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ブラッドは藁の上に横たわり、じっと息を殺している。靴音が近くで止まり、高く積まれた藁の向こうからシビルが顔を覗かせる。
「あら、ブラッドじゃない」
ブラッドは驚いて起き上がる。シビルはブラッドの口のテープを剝がしながら言う。
「可哀想に、ひどい目にあって……」
やっと話せるようになったブラッドはシビルを急かすように言う。
「何でこんなとこにいるのか知らないが、早くこれ解いてくれ」
「今はゴロツキがうろついてるから大人しくしてるのよ」
シビルは縄を解きながら言う。しかし、ブラッドは縄が解けた途端、ふらつきながら立ち上がり、シビルを押し退けて外へ行こうとする。シビルは足を伸ばして、ブラッドの足を引っかける。ブラッドはその場に倒れ、シビルをにらみつけて言う。
「何なんだ」
「言ったそばから動くから。助けてくれた人の言うことくらい聞いたらどうなの?」
「それどころじゃない」
「そんな体で出てって何ができるの。みすみす死にに行くようなものよ」
ブラッドは黙って目を逸らし、シビルが話を続ける。
「あの子を助けたいんでしょ? さっき連れ去られるの見たわ。威勢のいい子ね。でもあれは罠よ。出て行ったら危ないってことくらいわかってるはずよね」
「わかってる」
「それでも行きたいの? 冷静なあなたにしては珍しいわね。そんなに大事なの?」
「俺の身代わりで死んだら後味悪いからな」
シビルがクスっと笑って言う。
「相変わらず素直じゃないわね」
「おまえには関係ないだろ。俺は俺の好きなようにする」
ブラッドはゆっくり立ち上がる。
「私の言うこと聞くならその傷治してあげるわよ」
ブラッドは振り返り、シビルを見る。シビルもブラッドを見つめて言う。
「どうする?」
「何だ」
「あら珍しい」
「急いでんだよ。早く言え」
「治してもゴロツキを追わないこと」
「はあ? 何言ってんだ。それならいい」
「助けるなとは言わないわ。単独で乗り込むなってことよ」
ブラッドは目を逸らし黙り込む。シビルが話を続ける。
「焦る気持ちはわかるわ。でも単独で乗り込んで勝てる相手じゃない。あとの3人はどこ行ったの? ティムたちと協力しなさい。そうじゃないと薬の無駄よ」
「あいつらは、先に進んだ。もう戻らない」
「そう。じゃあ、私が探してあげるわ」
ブラッドがシビルの腕をつかむ。
「やめろ。今を逃すわけにはいかないんだよ」
「じゃあ、諦めるしかないわね。とにかく、そろそろここ出ましょ」
シビルはそう言って立ち上がり、外の様子を見る。馬賊たちが去り、街は静まり返っていた。民家の窓ガラスは割られ、壁には銃弾の跡がある。シビルとブラッドは小屋から出て、周囲を見渡しながら歩いた。市場まで来た二人が目にしたのは、たくさんの壊された露店と散乱した商品。そして無残に殺されたたくさんの遺体だった。二人は遺体を避けながら歩き、シビルがつぶやく。
「ひどいわね」
「まさに弱肉強食だな」
ブラッドが遺体を見て言う。そこへ宿屋の息子が近づいてくる。
「ブラッド。君に伝言がある」
「無事だったのか」
「ああ、伝言を伝えるために生かされたんだろう」
「そうか。それで?」
「ああ。女を返してほしければアリオト砂漠のドラゴンストーンの前に来いと言ってたよ」
「ドラゴンストーン?」
ブラッドが聞く。
「ドラゴンのように見える大きな岩があるんだ。行けばわかるはずだ」
「そうか。女将はどうした」
息子は目を逸らして黙り込んでしまう。ブラッドは話を続ける。
「残念だ。何もできなくて――」
「いや、謝るのはこっちだ。母さんは君のことを話してしまった。助けてもらったのに……」
「仕方ないわ。誰だって脅されたら怖いものよ」
シビルが言う。息子は周囲を見渡して話しだす。
「結局、こうなるんだな。君には悪いことをしたと思うよ。こうなるなら、君が怪我することもなかった。決闘などしなければ君も彼女も今頃この街を出て、みんなで楽しく旅をしていたのに」
「今更考えたって仕方ないことだ」
「あなたこれからどうするの?」
シビルが息子に聞く。
「母さんを弔って、その後はまだ考えてないよ。難を逃れた住民がどれだけいるのか、戻って来るのか。先のことはわからないな」
「そう。十分に気をつけて」
シビルとブラッドは息子と別れて、休める場所を探して街を歩いた。シビルがドアの壊れた民家を見つけ中に入る。中は荒らされ、テーブルや椅子が倒れている。シビルが中を少し片づけ、ブラッドをソファに座らせる。
「それで、おまえはここに何をしに来たんだ?」
ブラッドが聞く。
「あなたたちに届け物があってね。ほら、回復アイテムあった方が冒険っぽいじゃない」
ブラッドは呆れた顔で言う。
「だったら早くよこせ」
「だめよ。今あげても無駄になるじゃない」
「くれるつもりなら俺がどう使おうが勝手だろ。変なとここだわりやがって」
「相変わらず可愛げないわね。それより私のこと信じる気になったのね」
「何のことだ」
「ほら、出発前は半信半疑って顔してたから。でも今は私の薬を求めてる」
ブラッドは目を逸らして言う。
「今はそれしかないからだ。俺が行かなければケイは確実に殺される」
「でもあなたが行ったら、あなたは確実に殺されるわよ? 勝算でもあるの?」
ブラッドは黙り込んだ。
「あら、ブラッドじゃない」
ブラッドは驚いて起き上がる。シビルはブラッドの口のテープを剝がしながら言う。
「可哀想に、ひどい目にあって……」
やっと話せるようになったブラッドはシビルを急かすように言う。
「何でこんなとこにいるのか知らないが、早くこれ解いてくれ」
「今はゴロツキがうろついてるから大人しくしてるのよ」
シビルは縄を解きながら言う。しかし、ブラッドは縄が解けた途端、ふらつきながら立ち上がり、シビルを押し退けて外へ行こうとする。シビルは足を伸ばして、ブラッドの足を引っかける。ブラッドはその場に倒れ、シビルをにらみつけて言う。
「何なんだ」
「言ったそばから動くから。助けてくれた人の言うことくらい聞いたらどうなの?」
「それどころじゃない」
「そんな体で出てって何ができるの。みすみす死にに行くようなものよ」
ブラッドは黙って目を逸らし、シビルが話を続ける。
「あの子を助けたいんでしょ? さっき連れ去られるの見たわ。威勢のいい子ね。でもあれは罠よ。出て行ったら危ないってことくらいわかってるはずよね」
「わかってる」
「それでも行きたいの? 冷静なあなたにしては珍しいわね。そんなに大事なの?」
「俺の身代わりで死んだら後味悪いからな」
シビルがクスっと笑って言う。
「相変わらず素直じゃないわね」
「おまえには関係ないだろ。俺は俺の好きなようにする」
ブラッドはゆっくり立ち上がる。
「私の言うこと聞くならその傷治してあげるわよ」
ブラッドは振り返り、シビルを見る。シビルもブラッドを見つめて言う。
「どうする?」
「何だ」
「あら珍しい」
「急いでんだよ。早く言え」
「治してもゴロツキを追わないこと」
「はあ? 何言ってんだ。それならいい」
「助けるなとは言わないわ。単独で乗り込むなってことよ」
ブラッドは目を逸らし黙り込む。シビルが話を続ける。
「焦る気持ちはわかるわ。でも単独で乗り込んで勝てる相手じゃない。あとの3人はどこ行ったの? ティムたちと協力しなさい。そうじゃないと薬の無駄よ」
「あいつらは、先に進んだ。もう戻らない」
「そう。じゃあ、私が探してあげるわ」
ブラッドがシビルの腕をつかむ。
「やめろ。今を逃すわけにはいかないんだよ」
「じゃあ、諦めるしかないわね。とにかく、そろそろここ出ましょ」
シビルはそう言って立ち上がり、外の様子を見る。馬賊たちが去り、街は静まり返っていた。民家の窓ガラスは割られ、壁には銃弾の跡がある。シビルとブラッドは小屋から出て、周囲を見渡しながら歩いた。市場まで来た二人が目にしたのは、たくさんの壊された露店と散乱した商品。そして無残に殺されたたくさんの遺体だった。二人は遺体を避けながら歩き、シビルがつぶやく。
「ひどいわね」
「まさに弱肉強食だな」
ブラッドが遺体を見て言う。そこへ宿屋の息子が近づいてくる。
「ブラッド。君に伝言がある」
「無事だったのか」
「ああ、伝言を伝えるために生かされたんだろう」
「そうか。それで?」
「ああ。女を返してほしければアリオト砂漠のドラゴンストーンの前に来いと言ってたよ」
「ドラゴンストーン?」
ブラッドが聞く。
「ドラゴンのように見える大きな岩があるんだ。行けばわかるはずだ」
「そうか。女将はどうした」
息子は目を逸らして黙り込んでしまう。ブラッドは話を続ける。
「残念だ。何もできなくて――」
「いや、謝るのはこっちだ。母さんは君のことを話してしまった。助けてもらったのに……」
「仕方ないわ。誰だって脅されたら怖いものよ」
シビルが言う。息子は周囲を見渡して話しだす。
「結局、こうなるんだな。君には悪いことをしたと思うよ。こうなるなら、君が怪我することもなかった。決闘などしなければ君も彼女も今頃この街を出て、みんなで楽しく旅をしていたのに」
「今更考えたって仕方ないことだ」
「あなたこれからどうするの?」
シビルが息子に聞く。
「母さんを弔って、その後はまだ考えてないよ。難を逃れた住民がどれだけいるのか、戻って来るのか。先のことはわからないな」
「そう。十分に気をつけて」
シビルとブラッドは息子と別れて、休める場所を探して街を歩いた。シビルがドアの壊れた民家を見つけ中に入る。中は荒らされ、テーブルや椅子が倒れている。シビルが中を少し片づけ、ブラッドをソファに座らせる。
「それで、おまえはここに何をしに来たんだ?」
ブラッドが聞く。
「あなたたちに届け物があってね。ほら、回復アイテムあった方が冒険っぽいじゃない」
ブラッドは呆れた顔で言う。
「だったら早くよこせ」
「だめよ。今あげても無駄になるじゃない」
「くれるつもりなら俺がどう使おうが勝手だろ。変なとここだわりやがって」
「相変わらず可愛げないわね。それより私のこと信じる気になったのね」
「何のことだ」
「ほら、出発前は半信半疑って顔してたから。でも今は私の薬を求めてる」
ブラッドは目を逸らして言う。
「今はそれしかないからだ。俺が行かなければケイは確実に殺される」
「でもあなたが行ったら、あなたは確実に殺されるわよ? 勝算でもあるの?」
ブラッドは黙り込んだ。
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