探偵兼殺し屋 御影の日常

恭介

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助手のもどかしさと探偵の記憶

助手の涙

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まず、結果御影=木崎だった。しかし、「木崎」も偽名で、誰だか分からなかった。
欠伸混じりに御影が「お早う」と言ってくる。
反撃しよう。どうなるか分からないけど。でも、手が震えてる。仕方ない。
「おはようございます、」言ってやった。
御影は明らかに動揺(余り変化がないよう見えるから、なかなかレアだ)しながら、「どうしたのかな?」と問い掛ける。
「これを使いました。その結果、あの端末は木崎健斗の物、しかも唾液のDNAも調べました。」盗聴器を見せながら話す。
因みに今ので御影は(唾液も・・個人的に採取して・・アリスって、変態?)と思い、ドン引きする。
「まあいいか。そう。僕が木崎だ。そして、今日依頼主に伝える。」
そうなのか。なら、御影は依頼主とどう交流を持つつもりなんだろう。
そこまで考えて、アリスは重要な問題にさしかかる。
─御影さんは、そのあとどうなるのか?
探偵のみで生きるのか?依頼主は彼女と言っていた。そこでくっついたら、私は・・?
話を続ける御影をよそに、少し休むといい別室へ。
ドアを閉めた瞬間、アリスは涙を流した。
泣き崩れはしなかったが、涙は止まらない。
もう、御影は御影では無いのか。自分のよく知るそれが急に遠くに行ってしまったようで、虚しい。
「アリス」背後から声をかけられる。
「どっか行ってて下さい」
「どうしたんだい」
「お願いしますっ」
「だけど・・」
「いいから!ほっといてよ!早く!」
「・・・君の泣き顔は、2回目だね。」
──嘘だ、御影は「前に会った?知らないなぁ」となんて言っていたのに・・・
「何で、今更」
「知人って、結構良い人質だよ?人質に取られた時、犯人ごと殺す覚悟がないと。だから、できれば知らない人で通したかった。殺したく無いし。アリスを守るためにも、自分のためにも。だからさ、僕は何処にも行かないから。ね?」
その言葉は、御影自身に聞かせているようだった。
まだ涙は止まらない。むしろ声を上げて泣くようになった。
御影は慌てた様に「どうしたの?まだ何かある?」と尋ねてきた。
「何も・・無いし・・これで良いです」
「良かった。」
桜の花は何時か散る。でも、また咲くのを待てば良い。ならば私は、木が枯れるまで、そこにいて良いのだ。
午前8時。心地よい朝だった。
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