オトコの娘にはオトコの娘をぶつけるんだよぉぉ!!

藤丸セブン

文字の大きさ
1 / 7

一話 オトコの娘と出会い

しおりを挟む

「彼女欲しい」
 時刻は午後5時33分。友人の高木蒼(たかぎそう)と家でカードゲームをしていた八乙女友誼(やおとめゆうぎ)は唐突にそう呟いた。
「何を言ってるんだよお前は。ほら、ハイドロドラゴンでアタック」
「あ、負けた」
 呆れ顔の蒼が深い溜息を吐いていた友誼にトドメをさす。対戦が終わったとしても友誼の心の虚しさは止まらない。
「何で俺には彼女が出来ないかねぇ?勉強も出来なくはないし、運動も出来なくもない。身長はちょっと低いけど、優しいし気が利くし思いやりもあるのに。どうして彼女が出来ないかねぇー?」
「前半はそうかもだが、後半は自分で言ってるからダメなんじゃね?というかそれより明確な問題があると僕は思うがね」
「言うなよ」
 友誼が蒼を軽く睨んでその口から出てくるであろう言葉を制止する。
「お前は、可愛すぎるんだよ」
「言うなって言ったろー!」
 友誼は拗ねる様に手札のカードを机にばら撒いて床に寝転がる。そう、友誼は男でありながらその顔、体、声が全て女の子にしか見えないのだ。その様な男の子の事を一部の界隈ではオトコの娘(コ)と呼ぶ。男の娘でオトコの娘である。
「実際お前可愛いもん。僕に彼女がいなかったら告白して付き合いたいレベル」
「急に気持ち悪い事言うなっ!!?ガチで辞めて吐きそう」
 蒼の言葉に友誼は心底嫌そうな顔をして本気で気持ち悪がって口を手で抑える。先程までの可愛い顔が台無しである。
「冗談は置いておいて、友誼の恋愛対象は女の子なんだっけ?」
「当たり前だ!いや、今はそれが当たり前では無いんだろうけど。俺は女の子が恋愛対象です。俺はトランスジェンダーじゃなくて真っ当な男だからね!いや、トランスジェンダーが真っ当じゃないって訳じゃ無くてね!?」
「分かってるよ。男女差別とかトランスジェンダーとか最近厳しいもんな。大学のジェンダー論で耳にタコが出来るほど聞いたよ」
 単位目当てで受けたジェンダー論と言う講義を思い出して蒼が頭を抱える。その講義は楽に単位が取れると先輩から聞いたから受けたのだが蒼と友誼が受けるタイミングで担当する教授が代わり実に大変な講義となってしまったのだ。故に思い出したくも無い。
「なぁ、お前の彼女さんの友達紹介してくれよ。俺も彼女欲しい」
「やだよ面倒くさい。何でそんなに彼女欲しい訳?」
「当たり前だろ!お前もうすぐで夏だぞ!夏といえば海に祭りにお泊まり会などなど様々なイベントがあんだろ!!そのイベントに彼女がいないなんて俺はもう耐えきれないの!」
 友誼は彼女いない歴イコール年齢。小さい頃などは女の子と遊ぶより断然男と遊んだ方が楽しかったが、今は女の子と遊びたい。寧ろ男などいらない。
「頼めば来てくれる女の子いるだろ?同じ講義受けてる子とか」
「ああいる!友達だもん!時々話すし誘ってもいいとは思う!」
「なら」
「その子彼氏いるんだよ!!」
 半泣きになりながら友誼が叫ぶ。
「他の子は?」
「彼氏いない子もいるけど、こいつが問題で」
 友誼は自分の顔を指さしながら肩を落とす。
「要は、友誼が可愛すぎて異性として見られないと」
「・・・お前のその頻繁に俺を可愛いって言ってくる所嫌い」
「事実なんだからしゃーねーだろ」
 感情に任せて叫びまくる友誼といつもの事だからと落ち着いて淡々と話す蒼。二人は実に対照的に映るが、一番の友人同士だ。故に愚痴も悪口も言える。本音を語ることの出来る間柄だ。
「頼むよ。今度昼飯奢るから」
「いや、今度出る新弾のカートン代半額出してくれ」
「要求キツすぎんだろ!?俺はエンジョイ勢なの!!」
 二人が遊んでいるカードゲームのカートン代は約八万円。その半分だから蒼が要求している金額は四万円。それに対して友誼のお昼代は多く見積もっても二千円程度。桁が違いすぎる。
「冗談。あのラーメン屋でトッピングマシマシならいいよ」
「流石蒼!最高の相棒!」
「煽てても彼女にお願いする事しか出来ないぜー?」
 ニヤニヤと楽しげな笑みを浮かべながら蒼がスマホを操作する。
「女の子に求める条件は?」
「俺を好きになってくれそうな子」
 蒼の問いかけに自信満々に答える。友誼の好きな女の子のタイプは自分の事を好きになってくれる女の子。友誼を好きになってくれるのならば短髪でも長髪でも、胸が大きくても小さくても、顔が整っていなくても性格が最悪でも構わないのだ。
「ごめん、流石に言い過ぎた。俺を好きになってくれそうで、性格がいい子がいい」
「心配するな。雫さんの友達に悪い人なんかいねえよ」
 なんせ雫さんが超絶いい人だから、と言って蒼は謎のドヤ顔を決める。彼女自慢というのは無性に腹が立つので他所でやって欲しいものだが、今は我慢だ。蒼の顔面をぶん殴るのは彼女の友達を紹介してもらった後にしよう。
「お、聞いてみてくれるってさ」
「神!」
 彼女からの返信に思わず飛び上がって喜ぶ友誼。蒼は笑いながらそんな友誼の写真を撮った。
「何で撮った?」
「雫さんに送る。写真があった方が女の子も友誼がどんな奴か分かるだろ」
「待って、送るなら今からかっこいい服に着替えてかっこいいポーズするからそっち送ってくれ」
「二度手間だしもう送った。とりあえず暫くは雫さんに任せるしかねえよ。進展あったらお前にも伝えるから」
 蒼はそう言って散らばっていたカードをケースに収納、そのケースを鞄に仕舞い込んだ。
「帰るのか?」
「これからバイトだ。バイトまでの時間潰しって話だったろ?」
「忘れてた」
 玄関まで蒼を送った後友誼は嬉しそうに自分のベッドに飛び込む。
「はぁ、遂に念願の彼女が!うはーぁ!ドキドキしてきて眠れる気がしないぜー!!!」
 気が早すぎる胸の高鳴りを感じながら友誼は少し硬いベットで飛び跳ねた。
  ◇
「緊張する」
 それから数日後の土曜日。蒼の彼女から連絡があり、本日はダブルデートの日である。
「違うよ?ただの紹介プラスお遊びだからね?出会って初日でデートって気が早すぎるだろ」
「心の声に突っ込んで来るな!童貞舐めんな!」
 謎の理論で蒼を黙らせて未来の彼女を待つ。友誼は未来の彼女の顔も名前も知らない。知りたいと蒼に強請ったが「当日のお楽しみ」と拒否されてしまった。故に待ち遠しい。
「お待たせしちゃったかしら?」
 待ち合わせ五分前のタイミングで女性の声が聞こえた。身長が高い女性だ。髪の毛は長く、その綺麗な髪をポニーテールで纏めている。
「おおおおおお!」
「待ってないよ雫さん。僕達も今来た所」
「なんだお前の彼女さんか」
 蒼の反応で声を掛けてくれた女性が蒼の彼女である事が分かった。確か名前は。
「加藤雫よ。よろしくね、友誼君」
「あ、どうも。俺の事知ってるんすね」
「ええ。蒼君がよく話してるから」
 雫が楽しげにふふっと笑う。笑う表情は実に可愛らしいが、その仕草には大人の魅力も兼ね備えられていた。
「えっぐい程に美人だな。何で蒼なんかと付き合ってるんです?」
「彼は面白いし顔もカッコいいでしょう?何より一緒にいて気を遣わなくていいのが凄く心地良いのよ」
「うわ、ちゃんとした理由が返ってきた。蒼に彼女さんの何処が好きなのか聞いたら「美人な所」って言ってたのに!!」
 サラッと友人を売る友誼の言葉に蒼は口にしていたお茶を吹き出す。
「お前!」
「照れ隠しね。分かりやすくて可愛い」
 実に酷い言葉を言っていると言うのに雫は安心し切った様に笑っている。実際友誼も同じ結論だ。単に蒼は雫の好きな点を挙げるのが恥ずかしかったから容姿を褒めたのだろう。
「そ、それで、今日紹介してくれる子と言うのは」
「そんなに焦らないの。もうすぐ来ると思うわ」
 ソワソワと周囲を見渡す友誼に雫は微笑みながら腕時計を見て答える。時刻は待ち合わせ時間三分前。時間を守る子であればそろそろ着く頃だろう。
「あ、雫ちゃーん!」
 そんな話をしていると元気で明るい声で雫を呼ぶ人物がいた。
「ちょうど来たわね。こっちよ晴ちゃん」
「ふー。電車が遅れてしもててちょい走ってきたから疲れたわ。この人が雫ちゃんの彼氏?」
「ええ。紹介するわね」
 息を切らしてこちらに駆け寄ってきた人物を友誼は出来るだけ落ち着くように心がけながら見る。髪の毛は茶色、長さは肩程。目は少し垂れ目で口元には可愛らしいピンク色のリップが塗られている。美少女だ。友誼は即座にそう判断した。
「どうも。雫さんの彼氏の高木蒼です」
「あ、その友人の八乙女友誼です」
「これはこれはご丁寧にどうもー。ジブンの名前は男神晴(おがみはる)。今年から大学生になった大学一年生ですー。雫ちゃんとはちっさい頃からの仲なんやでー」
 少々訛りのある話し方をする晴から友誼は視線を逸らさない。ガン見である。それが良くなかったのか蒼から軽いチョップが落とされた。
「晴ちゃんって言うんだ。よろしく。もしかして大阪出身だったりする?」
「あ、それは違うで。ジブンの父ちゃんが大阪人やねん。ジブンはゴリゴリの愛知県民や。父ちゃんの使うてる関西弁真似しとったら自然とこうなってな。せやからジブンの関西弁はエセ関西弁やねん。地元の人に聞かれたら怒られてまう」
「そうかな?俺は凄く良いと思うけどな、その話し方」
「ホンマ!?そう言ってくれるとジブンも嬉しいわ!何となく分かっとったけど、友誼クンとは気ぃが合いそうやな!」
「そ、そうかな、へへへ」
 嬉しそうな表情で笑う晴に釣られて自然と友誼からも笑いが出る。しかし友誼の笑いは自然なものというよりは。
「厄介オタクみたいな笑い方だな」
「そう?推しのアイドルに認知されて喜んでるおじさんの様じゃない?」
「ボロクソ言われてる!?ってか雫さんってそういう事言うんだ!?なんかショック!!」
「ふふふ。人を見た目で判断したらダメ。一つ学んだわね」
 こうしてオトコの娘である八乙女友誼の彼女探しは幕を開けたのだった。
 
 第一話 オトコの娘と出会い
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

【完結】退職を伝えたら、無愛想な上司に囲われました〜逃げられると思ったのが間違いでした〜

来栖れいな
恋愛
逃げたかったのは、 疲れきった日々と、叶うはずのない憧れ――のはずだった。 無愛想で冷静な上司・東條崇雅。 その背中に、ただ静かに憧れを抱きながら、 仕事の重圧と、自分の想いの行き場に限界を感じて、私は退職を申し出た。 けれど―― そこから、彼の態度は変わり始めた。 苦手な仕事から外され、 負担を減らされ、 静かに、けれど確実に囲い込まれていく私。 「辞めるのは認めない」 そんな言葉すらないのに、 無言の圧力と、不器用な優しさが、私を縛りつけていく。 これは愛? それともただの執着? じれじれと、甘く、不器用に。 二人の距離は、静かに、でも確かに近づいていく――。 無愛想な上司に、心ごと囲い込まれる、じれじれ溺愛・執着オフィスラブ。 ※この物語はフィクションです。 登場する人物・団体・名称・出来事などはすべて架空であり、実在のものとは一切関係ありません。

戦場帰りの俺が隠居しようとしたら、最強の美少女たちに囲まれて逃げ場がなくなった件

さん
ファンタジー
戦場で命を削り、帝国最強部隊を率いた男――ラル。 数々の激戦を生き抜き、任務を終えた彼は、 今は辺境の地に建てられた静かな屋敷で、 わずかな安寧を求めて暮らしている……はずだった。 彼のそばには、かつて命を懸けて彼を支えた、最強の少女たち。 それぞれの立場で戦い、支え、尽くしてきた――ただ、すべてはラルのために。 今では彼の屋敷に集い、仕え、そして溺愛している。   「ラルさまさえいれば、わたくしは他に何もいりませんわ!」 「ラル様…私だけを見ていてください。誰よりも、ずっとずっと……」 「ねぇラル君、その人の名前……まだ覚えてるの?」 「ラル、そんなに気にしなくていいよ!ミアがいるから大丈夫だよねっ!」   命がけの戦場より、ヒロインたちの“甘くて圧が強い愛情”のほうが数倍キケン!? 順番待ちの寝床争奪戦、過去の恋の追及、圧バトル修羅場―― ラルの平穏な日常は、最強で一途な彼女たちに包囲されて崩壊寸前。   これは―― 【過去の傷を背負い静かに生きようとする男】と 【彼を神のように慕う最強少女たち】が織りなす、 “甘くて逃げ場のない生活”の物語。   ――戦場よりも生き延びるのが難しいのは、愛されすぎる日常だった。 ※表紙のキャラはエリスのイメージ画です。

触手エイリアンの交配実験〜研究者、被験体になる〜

桜井ベアトリクス
恋愛
異星で触手エイリアンを研究する科学者アヴァ。 唯一観察できていなかったのは、彼らの交配儀式。 上司の制止を振り切り、禁断の儀式を覗き見たアヴァは―― 交わる触手に、抑えきれない欲望を覚える。 「私も……私も交配したい」 太く長い触手が、体の奥深くまで侵入してくる。 研究者が、快楽の実験体になる夜。

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています

藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。 結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。 聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。 侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。 ※全11話 2万字程度の話です。

服を脱いで妹に食べられにいく兄

スローン
恋愛
貞操観念ってのが逆転してる世界らしいです。

処理中です...