74 / 81
4章 オリジナルリング
74話 傀儡の指輪
しおりを挟むとある路地裏。戦闘体制を取ったライヤとルシフェルがほぼ同時にお互いの指輪を発動させる。
「駆けろ!稲妻!」
「操れ!傀儡の糸!」
ライヤが稲妻をルシフェルに向けて電撃放つと傀儡と化している女性がルシフェルを庇う様に前に出される。
「きゃぁぁ!」
「なっ!」
女性の悲鳴を聞いて咄嗟に稲妻を消滅させたライヤだがその隙を狙ってルシフェルがライヤを強く殴りつけた。
「がっ!」
「傀儡の指輪はその名の通り、人や物を傀儡として操る事の出来る指輪。この指輪はお前の性格と指輪、どちらをとっても相性最悪と言えるだろう!」
「くっそ、汚ねえぞ!!」
罵声を放つライヤが再度雷鳴の指輪を発動。しかし今度は電撃をルシフェルに放つのではなく自らに雷を纏わせた。
「人で防御なんてするなら、その反応速度を超えちまえばいい!」
「ほう、悪くない判断だが」
ライヤが目にも止まらぬ速さでルシフェルに近づくが、現在の状況を確認してすぐさま後ろへ下がる。
「どこまでも汚ねえ」
その理由は単純。
「た、助けてくれ!」
「いやぁ!もういやぁ!!」
「おい!私はこの国の議員だぞ!!私をこんなことに使ってタダで済むと思うな!!」
「は、はは」
ルシフェルの操る操り人形は一つではなかったからである。
「では次だ。この悪意のない人形からの攻撃を、君はどうする?」
ルシフェルが指を動かすと操られた五人の人たちは手に持ったナイフを前に突き出し、ライヤに向かって走り出す。
「ふっざけんな外道!!」
迫り来る操り人形一人の手からナイフを弾き飛ばすライヤだが、残りの四本が襲い掛かる。
「全部吹っ飛ばしてやる!」
中年の男のナイフを吹き飛ばしたライヤの動きが止まる。ナイフにばかり気を取られていた為、男に腕を掴まれ、体に抱きつかれてしまった。これでは身動きが取れない。
「おい!君は冒険者なんだろ!早く私を助けたまえ!!」
「そうよ!私を人殺しにするつもり!!?」
ライヤの身動きを封じた男が叫び、それに便乗する様にナイフでライヤの心臓を抉ろうとする女性が涙しながら怒る。
「安心して下さい!俺が、必ず!助けますからっ!!」
身動きを封じてくる男には感電しない様に出力を抑えながら雷を見に纏い、女性や他の操り人形からの攻撃を躱して行く。だが、全ては躱しきれない。ライヤが刺されるのは時間の問題だ。
「だけど、これでっ!」
操り人形が自在に動かれると絡みついている糸を電撃で焼き落とせない。だが、ライヤの動きを止める為に身動きの出来ないこの男なら。
「駆けろ、極細稲妻!」
繊細に、無実の民間人に怪我を負わせない様に人差し指から放った一センチにも満たない電流は男の体に纏わりつく糸を見事焼き落とした。
「よし!後四人!」
これで一人は解放した。正直民間人を守る為に慎重にかつ細かく雷を練り上げた為ライヤの疲労感はかなりの物だったが、そんな事を言ってはいられない。残りの四人も即座に救出しなければ。
「フッ、ならばこれはどうする?」
ライヤの解決策を見たルシフェルは少し楽しげに笑うと狭い路地裏の入り口で右手に炎を集めた。
「なっ!火炎の指輪!?」
「何を言う。我は魔族。我ら魔族は貴様ら人間と違い、指輪など無くとも魔法を放てる!!」
幾ら狭く逃げ場のない路地裏で火炎を放たれてもライヤならば雷を纏い壁を蹴って空へ逃げれば余裕で回避が出来る。しかし、今はそうも言ってはいられない。今この瞬間も、数秒後に放たれる火炎を恐れながらも涙目でナイフを振るう人達がいるからだ。
「どうする!?」
ここでライヤだけ逃げる訳には行かない。火炎を盾で防御する?無理だ。それでは残り四人の傀儡達の攻撃でライヤの身体に四つの穴が開く事となる。操られている人を抱えて飛ぶ。これも不可能だ。何故ならライヤの腕は二つしかない。助けられるのは二人のみ。
「さあ、どうする!?ヘルファイア!!」
ルシフェルの声に合わせて黒く燃え上がる火炎が放たれた。ひとまずこの火炎を収納の指輪に入っている盾で、
「収納の指輪、そうか!!」
閃いたライヤは即座に収納の指輪を発動。取り出す魔道具は、
「取り出し!捕縛布!!」
愛用の魔道具、捕縛布。少し強度の高いただの捕縛用の布である。
「きゃっ!」
「うお!」
「ひぃ!」
「ぬぉ!?」
「は、はは」
取り出した捕縛布で傀儡化させられている人達を固定。その人の塊を炎の当たらない空へと投げ飛ばす。
「ちょっと荒々しくなります!舌、噛まない様にして下さいね!!!」
そして足に電撃を集中。電撃を纏った驚くべき跳躍で火炎を回避した。
「ほう!その様にして民衆を救うか!」
「ーーーー!?!?」
楽しげな歓喜の声を挙げるルシフェルに比例して声にならない悲鳴を挙げる操り人形達。火炎を回避して無事地面に着地したライヤがやる事は一つ。
「駆けろ!極細稲妻!!」
先程と同じ様に身動きの取れなくなっている人々の傀儡の糸を焼き切ることだ。
「あっ」
その作業中、ライヤはそう呟いた。胸が何か鋭い物に貫かれたからだ。それはルシフェルの糸が絡みついていたナイフ。どうやら人だけでなくナイフにも傀儡の糸が巻き付いていた様だ。
「人々を助ける為に敵に背を向ける、か。理解に苦しむな。ここは戦場だぞ?」
「かっはっ。くっ、」
溢れ出る血と激痛に耐えながらライヤは稲妻を走らせる。そして、見事人質となっていた五人の傀儡の糸を全て焼き落とした。
「もう、安心です、さあ」
「うわぁぁぁ!!」
「もう嫌!いやァァァァァァァァ!」
「あ、」
捕縛布を解き恐怖に支配されていた人達にライヤは優しい声をかけるが、その言葉など一切聞かずに五人の人々は全力でその場から逃走した。
「こんな目に合わせおって!訴えてやるからな!貴様の顔は覚えた!二度と冒険者など出来ない様にしてやる!!」
中でも自分は議員であると叫んでいた中年の男性は即座に自分を助けられなかったライヤを怒鳴りながら逃げていった。
「黙れ」
「がっ!」
が、その男は何処からか飛んできたナイフに頭を切り裂かれた。
「っ!皆さん逃げて!早く!!」
まだ胸にナイフが刺さった状態のライヤが宙に舞う四つのナイフを稲妻で焼き尽くす。その隙に残る四人の人間は何とか姿が見えなくなる。どうやら逃げ切れた様だ。
「がはっ!」
「何故そこまでする」
人質が逃げ切った事に安心したライヤは口の中に残る血を地面に吐き出して地に膝をつけた。そのライヤにルシフェルは攻撃はせず質問を投げかける。
「貴様は民を救った。だと言うのに救われた民は貴様を敬う事はせず、感謝の言葉すら無く、あろうことが暴言を吐いた。そんな民の為に、何故貴様は命を賭けた?」
「助けを求める人を助ける。それが、俺のしたい事だからだ」
「暴言を吐かれて尚救うのを辞めるつもりはないのか?」
「ない。俺は俺が救いたいからあの人達を助けた。お礼の言葉なんて俺は求めてねえ」
ライヤの回答にルシフェルは何処か悲しそうに、しかし何処か嬉しそうにも見える表情を見せる。
「貴様は素晴らしい男だな。今からでも遅くはない。我の民となれ。そして我に忠誠を誓え。さすればその命を助けてやろう」
ルシフェルがそう言いながらライヤに手を差し伸べる。ライヤは笑顔でその手を見つめ、即座に振り払った。
「お断りだ。目的の為なら手段を厭わない奴の民なんて、死んでもごめんだ」
「そうか、残念だ」
ルシフェルは本当に残念そうな顔を見せると苦しそうに膝をつくライヤに火炎を放った。
「何っ!」
だが、その火炎がライヤに当たる事は無かった。火炎は雷を纏ったライヤに軽く避けられてしまったのだ。
「お前の民とやらになる気はないが!だからと言ってこんなとこで死ぬつもりもねぇよ!!!」
「馬鹿な!あのナイフは確かに貴様の心臓を貫いた!」
「ああ、こいつを買ってなかったら死んでただろうな」
ライヤが手に持っているのは小さな緑色の宝石。魔道具、ストックライフ。対象者の命が危機に晒された時、この宝石を破壊するとその対象者の傷を完全に癒すと言う最高級魔道具。王都の魔道具店にてライヤが思わず衝動買いした魔道具だ。
「さあ、第二ラウンドと行こうぜ、自称未来の魔王様よぉ!!」
0
あなたにおすすめの小説
『白い結婚だったので、勝手に離婚しました。何か問題あります?』
夢窓(ゆめまど)
恋愛
「――離婚届、受理されました。お疲れさまでした」
教会の事務官がそう言ったとき、私は心の底からこう思った。
ああ、これでようやく三年分の無視に終止符を打てるわ。
王命による“形式結婚”。
夫の顔も知らず、手紙もなし、戦地から帰ってきたという噂すらない。
だから、はい、離婚。勝手に。
白い結婚だったので、勝手に離婚しました。
何か問題あります?
企業再生のプロ、倒産寸前の貧乏伯爵に転生する
namisan
ファンタジー
数々の倒産寸前の企業を立て直してきた敏腕コンサルタントの男は、過労の末に命を落とし、異世界で目を覚ます。
転生先は、帝国北部の辺境にあるアインハルト伯爵家の若き当主、アレク。
しかし、そこは「帝国の重荷」と蔑まれる、借金まみれで領民が飢える極貧領地だった。
凍える屋敷、迫りくる借金取り、絶望する家臣たち。
詰みかけた状況の中で、アレクは独自のユニーク魔法【構造解析(アナライズ)】に目覚める。
それは、物体の構造のみならず、組織の欠陥や魔法術式の不備さえも見抜き、再構築(クラフト)するチート能力だった。
「問題ない。この程度の赤字、前世の案件に比べれば可愛いものだ」
前世の経営知識と規格外の魔法で、アレクは領地の大改革に乗り出す。
痩せた土地を改良し、特産品を生み出し、隣国の経済さえも掌握していくアレク。
そんな彼の手腕に惹かれ、集まってくるのは一癖も二癖もある高貴な美女たち。
これは、底辺から這い上がった若き伯爵が、最強の布陣で自領を帝国一の都市へと発展させ、栄華を極める物語。
まったく知らない世界に転生したようです
吉川 箱
ファンタジー
おっとりヲタク男子二十五歳成人。チート能力なし?
まったく知らない世界に転生したようです。
何のヒントもないこの世界で、破滅フラグや地雷を踏まずに生き残れるか?!
頼れるのは己のみ、みたいです……?
※BLですがBがLな話は出て来ません。全年齢です。
私自身は全年齢の主人公ハーレムものBLだと思って書いてるけど、全く健全なファンタジー小説だとも言い張れるように書いております。つまり健全なお嬢さんの癖を歪めて火のないところへ煙を感じてほしい。
111話までは毎日更新。
それ以降は毎週金曜日20時に更新します。
カクヨムの方が文字数が多く、更新も先です。
大ッ嫌いな英雄様達に告ぐ
鮭とば
ファンタジー
剣があって、魔法があって、けれども機械はない世界。妖魔族、俗に言う魔族と人間族の、原因は最早誰にもわからない、終わらない小競り合いに、いつからあらわれたのかは皆わからないが、一旦の終止符をねじ込んだ聖女様と、それを守る5人の英雄様。
それが約50年前。
聖女様はそれから2回代替わりをし、数年前に3回目の代替わりをしたばかりで、英雄様は数え切れないぐらい替わってる。
英雄の座は常に5つで、基本的にどこから英雄を選ぶかは決まってる。
俺は、なんとしても、聖女様のすぐ隣に居たい。
でも…英雄は5人もいらないな。
一緒に異世界転生した飼い猫のもらったチートがやばすぎた。もしかして、メインは猫の方ですか、女神様!?
たまご
ファンタジー
アラサーの相田つかさは事故により命を落とす。
最期の瞬間に頭に浮かんだのが「猫達のごはん、これからどうしよう……」だったせいか、飼っていた8匹の猫と共に異世界転生をしてしまう。
だが、つかさが目を覚ます前に女神様からとんでもチートを授かった猫達は新しい世界へと自由に飛び出して行ってしまう。
女神様に泣きつかれ、つかさは猫達を回収するために旅に出た。
猫達が、世界を滅ぼしてしまう前に!!
「私はスローライフ希望なんですけど……」
この作品は「小説家になろう」さん、「エブリスタ」さんで完結済みです。
表紙の写真は、モデルになったうちの猫様です。
で、お前が彼女に嫌がらせをしている理由を聞かせてもらおうか?
Debby
恋愛
ヴェルトが友人からの手紙を手に辺境伯令嬢であるレィディアンスの元を訪れたのは、その手紙に「詳細は彼女に聞け」と書いてあったからだ。
簡単にいうと、手紙の内容は「学園で問題を起こした平民──エボニーを妻として引き取ってくれ」というものだった。
一方その話を聞いてしまった伯爵令嬢のオリーブは動揺していた。
ヴェルトとは静かに愛を育んできた。そんな自分を差し置いて、言われるがまま平民を妻に迎えてしまうのだろうか。
そんなオリーブの気持ちを知るはずもないエボニーは、辺境伯邸で行儀見習いをすることになる。
オリーブは何とかしてヴェルトを取り戻そうと画策し、そのことを咎められてしまう。もう後は無い。
オリーブが最後の望みをかけてヴェルトに自分を選んで欲しいと懇願する中、レィディアンスが静かに口を開いた。
「で、そろそろお前が彼女に嫌がらせをしている理由を聞かせてもらおうか」
「はい?」
ヴェルトは自分が何を言われたのか全く理解が出来なかった。
*--*--*
覗いてくださりありがとうございます。(* ᴗ ᴗ)⁾⁾
★全31話7時19時更新で、全話予約投稿済みです。
★★「このお話だけ読んでいただいてもOKです!」という前提のもと↓↓↓
このお話は独立した一つのお話ですが、「で。」シリーズのサイドストーリーでもあり、第一弾「で、私がその方に嫌がらせをする理由をお聞かせいただいても?」の「エボニーその後」でもあります(あるいは「最終話」のその後)。
第一弾「で、私がその方に嫌がらせをする理由をお聞かせいただいても?」
第二弾「で、あなたが私に嫌がらせをする理由を伺っても?」
第三弾「で、あなたが彼に嫌がらせをする理由をお話しいただいても?」
どれも女性向けHOTランキングに入り、特に第二弾はHOT一位になることが出来ました!(*´▽`人)アリガトウ
もしよかったら宜しくお願いしますね!
【完結】異世界で魔道具チートでのんびり商売生活
シマセイ
ファンタジー
大学生・誠也は工事現場の穴に落ちて異世界へ。 物体に魔力を付与できるチートスキルを見つけ、 能力を隠しつつ魔道具を作って商業ギルドで商売開始。 のんびりスローライフを目指す毎日が幕を開ける!
神々の愛し子って何したらいいの?とりあえずのんびり過ごします
夜明シスカ
ファンタジー
アリュールという世界の中にある一国。
アール国で国の端っこの海に面した田舎領地に神々の寵愛を受けし者として生を受けた子。
いわゆる"神々の愛し子"というもの。
神々の寵愛を受けているというからには、大事にしましょうね。
そういうことだ。
そう、大事にしていれば国も繁栄するだけ。
簡単でしょう?
えぇ、なんなら周りも巻き込んでみーんな幸せになりませんか??
−−−−−−
新連載始まりました。
私としては初の挑戦になる内容のため、至らぬところもあると思いますが、温めで見守って下さいませ。
会話の「」前に人物の名称入れてみることにしました。
余計読みにくいかなぁ?と思いつつ。
会話がわからない!となるよりは・・
試みですね。
誤字・脱字・文章修正 随時行います。
短編タグが長編に変更になることがございます。
*タイトルの「神々の寵愛者」→「神々の愛し子」に変更しました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる