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3 錬金術師
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休憩を終えて、アレンたちはまた山道を歩き続けた。すると前方に木造の家がポツンと建っていた。家の前で立ち止まり、それぞれ辺りを見渡す。ティムは3段ほどの木の階段を上り、木戸を軽く叩く。すると中から女性の声がする。
「はーい! いると思うなら入ってー」
「お邪魔しまーす」
ティムはドアを開けて中に入る。3人は顔を見合わせ、戸惑いながらついて行く。
中に入るとリビングの真ん中に4人掛けのテーブルが見える。一つの椅子に黒のローブを着て、きょとんとした顔のマネキンが座っている。
「また……」
ブラッドが不機嫌な顔でマネキンを見る。ティムは辺りを見回し、ドアの上に添えつけられたスピーカーを見つける。
「これの声か……。留守だったね。また引っかかっちゃった」
「何のためだよ! 意味わかんねえ」
クレイグが苛立ちを見せる。アレンが3人を見て言う。
「で、どうする? 一回出る?」
「もうここで待とうぜ」
クレイグがめんどくさそうに言った。そのとき背後から声がした。
「あら、他人の家で勝手にくつろぐ気? 図々しい」
皆が一斉に振り返る。
木の実やフルーツが入ったバスケットを持って、女が入り口を塞ぐように立っている。
「すみません。いると思ってしまって」
アレンが慌てて謝る。クレイグは女を見て驚く。
「若っ」
「やっぱババアじゃなかったか。ババ捨て山説も考えてたんだけどな」
ブラッドが小声でつぶやき、アレンがブラッドの腕を肘で軽く小突く。
「あ、シビル! 勝手に入ってごめん」
ティムが3人の陰から顔を出す。ティムを見たシビルは笑顔を浮かべる。
「ティム! ティムならいいのよ。みんなはティムの友達なのね。適当に座って、お茶いれるわ」
シビルは急いでキッチンへ向かう。
「座れったって、椅子ねえんだけど」
クレイグが言った。それを聞いたシビルがキッチンから顔を覗かせてクレイグに言う。
「その辺に座るか、椅子半分ずつすればいいじゃない」
「予備もねえのかよ……」
クレイグがつぶやく。
「座ろ」
ティムがマネキンの横に座り、3人を促す。
「のんびりする気はない。ティム、早く聞け」
ブラッドがティムに顎で指示する。それを聞いたシビルがキッチンから戻ってくる。
「どうしたの? 何か大事な話?」
「うん。前にシーダイヤについて教えてくれたでしょ?」
ティムが話を切り出す。
「ええ。それがどうかしたの?」
「友達がそれを食べて昏睡状態になってしまったんです」
アレンが話に割って入る。シビルは驚いてアレンを見る。
「森の奥にしかなってない実をよく手に入れたわね」
ブラッドが苛立ちながら話に割って入る。
「だからどうやって起こすのか早く教えてくれ」
シビルは眉をひそめ、ブラッドに言う。
「さっきから偉そうだけど何なの?」
ブラッドはひるまず険しい表情で言う。
「こっちは急いでんだよ。悠長に喋ってる時間はない」
アレンは慌ててブラッドの腕を軽く引っ張る。シビルはブラッドをじっと見つめ、その後3人を見て言う。
「よほど大切な子なのね」
そう言って微笑んだ。そして話を続ける。
「確かに方法はあるわ。でも簡単じゃない。覚悟はあるの?」
シビルは4人を真剣な顔で見つめる。アレンはすぐさま答える。
「はい、何でもします。アイリスが目覚めるなら」
「死ねる?」
「え?」
シビルの真剣な表情にアレンは戸惑いを見せる。それを見てティムが口を開く。
「そんなに危険なの?」
「わからない。誰もやったことないから。ただその覚悟は必要よ」
「いいから聞かせろ」
ブラッドは急かすように言う。
「怖いもの知らずのバカか、度胸の据わったガキか……。気をつけないとあんた早死にするわよ」
シビルはブラッドを見て言う。
「正直、死ねるかはわかんねえ。でも助けたい気持ちはみんな一緒だ」
クレイグがシビルに向かって言う。
「そう。それなら説明するからちょっと待ってて」
そう言って、シビルは奥の部屋に行った。
アレンとクレイグとティムは椅子に座り、ブラッドはアレンの横でテーブルに手をついて立っている。シビルが奥の部屋から数冊の本と地図を持って戻ってくる。本をテーブルに置き、地図を広げる。そして椅子に座っているマネキンを放り投げ、そこに腰かける。4人は投げられたマネキンを無言で見つめる。シビルは何もなかったように話を始める。
「私が知っている方法は調合した薬を飲ませること」
クレイグがすぐさま口をはさむ。
「だから寝てるって言ってんだろ。どうやって飲ませんだよ」
「大丈夫。数滴口に流し込めばいいから」
「薬ってどこにあるんですか?」
アレンが聞く。
「おそらくどこにも売ってない。作るしかないわ。材料も特殊だから売ってない。各地を旅して集めるしかない。できる?」
シビルは4人の顔を見回す。そして地図の3か所に印をつける。4人は地図を見る。
「私も大体しかわからないけど、この辺の地域で手に入るはずよ」
「それで必要なものは?」
ブラッドが聞く。
「3つよ。人魚姫の涙、金色の果実、女神の雫」
クレイグがまた口をはさむ。
「何だそれ。そんなわけわかんねえもん食ったら今度こそ死にそうだな」
「確かに飲んだことある人は知らないわ。私も作ったことないし」
今度はブラッドが口をはさむ。
「じゃあ、材料があったところで作れるのか?」
「それは大丈夫。作り方はこの本に載ってるから。例え失敗しても起きないだけよ」
ブラッドは疑いの目でシビルを見る。
「あの、その材料の写真とかってあるんですか?」
アレンが聞く。
「あ、そうね。絵ならこの本と、これと、これに載ってるわ」
シビルは本を開き、アレンに見せる。アレンは身を乗り出し、それぞれの絵を見回す。
「どれも秘境にあるから大変な旅になると思うわ。行くつもりなら準備はしっかりして行った方がいいわよ」
「あの、この地図もらってもいいですか?」
アレンが聞く。
「いいわよ」
「ありがとうございます。みんな行こ」
アレンは地図をリュックサックに入れ、シビルに会釈をして家を出る。3人は後について行く。ブラッドがふと振り返りシビルに聞く。
「途中の地蔵滝って――」
「あ、見た? かわいいでしょ? 迷わないように目印で作ったのよ」
「やっぱり……。全然かわいくない。ムカつくだけだ」
ブラッドは小走りで皆の後を追う。
「はーい! いると思うなら入ってー」
「お邪魔しまーす」
ティムはドアを開けて中に入る。3人は顔を見合わせ、戸惑いながらついて行く。
中に入るとリビングの真ん中に4人掛けのテーブルが見える。一つの椅子に黒のローブを着て、きょとんとした顔のマネキンが座っている。
「また……」
ブラッドが不機嫌な顔でマネキンを見る。ティムは辺りを見回し、ドアの上に添えつけられたスピーカーを見つける。
「これの声か……。留守だったね。また引っかかっちゃった」
「何のためだよ! 意味わかんねえ」
クレイグが苛立ちを見せる。アレンが3人を見て言う。
「で、どうする? 一回出る?」
「もうここで待とうぜ」
クレイグがめんどくさそうに言った。そのとき背後から声がした。
「あら、他人の家で勝手にくつろぐ気? 図々しい」
皆が一斉に振り返る。
木の実やフルーツが入ったバスケットを持って、女が入り口を塞ぐように立っている。
「すみません。いると思ってしまって」
アレンが慌てて謝る。クレイグは女を見て驚く。
「若っ」
「やっぱババアじゃなかったか。ババ捨て山説も考えてたんだけどな」
ブラッドが小声でつぶやき、アレンがブラッドの腕を肘で軽く小突く。
「あ、シビル! 勝手に入ってごめん」
ティムが3人の陰から顔を出す。ティムを見たシビルは笑顔を浮かべる。
「ティム! ティムならいいのよ。みんなはティムの友達なのね。適当に座って、お茶いれるわ」
シビルは急いでキッチンへ向かう。
「座れったって、椅子ねえんだけど」
クレイグが言った。それを聞いたシビルがキッチンから顔を覗かせてクレイグに言う。
「その辺に座るか、椅子半分ずつすればいいじゃない」
「予備もねえのかよ……」
クレイグがつぶやく。
「座ろ」
ティムがマネキンの横に座り、3人を促す。
「のんびりする気はない。ティム、早く聞け」
ブラッドがティムに顎で指示する。それを聞いたシビルがキッチンから戻ってくる。
「どうしたの? 何か大事な話?」
「うん。前にシーダイヤについて教えてくれたでしょ?」
ティムが話を切り出す。
「ええ。それがどうかしたの?」
「友達がそれを食べて昏睡状態になってしまったんです」
アレンが話に割って入る。シビルは驚いてアレンを見る。
「森の奥にしかなってない実をよく手に入れたわね」
ブラッドが苛立ちながら話に割って入る。
「だからどうやって起こすのか早く教えてくれ」
シビルは眉をひそめ、ブラッドに言う。
「さっきから偉そうだけど何なの?」
ブラッドはひるまず険しい表情で言う。
「こっちは急いでんだよ。悠長に喋ってる時間はない」
アレンは慌ててブラッドの腕を軽く引っ張る。シビルはブラッドをじっと見つめ、その後3人を見て言う。
「よほど大切な子なのね」
そう言って微笑んだ。そして話を続ける。
「確かに方法はあるわ。でも簡単じゃない。覚悟はあるの?」
シビルは4人を真剣な顔で見つめる。アレンはすぐさま答える。
「はい、何でもします。アイリスが目覚めるなら」
「死ねる?」
「え?」
シビルの真剣な表情にアレンは戸惑いを見せる。それを見てティムが口を開く。
「そんなに危険なの?」
「わからない。誰もやったことないから。ただその覚悟は必要よ」
「いいから聞かせろ」
ブラッドは急かすように言う。
「怖いもの知らずのバカか、度胸の据わったガキか……。気をつけないとあんた早死にするわよ」
シビルはブラッドを見て言う。
「正直、死ねるかはわかんねえ。でも助けたい気持ちはみんな一緒だ」
クレイグがシビルに向かって言う。
「そう。それなら説明するからちょっと待ってて」
そう言って、シビルは奥の部屋に行った。
アレンとクレイグとティムは椅子に座り、ブラッドはアレンの横でテーブルに手をついて立っている。シビルが奥の部屋から数冊の本と地図を持って戻ってくる。本をテーブルに置き、地図を広げる。そして椅子に座っているマネキンを放り投げ、そこに腰かける。4人は投げられたマネキンを無言で見つめる。シビルは何もなかったように話を始める。
「私が知っている方法は調合した薬を飲ませること」
クレイグがすぐさま口をはさむ。
「だから寝てるって言ってんだろ。どうやって飲ませんだよ」
「大丈夫。数滴口に流し込めばいいから」
「薬ってどこにあるんですか?」
アレンが聞く。
「おそらくどこにも売ってない。作るしかないわ。材料も特殊だから売ってない。各地を旅して集めるしかない。できる?」
シビルは4人の顔を見回す。そして地図の3か所に印をつける。4人は地図を見る。
「私も大体しかわからないけど、この辺の地域で手に入るはずよ」
「それで必要なものは?」
ブラッドが聞く。
「3つよ。人魚姫の涙、金色の果実、女神の雫」
クレイグがまた口をはさむ。
「何だそれ。そんなわけわかんねえもん食ったら今度こそ死にそうだな」
「確かに飲んだことある人は知らないわ。私も作ったことないし」
今度はブラッドが口をはさむ。
「じゃあ、材料があったところで作れるのか?」
「それは大丈夫。作り方はこの本に載ってるから。例え失敗しても起きないだけよ」
ブラッドは疑いの目でシビルを見る。
「あの、その材料の写真とかってあるんですか?」
アレンが聞く。
「あ、そうね。絵ならこの本と、これと、これに載ってるわ」
シビルは本を開き、アレンに見せる。アレンは身を乗り出し、それぞれの絵を見回す。
「どれも秘境にあるから大変な旅になると思うわ。行くつもりなら準備はしっかりして行った方がいいわよ」
「あの、この地図もらってもいいですか?」
アレンが聞く。
「いいわよ」
「ありがとうございます。みんな行こ」
アレンは地図をリュックサックに入れ、シビルに会釈をして家を出る。3人は後について行く。ブラッドがふと振り返りシビルに聞く。
「途中の地蔵滝って――」
「あ、見た? かわいいでしょ? 迷わないように目印で作ったのよ」
「やっぱり……。全然かわいくない。ムカつくだけだ」
ブラッドは小走りで皆の後を追う。
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