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☆第百二十八話 突撃☆
しおりを挟む小美人たちの戦闘方法が決まった頃、頭上の逆大地で揺れる女王の塊が、プルプルと振動を始めた。
「! 女王の気が、こちらへ向けられています…!」
「え…あっ!」
雪が気付いて、みんなで見上げると、小山のような水饅頭の中心部分が、こちりらへ向けてユルユルと伸びつつある。
「女王様が~っ、章太郎様の聖力のっ、良い香りに~っ、気付かれたのですね~んっ! うひゃあ~っ!」
「聖力の香り?」
章太郎の聖力を「美味しい」とか「大きい」と評された事はあったけれど「良い香り」と言われたのは初めてだ。
「蜃鬼楼にとって~、章太郎様の聖力は~、とても極上な~、芳香なのです~♪」
「それこそ、どこの童話世界の主人公よりも、吸引欲求を刺激される香りなのですわ」
と、ケモぐるみ蜃鬼楼たちも賞賛をくれたり。
思わず、童話少女たちへ尋ねる少年。
「…そうなの?」
「なるほど。そういう言い方も出来るな」
「そうだね~♪」
「まあ、オレは他の聖力とか、知らないけどな」
「翠深衣もです~♪」
自分たちは章太郎しか知らないとか、ちょっと意味深に聞こえる発言も出た。
メイド少女も見ると、なんだか恥ずかしそうな素振り。
「わ、私は…主様専用の召使いに御座います…♡」
「なるほど。有栖様の御心づもり、このツキノにも、よぅく理解が出来ましょう」
モジモジする少女の様子に、ツキノワグマのツキノも、ちょっと同感出来るっぽい。
「おぉ~♪ 章ちゃん もてもてだね~♪」
「えぇと…」
明るく笑う桃太郎に比して、月夜に関するショックを受けたらしい金太郎は、ツキノに優しく背中を撫でられていた。
「と、とにかく…っ、女王のあの様子だとさっ、蜃鬼楼たちも、すぐに出てくるって事でしょっ?」
「そうですね~」
「こちらも、もうすぐですわ」
と言いながら、三体は無限の青空を見上げる。
章太郎は、考えていた事を有栖に伝えるという形で、戦闘隊長であるブーケと全体隊長である桃太郎の意見も伺った。
「有栖は、ここの浮遊大地で待機して、聖力補充用に、何か有効なメニューを作ってくれ! 翠深衣は、ここで有栖の護衛をして欲しい!」
作戦として、これから現れるであろう大量の敵性蜃鬼楼を、章太郎たちで殆ど倒す事になる。
なので、有栖のバックアップは絶対に必要だ。
「申しつかりまして御座います! 主様」
忠誠メイドは、恭しく綺麗な礼で、主の命令に従った。
「翠深衣も、お兄さまたちと共に、戦えます~☆」
お留守番のような扱いに感じられるのか、お魚少女は不満そう。
「うん。翠深衣の力を信じてないワケじゃあ無いんだ。ただ、この大地には湖もあるし、翠深衣がバックを守ってくれれば、俺たちも安心して戦えるだろ?」
戦闘力が高くても、まだ小学校の低学年に見える少女への気遣いがないと言えば、ウソになる。
それでも、水の力で戦う翠深衣にとっては、この大地こそが、途切れずに力を使える陣地だろう。
「翠深衣の役目も、大勢の戦いの中では、すごく重要なんだ。これは翠深衣だからこそ、オレも頼める事なんだ」
章太郎の正直な想いを聞いた翠深衣は、耳まで真っ赤に染めて、喜びと自信の笑顔を見せた。
「ほわわ~…は、はいっ、お兄さまっ♪ 翠深衣は、有栖お姉さまを、絶対に護って見せますっ!」
自信タップリに、翠深衣は約束をする。
「主様っ。この有栖もっ、吸収の早い栄養ドリンクを、タップリと御用意をさせて戴きますっ!」
メイド少女も、珍しく少し興奮気味だった。
章太郎は、ブーケと桃太郎へ顔を向けて、意見を問う。
「ボクは異存ないぞ。モモタローは?」
「良いよ~♪」
「あ、あの…っ!」
金太郎が、オズオズと意見を述べる。
「ツっ、ツキノもっ…ご護衛に…っ!」
自分の意志で頑張って意見を述べた親友へ、笑顔で応えるツキノ。
「…解りました。金太郎も、気を付けて下さいね」
「う、うん…っ! 二人を、護ってね…!」
人員の配置が決まったところで、いよいよ蜃鬼楼の女王が中心部分を尖らせて、こちらの大地へと真っ直ぐに長く伸びてきた。
「それじゃ~、某(それがし)たちで、切り刻もうぞ~っ!」
「「「「「「「「「「「「「ぉお~っ!」」」」」」」」」」」」
――ワオオオォっ!
章太郎たちとそれぞれのお供たちは勝ちどきを上げると、大地から女王へ向けて、大きくジャンプ。
無重力空間へ飛び出すと、白くて半透明なプヨプヨ物体へ、グングン迫る。
章太郎には、一つだけ不安な点もあった。
(ああは言ったけど…全体攻撃が出来るのって、翠深衣だけなんだよな…)
翠深衣は、水を小魚型のミサイルのように、大量に発射が出来る。
それは集団戦闘にとって、有り難い能力だ。
しかし当然、水も大量に必要となるので、今回のような場合は、陣地防衛と後方支援が最適だろう。
個別撃退能力で、なんとか踏ん張るしかない。
そう考える章太郎の固い表情から、少女たちも、考えが何となく読めたらしい。
「ショータロー、そう深刻になるな」
「え…?」
「お忘れですか? 私たちも…♪」
「新しい能力、あるんだよ~♪」
「…ぁあ…っ!」
以前、翠深衣と月夜の能力を見せて貰った際に、ブーケと雪と美鶴も新しい能力を訓練していると聞いた事を、言われて思い出した。
「そ、そういえば、どんな能力なんだ?」
まだ見せて貰っておらず焦れる章太郎に、少女たちは得意げな、そしてちょっと意地悪っぽい、しかしとてつもなく愛らしい笑顔で応える。
「ふふ…すぐに お披露目をするぞ♪」
「お楽しみに~♪」
「うふふ…♪」
「うぅ…」
焦らされると、余計に気になったり。
「皆の者~っ、油断めさるな~っ!」
女王が巨大過ぎるのと白い半透明な突起状なので、距離感が掴み辛いけれど、実際はもう五十メートルと距離がなかった。
桃太郎も金太郎も、鬼たちもお供たちも、気合が入る。
章太郎たちの気迫を感じ取ってらしい女王の、白く透けた水饅頭から、敵対蜃鬼楼たちがそのまま出現をし始めた。
「うぉっ! いつもと違って、光の珠じゃなく、直接出て来た!」
巨大な本体から伸びた部分だけでなく、大陸に鎮座している部分からも、蜃鬼楼たちが次々と湧き出して来る。
その数は、あっという間に百体近くとなっただろう。
「…あんな大量の蜃鬼楼と、あの小さな蜃鬼楼たちは…」
一対一で、対消滅をしようとしていた。
とか想像をすると、それが蜃鬼楼たちの方法であっても、章太郎の胸は痛む。
共に飛翔する三体のケモぐるみ蜃鬼楼たちを、なんとしても護りたいと、章太郎は決意を新たにした。
蜃鬼楼の大群が向かってくると、少女たちも戦いの準備。
「それじゃあ、みんな 変身だ!」
「「「「はいっ♪」」」」
ブーケの合図で、翠深衣も含めた少女たち五人が変身コードを唱えて光に包まれ、無重力の青空を流れる美しい裸身が、露わとなる。
光の粒子が全身各処へ集まって、赤ずきんと雪女と魔法少女と、ビキニ女性戦士とスク水少女戦士が現れた。
月夜の裸に、金太郎はやはりドキドキと戸惑いながらも、戦いの決意で鉞を強く握る。
――っァオオオオっ、キキーっ、ケーーーーーンっ!
メカ生体な三体のヌイグルミたちも、巨大なオオカミとゴリラと怪鳥へ変化。
ウルフィーにはブーケが跨がり、家帝の肩へ雪が座り、怪鳥の背中へと魔法少女が降り立った。
「ようしっ、俺もっ! えぇと、桃ちゃん…っ!」
近くに本人がいるためか、ちょっと小声での、しまらない変身コール。
章太郎の全身がメカ鎧に包まれて、左の腰にはヌイグルミ刀が変化をした日本刀が携えられて、変身が完了をする。
「とにかくっ、俺と桃ちゃんと金ちゃんで、一体でも多くの蜃鬼楼を撃退するっ!」
章太郎の意志を伝えられた刀、エターナル肥後は、鞘から抜かれたと同時に、強い決意で眩しく輝いた。
――ッゴアアアアアアアアッ!
章太郎たちの気合いと聖力を感知した、様々な姿の敵性蜃鬼楼たちが、見付けた獲物に食らい付かんとする猛獣たちの如く、接近速度を上げてくる。
「うひょ~、来たよね~♪」
「桃さんっ、腕が鳴りまさぁっ!」
刀を抜く桃太郎は、明るく脳天気な表情と声色だけど、強い気迫と隙の無い構え。
鬼大将自慢の金棒や、赤鬼青鬼たちぞれぞれの棍棒などを、鬼たちも握る。
「それじゃ~、各個撃破しながら~、中心部分を目指すよ~っ!」
遂に、集団と集団が激突をした。
~第百二十八話 終わり~
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