転校生とフラグ察知鈍感男

加藤やま

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夏休み

第22話 浜辺で重たい荷物の中から出てくるものといえば…

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 日も傾き始め、じりじりと焼かれた肌が熱を帯びているのを感じる頃、アリスがふいに荷物をあさり始めた。と思ったらいきなり大玉のスイカが出てきた。
「これでスイカ割りしましょ!」
「大荷物の原因!そんなもの入れてたのか!」
「あはは、持ってきちゃった。」
 そんな軽い感じで持ってくるものではないと思うのだが。しかし、せっかく持ってきたのなら…ということで、適当な長さの棒を拾ってスイカ割りが始まった。
 まずは持ってきた本人から。目隠しをして10回回ってからスイカを目指す。
「真っ直ぐ真っ直ぐ。右?左?ここからだとどっちがどっちだかよく分かんない…」
「右じゃないこともないわけでもなくもないけど、やっぱり左から見た右の左側。」
「上上下下左右左右BA。」
「ちょっと!ちゃんと指示する人はいないの!?」
 三者三様に役に立たない指示しかせず、適当に振るしかない棒はスイカに当たるはずがなかった。そんなこんなでアリスから3人立て続けに失敗した。そして、残すは栄一だけとなった。
「ふっふっふ。真打登場でござるな。皆の衆、刮目して見よ!拙者には指示など必要ないでござる!」
 そう言って回転し終わった栄一の、その後の動きは驚異的なものであった…!
 その歩行姿勢たるや、まるで回転などしなかったかのような円滑な足運び!そして、目隠しをしていないのではないかと疑いたくなるほどの正確な進行方向!一目して常人の動きではないと周囲に悟らせるだけの姿がそこにはあった…しかし!突如として立ち止まった場所にはスイカの姿はなく、目標の1歩半手前で止まってしまう…!目測を見誤っている!そう周囲が声をあげそうになった、その刹那!栄一は大きく一歩踏み出し、目標との距離を瞬時に詰めてしまう!そのままの勢いで振りかぶった棒をやや右上段から振り下ろし、袈裟切りを繰り出す!
 …振り切った棒を腰に差し直し、己の放った一撃の結果を確認することなく戻ってくる栄一。彼の後ろに目をやると、そこには粉々に砕け散った、スイカであったものが残されているだけであった…
「栄一…お前、そんな特技があったなんて…」
 感動のあまり言葉を失ってしまう。
「うむ。拙者、生まれてこのかたスイカ割りで外したことがござらん。此度は披露する機会を設けていただき恐悦至極。」
「本物の武士かと思ったぞ!そうか!その変な口調もこの時のためだったのか!」
「変!?…う、うむ。それもある。」
「さすが栄一だ!良いものが見れた!スイカ持って来て良かったな、アリス!」
 見事なスイカ割りさばきにおのずとテンションが上がってしまい、他の2人のことを忘れていた。アリスは黙ったまま小さく震えていた。ううむ、今のスイカ割りの見事さに言葉を失ってしまう気持ちは痛いほど分かる。
「…栄一君。」
「やや、アリス殿いかがでござったか?」
「…何て…何てことしてくれてんのよ!スイカが…スイカがぐちゃぐちゃじゃない!」
「そ、それは…仕方がないことにござ…」
「仕方なくないでしょ!ちょっと当てるだけで良いじゃない!これじゃあほとんど食べられないじゃない!もぅ!その変なしゃべり方も似合ってないし!ねぇ、清香!」
「えっ?…うーん、たしかに…ちょっと変かなって思ってたけど…」
「なんと…!長名ちゃんも変でご…変だと思ってたのか…」
 栄一はショックのあまり膝から崩れ落ちてしまった。変なキャラ付けのためにやってたわけじゃなかったのか。
「…長名ちゃん、男らしくて面白い人が好きって言ってたから…それなら武将かと…すべってたのか…」
 小声で種明かしをしてくれたが、まさかの長名へのアピールだったとは。恋をした男子の突拍子の無い行動力は恐ろしいものだ。
 落ち込む栄一を励ましつつ怒れるアリスをなだめつつ長名に栄一のフォローを頼みつつ、砕けたスイカの食べられる部分をみんなで思い思いに美味しくいただいたのだった。
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