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7 少女との約束
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その夜、アレンはクレイグに頼まれて酒場に来ていた。数本の酒を買い、店を出たところで背後から声をかけられる。
「ねえ」
アレンが声のした方を見ると、昼間の少女が紙袋を抱えて立っていた。アレンは少し驚きながら答える。
「何?」
「これ」
そう言って少女が紙袋を差し出す。アレンは紙袋を受け取り、中を見ると赤いリンゴが5つ入っていた。
「くれるの?」
「うん。昼間はごめんなさい。痛くない?」
アレンは軽く微笑みを浮かべて言う。
「ありがとう。少し痛むけど大丈夫。意外と丈夫なんだ。友達はどう?」
「平気。あんたは何で怒らないの?」
「んー……。こんなこと言ったら嫌がるかもしれないけど、みんなまだ子どもなのに必死に生きようとしているように見えたんだ」
「そっか、お見通しなんだ」
「え?」
「私たちみんな孤児なの」
「そっか……。みんな俺たちなんかより大変な思いをしてきたんだね」
「初めてだった。あんなことしたのに優しくしてくれた人」
「ごめんね。俺には君たちを助けられるほどお金もないし、力もない」
「いいの。そう思ってくれるだけその辺の大人よりマシ。だって冷たい何もしてくれない人もいるんだから」
「このリンゴ、本当にもらっていいの?」
「うん、それはお詫びだから気にしないで。それより、さっきマスターに人魚姫の涙のこと聞いてなかった?」
「聞いたけどどうして?」
「それ、知ってるかも」
「えっ、ほんと⁉ 教えて、大切な友達の命がかかってるんだ」
少女はアレンをじっと見つめる。
「この街から北東に行ったところにメラクの森ってのがあるの。たぶんそこ」
「森? 人魚なのに……」
「それはたとえ。人魚姫の涙は雫型の宝石なの。でも森には凶暴なモンスターがいるって噂があるから行かない方がいいと思う」
「心配してくれてありがとう。でも諦めるわけにはいかないんだ。どうしても助けたいから」
「私の両親はそれを取りに行って帰らなかった」
アレンは驚いて少女を見つめる。少女は潤んだ瞳でアレンを見上げて言う。
「あんたに死んでほしくない」
アレンは少しの沈黙後、少女をしっかり見つめて話す。
「約束する。俺は死なない。必ず戻ってくる」
そう言って少女に微笑みかける。少女は涙を拭いて言う。
「私の名前はワンダ。あの噴水の前でずっと待ってる」
「約束ね、ワンダ」
そう言ってアレンはその場を後にした。ワンダはアレンの後ろ姿をいつまでも心配そうに見つめていた。
翌朝、市場前でアレンとティムとブラッドが立ち話をしている。ティムが時計を見ながら言う。
「クレイグ遅いね。何してるんだろう」
そこへクレイグが小走りで駆け寄ってくる。
「ごめん、ごめん。店のジジイが死にかけかってくらいトロくてまいったぜ」
「何してたんだ」
ブラッドが言った。
「おまえらにプレゼント買ってたんだよ」
クレイグが皆に剣を渡す。アレンは剣を見て言う。
「こんな立派な剣いいの? 高そう」
「まあな、でも大丈夫。めちゃくちゃ値切ったからな」
「なんか可哀想な気もするね……」
ティムが言う。ブラッドが剣を受け取りながら言う。
「そんな状態で店開いてる方が悪い」
「冷たいなブラッドは……」
ティムがブラッドを見て言う。4人は剣を腰にさし、馬にまたがる。そして街を出て、北東に向かった。しばらくすると、木々の生い茂った森が見えてくる。4人は森の中へ静かに入っていく。いろいろな鳥たちの鳴き声が響き、奥へと続く長い道がある。ティムが周りを見渡してつぶやく。
「ここがメラクの森か……」
「ほんとにあるのか?」
クレイグが疑いの眼差しをアレンに向ける。
「それは行ってみないとわからないね」
アレンが言う。ブラッドがアレンを見て言う。
「騙した奴の情報ってのが残念だな」
「もし嘘だったら二回も同じ人騙す度胸に感心しちゃうよ」
ティムが少し笑いながら言った。ブラッドは森の奥を見ながら言う。
「これは何日かかるかわからないな」
ティムが荷物を軽く叩きながら言う。
「食料はあるよ。足りなかったら途中で調達しよ」
「仕方ねえ。贅沢は言ってらんねえな」
クレイグが不満そうに言った。そして4人はゆっくりと森の奥へと入っていく。
道の脇にはいろいろな木々が生えており、色とりどりの名も知らない花が咲いている。様々なきれいな蝶がひらひらと飛び、木漏れ日が揺れている。ブラッドが馬に乗り、先頭をゆっくりと進んでいると、少し開けたところに出る。そのとき突然、馬が立ち止まり動かなくなる。ブラッドは手綱を軽く引いてみたり、馬の様子をうかがう。クレイグは馬の横腹を軽く蹴り、動かそうと手綱を強く引く。
「おい!」
ティムは慌てて止めようと声をかける。
「待って! あんまり無理したら――」
しかし遅かった。クレイグの馬は激しく暴れ、クレイグは地面に振り落とされてしまう。
「いってえ!」
「ほら、無茶するから」
ティムが馬から降りながらクレイグに言う。ティムが暴れる馬に近づこうとしたとき、馬が横道へと駆けて行ってしまう。ティムは慌てて後を追いかけて行く。クレイグはバツの悪そうな顔をしている。アレンも馬から降り、クレイグに手を差し出して言う。
「大丈夫? 馬はティムに任せよ」
「悪いな」
クレイグはアレンの手を取り立ち上がる。ブラッドも馬から降り、馬の顔を軽く撫でる。馬の様子を見ていたブラッドが突然険しい顔で周囲を見渡す。異変に気づいた二人も周囲を警戒する。クレイグは腰の銃に手をかける。ブラッドが馬の尻を叩く。
「行け!」
馬が勢いよく駆け出したと同時に大蛇が草陰から飛び出してくる。
「ねえ」
アレンが声のした方を見ると、昼間の少女が紙袋を抱えて立っていた。アレンは少し驚きながら答える。
「何?」
「これ」
そう言って少女が紙袋を差し出す。アレンは紙袋を受け取り、中を見ると赤いリンゴが5つ入っていた。
「くれるの?」
「うん。昼間はごめんなさい。痛くない?」
アレンは軽く微笑みを浮かべて言う。
「ありがとう。少し痛むけど大丈夫。意外と丈夫なんだ。友達はどう?」
「平気。あんたは何で怒らないの?」
「んー……。こんなこと言ったら嫌がるかもしれないけど、みんなまだ子どもなのに必死に生きようとしているように見えたんだ」
「そっか、お見通しなんだ」
「え?」
「私たちみんな孤児なの」
「そっか……。みんな俺たちなんかより大変な思いをしてきたんだね」
「初めてだった。あんなことしたのに優しくしてくれた人」
「ごめんね。俺には君たちを助けられるほどお金もないし、力もない」
「いいの。そう思ってくれるだけその辺の大人よりマシ。だって冷たい何もしてくれない人もいるんだから」
「このリンゴ、本当にもらっていいの?」
「うん、それはお詫びだから気にしないで。それより、さっきマスターに人魚姫の涙のこと聞いてなかった?」
「聞いたけどどうして?」
「それ、知ってるかも」
「えっ、ほんと⁉ 教えて、大切な友達の命がかかってるんだ」
少女はアレンをじっと見つめる。
「この街から北東に行ったところにメラクの森ってのがあるの。たぶんそこ」
「森? 人魚なのに……」
「それはたとえ。人魚姫の涙は雫型の宝石なの。でも森には凶暴なモンスターがいるって噂があるから行かない方がいいと思う」
「心配してくれてありがとう。でも諦めるわけにはいかないんだ。どうしても助けたいから」
「私の両親はそれを取りに行って帰らなかった」
アレンは驚いて少女を見つめる。少女は潤んだ瞳でアレンを見上げて言う。
「あんたに死んでほしくない」
アレンは少しの沈黙後、少女をしっかり見つめて話す。
「約束する。俺は死なない。必ず戻ってくる」
そう言って少女に微笑みかける。少女は涙を拭いて言う。
「私の名前はワンダ。あの噴水の前でずっと待ってる」
「約束ね、ワンダ」
そう言ってアレンはその場を後にした。ワンダはアレンの後ろ姿をいつまでも心配そうに見つめていた。
翌朝、市場前でアレンとティムとブラッドが立ち話をしている。ティムが時計を見ながら言う。
「クレイグ遅いね。何してるんだろう」
そこへクレイグが小走りで駆け寄ってくる。
「ごめん、ごめん。店のジジイが死にかけかってくらいトロくてまいったぜ」
「何してたんだ」
ブラッドが言った。
「おまえらにプレゼント買ってたんだよ」
クレイグが皆に剣を渡す。アレンは剣を見て言う。
「こんな立派な剣いいの? 高そう」
「まあな、でも大丈夫。めちゃくちゃ値切ったからな」
「なんか可哀想な気もするね……」
ティムが言う。ブラッドが剣を受け取りながら言う。
「そんな状態で店開いてる方が悪い」
「冷たいなブラッドは……」
ティムがブラッドを見て言う。4人は剣を腰にさし、馬にまたがる。そして街を出て、北東に向かった。しばらくすると、木々の生い茂った森が見えてくる。4人は森の中へ静かに入っていく。いろいろな鳥たちの鳴き声が響き、奥へと続く長い道がある。ティムが周りを見渡してつぶやく。
「ここがメラクの森か……」
「ほんとにあるのか?」
クレイグが疑いの眼差しをアレンに向ける。
「それは行ってみないとわからないね」
アレンが言う。ブラッドがアレンを見て言う。
「騙した奴の情報ってのが残念だな」
「もし嘘だったら二回も同じ人騙す度胸に感心しちゃうよ」
ティムが少し笑いながら言った。ブラッドは森の奥を見ながら言う。
「これは何日かかるかわからないな」
ティムが荷物を軽く叩きながら言う。
「食料はあるよ。足りなかったら途中で調達しよ」
「仕方ねえ。贅沢は言ってらんねえな」
クレイグが不満そうに言った。そして4人はゆっくりと森の奥へと入っていく。
道の脇にはいろいろな木々が生えており、色とりどりの名も知らない花が咲いている。様々なきれいな蝶がひらひらと飛び、木漏れ日が揺れている。ブラッドが馬に乗り、先頭をゆっくりと進んでいると、少し開けたところに出る。そのとき突然、馬が立ち止まり動かなくなる。ブラッドは手綱を軽く引いてみたり、馬の様子をうかがう。クレイグは馬の横腹を軽く蹴り、動かそうと手綱を強く引く。
「おい!」
ティムは慌てて止めようと声をかける。
「待って! あんまり無理したら――」
しかし遅かった。クレイグの馬は激しく暴れ、クレイグは地面に振り落とされてしまう。
「いってえ!」
「ほら、無茶するから」
ティムが馬から降りながらクレイグに言う。ティムが暴れる馬に近づこうとしたとき、馬が横道へと駆けて行ってしまう。ティムは慌てて後を追いかけて行く。クレイグはバツの悪そうな顔をしている。アレンも馬から降り、クレイグに手を差し出して言う。
「大丈夫? 馬はティムに任せよ」
「悪いな」
クレイグはアレンの手を取り立ち上がる。ブラッドも馬から降り、馬の顔を軽く撫でる。馬の様子を見ていたブラッドが突然険しい顔で周囲を見渡す。異変に気づいた二人も周囲を警戒する。クレイグは腰の銃に手をかける。ブラッドが馬の尻を叩く。
「行け!」
馬が勢いよく駆け出したと同時に大蛇が草陰から飛び出してくる。
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