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第3話 神、褒められ気分がいい
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神の祝福を受けている。
そう賢者が言うと周りは色めきたった。
「この子は途轍もない素質の持ち主ですな」
「祝福があるなんて! 信じられないよ!」
ここにいる奴らは全員祝福とやらを知っているらしく俺が褒め称えられているというのに疎外感を感じてしまう。神の俺が神のなんたらを知らないなんてどういう事だとしかめっ面をしていたが話を聞いている内に理解できた。
通常皆が持っている魔力とは別に極稀にその者しか持たない特殊な能力の事を神の祝福と言うらしい。
つまりは俺が異世界転生させる際にオマケで与えるチート能力とかがその例だろう。
「すみませんが今見たのは秘密にして頂けませんか? いずれ旅立ってしまうまで私達は静かに暮らしたいのです」
「それもよいでしょう。こんな幼いうちから親元を離れるのはお互いに辛いでしょう、他言無用にいたします」
なんの話か分からなかったが、余り目立ちた過ぎてはいけないということだろうか? それにしても俺の祝福とは何なのだろうか、説明してくれるのを期待していたが、いずれ明らかになるでしょうと思わせぶりな言葉を残し去っていってしまった。
魔法を使う上で注意すべき項目に、己の限界を超えて使用すると体に悪影響が出るとあった。
繰り返し限界まで使う鍛錬法も有るらしいがそんな物は俺に相応しくない、成長するに連れ自然と容量が増えるので知識を蓄えることに専念しよう。
「ボール遊びしよう! マルス!」
今更ながら我が家名はネルバルトと言う。
父はネルバルト・アルフリート。
母はネルバルト・ミドラーゼ。
俺はマルネスターと言う名前のはずなのだが専らマルスと呼ばれている。言いづらいので是非マルスにして欲しいのだがコレは愛称というものらしくあだ名みたいなものだろうか。
父は俺が歩けるようになってから、やたらと体を動かす遊びに誘うようになった。
「やっ!」
「おお、上手いぞ! 頭だけじゃなく体も鍛えておくんだぞ、ほらもう1回!」
「パパと遊んでもらえて楽しそうね」
鬱陶しいから止めろとボールを投げ返すものの、まだ上手く喋れないのと嫌がっていることに気が付かない父のせいでこのやり取りは何度も続く。
母も俺の気持ちが分からないのかその光景を楽しげに見ていた。
********
3歳になった。
この頃になると母は本腰を入れて俺に魔術を教えるようになり、父も簡単な格闘術を教えこもうと熱心に教育を固め始めた。
とはいえ。
「これが回復魔法よ、凄いわマルス! やっぱりあなたは天才ね!」
「これが基本の構えだ! 流石我が子、俺を超える日も近いぞ!」
甘過ぎて辟易する程のものなので、教育と言うよりは我が子との交流のついでなのだろう。
厳しくムチを叩かれながら教えこまれるよりはよっぽどマシだがな。褒められる事自体は悪くない。
どうやら母は優秀な魔道士、父は高名な格闘術を操る武闘家のようで、学ぶべき事は多い、真面目に聞いてやると喜んで次々と教えてくれるのでどんどん吸収していっている。
「おぼっちゃま、何か御用ですか?」
「本、とって」
以前よりも話せるようになった俺は使用人も扱うことができ、今まで手の届かなかった本まで自由に読める様になりますます学を積むことができた。
世界の本。様々な国や大陸、人種が事細かく記されたものによると、どうやら今居る場所はだいぶ僻地のようだ。
魔王とやらが住み着く魔界から遠く、比較的穏やかなこの地は自然に溢れていて目立った危険もなく、発展はしていないが不自由なわけでもない。
人で賑わう大きな街では常に文明が発達し多くの者達がそこで様々な暮らしをみせるという。
「マルス、また本を読んでいたの? 勉強熱心で嬉しいわ! ママと魔術のお勉強をしましょ!」
もうこんな時間か、随分と時間を使ってしまったようだ。
俺が才能を見せてから勉強の時間というのも設けられるようになり、今は母と魔法について学ぶ時である。
「はい、昨日のおさらいね。『かのものに癒やしを、キュア』初級の回復魔法だけど基本が大事だからね、やってみて」
昨日教わった初級魔法のおさらいだが、俺はもっと凄い事を今日知ったのだ。見せつけてやろう。
「んん、喉の調子が悪いなぁ、先生にお薬貰おうかしら」
使用人の1人が体調が悪いらしい、俺は彼女に手を向け、治れと念じると。
「あれ? 良くなった。気のせいだったのかしら?」
成功だ。詠唱も無しに教わったものより上位の魔法を使えたのである。
使用人は自分の身に起きたことに気がついていないようだが、母はしっかりと見ていてくれたらしく、やってみて、と言った顔のまま固まっている。
「すごい、でしょ」
自慢気にふんぞり返り母にアピールすると彼女はプルプルと震え、俺を天井まで高く放りなげた。
「凄いわーーー! 詠唱破棄まで出来るなんて! みんな来てちょうだい! マルスが凄いことしたのよ!」
爆発したかの様に俺を高い高いしながら喜び叫ぶ母に思わず驚いてしまったが、とても気分がいい。
下界の者たちに自らを褒め称えさせる歌を作らせる神もいたがこんな気分なのだろうか、それならば早くに俺も同じことをすればよかったなと思った。
「あなたの才能は伸ばしてあげないと駄目ね。私が教えられることは限られているから誰かに頼まないと」
「それならマーリーはどうだ? この前手紙が来たとき才能のある弟子が居なくて困っていると言っていたぞ」
誰だか知らないが俺を成長させる者ならなんでもいい、俺がこの世を支配するのにまだまだ力と知識が必要なのだからな。
何10回目かの俺が○○した記念日のパーティの中、着実に覇道を進んでいることを確信した。
そう賢者が言うと周りは色めきたった。
「この子は途轍もない素質の持ち主ですな」
「祝福があるなんて! 信じられないよ!」
ここにいる奴らは全員祝福とやらを知っているらしく俺が褒め称えられているというのに疎外感を感じてしまう。神の俺が神のなんたらを知らないなんてどういう事だとしかめっ面をしていたが話を聞いている内に理解できた。
通常皆が持っている魔力とは別に極稀にその者しか持たない特殊な能力の事を神の祝福と言うらしい。
つまりは俺が異世界転生させる際にオマケで与えるチート能力とかがその例だろう。
「すみませんが今見たのは秘密にして頂けませんか? いずれ旅立ってしまうまで私達は静かに暮らしたいのです」
「それもよいでしょう。こんな幼いうちから親元を離れるのはお互いに辛いでしょう、他言無用にいたします」
なんの話か分からなかったが、余り目立ちた過ぎてはいけないということだろうか? それにしても俺の祝福とは何なのだろうか、説明してくれるのを期待していたが、いずれ明らかになるでしょうと思わせぶりな言葉を残し去っていってしまった。
魔法を使う上で注意すべき項目に、己の限界を超えて使用すると体に悪影響が出るとあった。
繰り返し限界まで使う鍛錬法も有るらしいがそんな物は俺に相応しくない、成長するに連れ自然と容量が増えるので知識を蓄えることに専念しよう。
「ボール遊びしよう! マルス!」
今更ながら我が家名はネルバルトと言う。
父はネルバルト・アルフリート。
母はネルバルト・ミドラーゼ。
俺はマルネスターと言う名前のはずなのだが専らマルスと呼ばれている。言いづらいので是非マルスにして欲しいのだがコレは愛称というものらしくあだ名みたいなものだろうか。
父は俺が歩けるようになってから、やたらと体を動かす遊びに誘うようになった。
「やっ!」
「おお、上手いぞ! 頭だけじゃなく体も鍛えておくんだぞ、ほらもう1回!」
「パパと遊んでもらえて楽しそうね」
鬱陶しいから止めろとボールを投げ返すものの、まだ上手く喋れないのと嫌がっていることに気が付かない父のせいでこのやり取りは何度も続く。
母も俺の気持ちが分からないのかその光景を楽しげに見ていた。
********
3歳になった。
この頃になると母は本腰を入れて俺に魔術を教えるようになり、父も簡単な格闘術を教えこもうと熱心に教育を固め始めた。
とはいえ。
「これが回復魔法よ、凄いわマルス! やっぱりあなたは天才ね!」
「これが基本の構えだ! 流石我が子、俺を超える日も近いぞ!」
甘過ぎて辟易する程のものなので、教育と言うよりは我が子との交流のついでなのだろう。
厳しくムチを叩かれながら教えこまれるよりはよっぽどマシだがな。褒められる事自体は悪くない。
どうやら母は優秀な魔道士、父は高名な格闘術を操る武闘家のようで、学ぶべき事は多い、真面目に聞いてやると喜んで次々と教えてくれるのでどんどん吸収していっている。
「おぼっちゃま、何か御用ですか?」
「本、とって」
以前よりも話せるようになった俺は使用人も扱うことができ、今まで手の届かなかった本まで自由に読める様になりますます学を積むことができた。
世界の本。様々な国や大陸、人種が事細かく記されたものによると、どうやら今居る場所はだいぶ僻地のようだ。
魔王とやらが住み着く魔界から遠く、比較的穏やかなこの地は自然に溢れていて目立った危険もなく、発展はしていないが不自由なわけでもない。
人で賑わう大きな街では常に文明が発達し多くの者達がそこで様々な暮らしをみせるという。
「マルス、また本を読んでいたの? 勉強熱心で嬉しいわ! ママと魔術のお勉強をしましょ!」
もうこんな時間か、随分と時間を使ってしまったようだ。
俺が才能を見せてから勉強の時間というのも設けられるようになり、今は母と魔法について学ぶ時である。
「はい、昨日のおさらいね。『かのものに癒やしを、キュア』初級の回復魔法だけど基本が大事だからね、やってみて」
昨日教わった初級魔法のおさらいだが、俺はもっと凄い事を今日知ったのだ。見せつけてやろう。
「んん、喉の調子が悪いなぁ、先生にお薬貰おうかしら」
使用人の1人が体調が悪いらしい、俺は彼女に手を向け、治れと念じると。
「あれ? 良くなった。気のせいだったのかしら?」
成功だ。詠唱も無しに教わったものより上位の魔法を使えたのである。
使用人は自分の身に起きたことに気がついていないようだが、母はしっかりと見ていてくれたらしく、やってみて、と言った顔のまま固まっている。
「すごい、でしょ」
自慢気にふんぞり返り母にアピールすると彼女はプルプルと震え、俺を天井まで高く放りなげた。
「凄いわーーー! 詠唱破棄まで出来るなんて! みんな来てちょうだい! マルスが凄いことしたのよ!」
爆発したかの様に俺を高い高いしながら喜び叫ぶ母に思わず驚いてしまったが、とても気分がいい。
下界の者たちに自らを褒め称えさせる歌を作らせる神もいたがこんな気分なのだろうか、それならば早くに俺も同じことをすればよかったなと思った。
「あなたの才能は伸ばしてあげないと駄目ね。私が教えられることは限られているから誰かに頼まないと」
「それならマーリーはどうだ? この前手紙が来たとき才能のある弟子が居なくて困っていると言っていたぞ」
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