転校生とフラグ察知鈍感男

加藤やま

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修学旅行

第30話 親友の恋を知った転校生のとる行動といえば…

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 珍しくアラームが鳴る前に目が覚めてしまった。枕が変わると眠れなくなるタイプというわけでもなかったんだけどなぁ。
 部屋の隅では栄一が他の生徒を起こさないように入念に支度を進めている。気合十分といった顔をしている。
 修学旅行2日目の今日のミッションは、できるだけ栄一と長名を2人きりにすることだ。そのためにもアリスを自然に誘い出す必要がある。これが1番の難関だ。アリスは意外と鈍感で変に気を回しがちだからな。
 朝食は部屋毎のメンバーで食べることになっており、アリスや長名に接触する機会は訪れなかった。
 宿舎から徒歩圏内に遊園地が併設されており、入り口で班のメンバーと合流して1日遊園地で自由行動となる。
 アリスと長名の姿を見つけて向かっていると、アリスがこっちの様子に気が付いたようで話しかけてくる。
「おはよー!栄一君と只男。早速だけど、園内の地図を取りに行ってくるね!只男と一緒に!」
 そう言うと問答無用に腕を掴まれて、ズカズカと引っ張って行かれてしまった。地図を見つけてもすぐに戻る様子はなく、その場でどのアトラクションから乗るか相談してきた。チラチラと栄一達の方を見ながら。
――栄一が昨晩アリスと話をしたと言っていたような……これは、栄一から今日のことを聞いて、サポートするために変に気を遣っているやつだ。そして、この感じだとドンドン空回りしていってしまうに違いない…まぁ、面白そうだからしばらく静観していよう。
 アリスと園内の回り方と2人きりにする方法について真剣に話し込んでいると、栄一と長名もやってきてしまった。
「もう、アリスちゃん達が全然帰ってこないから探しちゃったよ。」
「それは...ごめんね。只男がどうしてもすぐに見たいって言うもんだから。」
「!?どの口が…」
「まぁまぁ、せっかくルート作りしてくれたなら、それに合わせて行ってみようか。」
 栄一の提案のおかげでアリスと考えたルートで回ることになった。
 アリス以外の3人は絶叫系が苦手であるため、随所に絶叫系のアトラクションを盛り込んで2人きりにさせる作戦だ。もちろん、そうなると2対2で別れるためにアリスと一緒にアトラクションに乗らないといけないのだけど…栄一のために一肌脱ごう!脱ごう…
 遊園地に入場すると早速この園の目玉であるフリーフォールがお出迎えしてくれる。
「やっぱり最初はあれに乗らないとダメでしょ!ねっ?」
「私はこういう怖いやつは苦手だから…ここから見とくよ…」
「俺もこれはちょっと…」
 作戦通り長名と栄一は居残りを希望するようだ。だが、これは流石に遠慮させていただきたい。こういう自由落下するやつは体がヒュンヒュンするから本当に無理なんだ。
「俺もこれはちょっ...」
「そうよね!只男は気になるって言ってたもんね!仕方ないけど2人で行きましょ!」
 有無を言わさず連行されてしまい、最も苦手なアトラクションに乗る羽目になってしまった。
「何で断ろうとしてんのよ!何のための作戦会議よ!」
「いや、流石にこれはキツイなぁって…」
「キツイなぁじゃないわよ!こっちは真剣に真剣にしんっ…けんにやってるんだからね!遊び半分じゃ困っちゃうんだから!」
 遊園地なんだから半分どころか全部遊びに来てるんだけど、とは流石に言えず今後は断らないと平謝りして許してもらった。
 そして、イキイキと絶叫をあげながら楽しむ誰かさんと一緒に何度か縦揺れして地上に帰ってきた。
「只男君大丈夫?こういうの苦手じゃなかった?」
「…もう大人だからね!このくらいへっちゃらさ!…」
 こういう長名の優しい心遣いが染み渡る。1人でドンドン楽しもうとする誰かさんとは違ってね。
「何見てるのよ?何か言いたいことでもある?」
「いや、楽しそうで何よりだと思っただけです...」
「そうでしょ!只男は今墓場から出てきたてのゾンビみたいね!」
「…誉め言葉として受け取っときます…」
 アトラクションの衝撃で突っ込みをする気力すら湧かない。
 この調子でアリスの先導で遊園地を回って行くことになったが、明らかにアリスがはりきり過ぎている感が否めなかった。
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