を黙って見てるくらいならっ、俺たちが蜃鬼楼と戦って、キミたちが女王を助け出す方が、ずっとマシだっ!」
つい強く怒鳴ってしまった章太郎は、言いながらも、そんな自分がちょっと自己嫌悪になったり。
そして、そういう優しい少年を、少女たちとお供たちはどこか安心をしたように、微笑ましく見守っていた。
「で、ですが。そうしなければ、皆様へご負担を掛けてしまうばかりです」
「それに~、出てくるタカ派蜃鬼楼たちの数も~、今朝の比ではないです~。きっと~」
「ですです~んっ!」
「で、でも…っ!」
ついでに、翠深衣の質問から、とんでもない事も発覚。
「対消滅をしてしまったら~、皆さんとは、もう会えないのですよね~?」
「この記憶を持った個体は~、消えてしまいますが~」
「同じ姿の個体は、また女王様が、産み出して下さいますですわ」
「だからっ、全然んっ、大丈夫~っ♪」
「いや全然大丈夫じゃないからっ!」
明るい蜃鬼楼たちへ、章太郎も思わず必死で突っ込んだ。
小さな少女たちが消えるとか、こんな作戦、章太郎でなくても受け入れられないだろう。
とはいえ、章太郎の一存でみんなを危険に晒す事は、出来ない。
蜃鬼楼同士の消滅は、蜃鬼楼以外の自分たちにとって、たしかに危険を最小限で抑えられる方法ではある。
「それでもっ…俺は…っ!」
苦悩する章太郎を見て、ブーケが小美人蜃鬼楼たちへ、助け船の可能性を問う。
「対消滅と言うが…それは絶対に起こる事なのか? 回避する方法はないのか? 一対一で消滅をするならば…例えば、三対一で対峙するとか」
対消滅とは、お互いの力がほぼ均等だから招かれる結果であって、片方の力が大きければ、それは一方の消耗ですむ。
「三対一~、ですか~?」
考えた事は無かったらしい。
「…それならば、タカ派蜃鬼楼だけを、消滅させられましょうですけれど…」
「皆様に~っ、危険とご迷惑~っ! こりゃうダメ――」
「それで行くっ!」
ケモぐるみ蜃鬼楼たちの意志を遮って、章太郎は、思わず強く決定を口にしていた。
「…あ、えぇと…」
言ってから、章太郎は少女たちや桃太郎たちの意志を、モジモジと問う。
御伽噺の少女たちと、ヌイグルミのお供たちは、頷き合って。
「…うむ。ボクたちは、章太郎の意志のままだ♪ ボクたちも、敵意ある蜃鬼楼たちと最初から戦って、三体…というかハト派のキミたちは、あくまで三対一以上の、有利な消耗戦に留まってほしい。モモタローとキンタローたちも、それでどうだろうか?」
章太郎たちの戦闘隊長であるブーケは、全体の隊長である桃太郎や戦友の金太郎たちにも、その意志を伝えて、決定を問う。
「そうだね~♪ 某(それがし)たちも、そのほうが良いかな~♪」
「へい」
桃太郎は、鬼大将の意志を尋ねて、同意を得た。
「ぼ、ボクも…それで、良い…っ!」
「はい♪」
「みんな…っ!」
金太郎もツキノと納得をし合って、作戦が決まり、章太郎があらためて確認をする。
「それじゃあ、みんなで女王の周辺を削りながら、敵性蜃鬼楼たちを排除。ハト派の蜃鬼楼たちは、あくまで有利な消耗戦だけ! ただし桃ちゃんと金ちゃんは、女王救出の際の、不測の事態も考えて、対蜃鬼楼戦では戦力の温存を考慮する! …って事で…」
戦闘隊長のブーケと、全体隊長の桃太郎へ伺いを立てると、二人とも納得の笑顔で頷いた。
三体の小美人は、互いに顔を見合わせて、なんだか恥ずかしそうに嬉しそうに、頬を染める。
「…人間とは…とてもお優しく ありますのですね…♡」
「ね~♡」
「うんうんうん~っ♡」
という感じで、対女王の作戦が決定された。
~第百二十七話 終わり~
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