original ring

藤丸セブン

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4章 オリジナルリング

74話 傀儡の指輪

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 とある路地裏。戦闘体制を取ったライヤとルシフェルがほぼ同時にお互いの指輪を発動させる。
「駆けろ!稲妻!」
「操れ!傀儡の糸!」
 ライヤが稲妻をルシフェルに向けて電撃放つと傀儡と化している女性がルシフェルを庇う様に前に出される。
「きゃぁぁ!」
「なっ!」
 女性の悲鳴を聞いて咄嗟に稲妻を消滅させたライヤだがその隙を狙ってルシフェルがライヤを強く殴りつけた。
「がっ!」
「傀儡の指輪はその名の通り、人や物を傀儡として操る事の出来る指輪。この指輪はお前の性格と指輪、どちらをとっても相性最悪と言えるだろう!」
「くっそ、汚ねえぞ!!」
 罵声を放つライヤが再度雷鳴の指輪を発動。しかし今度は電撃をルシフェルに放つのではなく自らに雷を纏わせた。
「人で防御なんてするなら、その反応速度を超えちまえばいい!」
「ほう、悪くない判断だが」
 ライヤが目にも止まらぬ速さでルシフェルに近づくが、現在の状況を確認してすぐさま後ろへ下がる。
「どこまでも汚ねえ」
 その理由は単純。
「た、助けてくれ!」
「いやぁ!もういやぁ!!」
「おい!私はこの国の議員だぞ!!私をこんなことに使ってタダで済むと思うな!!」
「は、はは」
 ルシフェルの操る操り人形は一つではなかったからである。
「では次だ。この悪意のない人形からの攻撃を、君はどうする?」
 ルシフェルが指を動かすと操られた五人の人たちは手に持ったナイフを前に突き出し、ライヤに向かって走り出す。
「ふっざけんな外道!!」
 迫り来る操り人形一人の手からナイフを弾き飛ばすライヤだが、残りの四本が襲い掛かる。
「全部吹っ飛ばしてやる!」
 中年の男のナイフを吹き飛ばしたライヤの動きが止まる。ナイフにばかり気を取られていた為、男に腕を掴まれ、体に抱きつかれてしまった。これでは身動きが取れない。
「おい!君は冒険者なんだろ!早く私を助けたまえ!!」
「そうよ!私を人殺しにするつもり!!?」
 ライヤの身動きを封じた男が叫び、それに便乗する様にナイフでライヤの心臓を抉ろうとする女性が涙しながら怒る。
「安心して下さい!俺が、必ず!助けますからっ!!」
 身動きを封じてくる男には感電しない様に出力を抑えながら雷を見に纏い、女性や他の操り人形からの攻撃を躱して行く。だが、全ては躱しきれない。ライヤが刺されるのは時間の問題だ。
「だけど、これでっ!」
 操り人形が自在に動かれると絡みついている糸を電撃で焼き落とせない。だが、ライヤの動きを止める為に身動きの出来ないこの男なら。
「駆けろ、極細稲妻!」
 繊細に、無実の民間人に怪我を負わせない様に人差し指から放った一センチにも満たない電流は男の体に纏わりつく糸を見事焼き落とした。
「よし!後四人!」
 これで一人は解放した。正直民間人を守る為に慎重にかつ細かく雷を練り上げた為ライヤの疲労感はかなりの物だったが、そんな事を言ってはいられない。残りの四人も即座に救出しなければ。
「フッ、ならばこれはどうする?」
 ライヤの解決策を見たルシフェルは少し楽しげに笑うと狭い路地裏の入り口で右手に炎を集めた。
「なっ!火炎の指輪!?」
「何を言う。我は魔族。我ら魔族は貴様ら人間と違い、指輪など無くとも魔法を放てる!!」
 幾ら狭く逃げ場のない路地裏で火炎を放たれてもライヤならば雷を纏い壁を蹴って空へ逃げれば余裕で回避が出来る。しかし、今はそうも言ってはいられない。今この瞬間も、数秒後に放たれる火炎を恐れながらも涙目でナイフを振るう人達がいるからだ。
「どうする!?」
 ここでライヤだけ逃げる訳には行かない。火炎を盾で防御する?無理だ。それでは残り四人の傀儡達の攻撃でライヤの身体に四つの穴が開く事となる。操られている人を抱えて飛ぶ。これも不可能だ。何故ならライヤの腕は二つしかない。助けられるのは二人のみ。
「さあ、どうする!?ヘルファイア!!」
 ルシフェルの声に合わせて黒く燃え上がる火炎が放たれた。ひとまずこの火炎を収納の指輪に入っている盾で、
「収納の指輪、そうか!!」
 閃いたライヤは即座に収納の指輪を発動。取り出す魔道具は、
「取り出し!捕縛布!!」
 愛用の魔道具、捕縛布。少し強度の高いただの捕縛用の布である。
「きゃっ!」
「うお!」
「ひぃ!」
「ぬぉ!?」
「は、はは」
 取り出した捕縛布で傀儡化させられている人達を固定。その人の塊を炎の当たらない空へと投げ飛ばす。
「ちょっと荒々しくなります!舌、噛まない様にして下さいね!!!」
 そして足に電撃を集中。電撃を纏った驚くべき跳躍で火炎を回避した。
「ほう!その様にして民衆を救うか!」
「ーーーー!?!?」
 楽しげな歓喜の声を挙げるルシフェルに比例して声にならない悲鳴を挙げる操り人形達。火炎を回避して無事地面に着地したライヤがやる事は一つ。
「駆けろ!極細稲妻!!」
 先程と同じ様に身動きの取れなくなっている人々の傀儡の糸を焼き切ることだ。
「あっ」
 その作業中、ライヤはそう呟いた。胸が何か鋭い物に貫かれたからだ。それはルシフェルの糸が絡みついていたナイフ。どうやら人だけでなくナイフにも傀儡の糸が巻き付いていた様だ。
「人々を助ける為に敵に背を向ける、か。理解に苦しむな。ここは戦場だぞ?」
「かっはっ。くっ、」
 溢れ出る血と激痛に耐えながらライヤは稲妻を走らせる。そして、見事人質となっていた五人の傀儡の糸を全て焼き落とした。
「もう、安心です、さあ」
「うわぁぁぁ!!」
「もう嫌!いやァァァァァァァァ!」
「あ、」
 捕縛布を解き恐怖に支配されていた人達にライヤは優しい声をかけるが、その言葉など一切聞かずに五人の人々は全力でその場から逃走した。
「こんな目に合わせおって!訴えてやるからな!貴様の顔は覚えた!二度と冒険者など出来ない様にしてやる!!」
 中でも自分は議員であると叫んでいた中年の男性は即座に自分を助けられなかったライヤを怒鳴りながら逃げていった。
「黙れ」
「がっ!」
 が、その男は何処からか飛んできたナイフに頭を切り裂かれた。
「っ!皆さん逃げて!早く!!」
 まだ胸にナイフが刺さった状態のライヤが宙に舞う四つのナイフを稲妻で焼き尽くす。その隙に残る四人の人間は何とか姿が見えなくなる。どうやら逃げ切れた様だ。
「がはっ!」
「何故そこまでする」
 人質が逃げ切った事に安心したライヤは口の中に残る血を地面に吐き出して地に膝をつけた。そのライヤにルシフェルは攻撃はせず質問を投げかける。
「貴様は民を救った。だと言うのに救われた民は貴様を敬う事はせず、感謝の言葉すら無く、あろうことが暴言を吐いた。そんな民の為に、何故貴様は命を賭けた?」
「助けを求める人を助ける。それが、俺のしたい事だからだ」
「暴言を吐かれて尚救うのを辞めるつもりはないのか?」
「ない。俺は俺が救いたいからあの人達を助けた。お礼の言葉なんて俺は求めてねえ」
 ライヤの回答にルシフェルは何処か悲しそうに、しかし何処か嬉しそうにも見える表情を見せる。
「貴様は素晴らしい男だな。今からでも遅くはない。我の民となれ。そして我に忠誠を誓え。さすればその命を助けてやろう」
 ルシフェルがそう言いながらライヤに手を差し伸べる。ライヤは笑顔でその手を見つめ、即座に振り払った。
「お断りだ。目的の為なら手段を厭わない奴の民なんて、死んでもごめんだ」
「そうか、残念だ」
 ルシフェルは本当に残念そうな顔を見せると苦しそうに膝をつくライヤに火炎を放った。
「何っ!」
 だが、その火炎がライヤに当たる事は無かった。火炎は雷を纏ったライヤに軽く避けられてしまったのだ。
「お前の民とやらになる気はないが!だからと言ってこんなとこで死ぬつもりもねぇよ!!!」
「馬鹿な!あのナイフは確かに貴様の心臓を貫いた!」
「ああ、こいつを買ってなかったら死んでただろうな」
 ライヤが手に持っているのは小さな緑色の宝石。魔道具、ストックライフ。対象者の命が危機に晒された時、この宝石を破壊するとその対象者の傷を完全に癒すと言う最高級魔道具。王都の魔道具店にてライヤが思わず衝動買いした魔道具だ。
「さあ、第二ラウンドと行こうぜ、自称未来の魔王様よぉ!!」
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