いろはにほへと ちりになれ!

藤丸セブン

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三十四限目 河童 中編

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「ぐっぱー」とは、複数人を2組に分ける遊びで、グーとパーを出す手を変えて組分けをします。掛け声とともに参加者がグーまたはパーを出し、同じ手を出した者同士でチームを分けます。
「ここは河童の紹介をする所じゃないのだわ!!?」
 
 <三十四限目 河童 中編>
 
「よっしゃぁぁぁ!探すぞ河童!!」
 六花、日華、舳螺の三人と別れたいろは、波留、智奈は河童を探す為張り切って歩き出した。まあ約一名張り切っていないし、波留は開始早々何処かへ走り去っていったが。
「とはいえ河童を見つけるってどうするつもりなのだわ?ただ闇雲に川を眺めて歩くつもり?」
「おん。見つかるだろそれで」
「河童を甘くみすぎなのだわ!?そんなんで河童が見つかってたら今頃動物園にでも展示されてるのだわ!!」
 まず河童が存在するかどうかは置いておいて、もし存在するとしてもそんな簡単に見つかれば苦労などしない。
「む、抜かりない。私が河童を捕まえる策を持ってきた」
「おーはっちゃんお帰り」
 何故か突然いなくなった波留がコンビニの袋を手に戻ってきた。その袋の中身とは。
「きゅうり?」
「む、河童と言えばきゅうり。そしてこれも」
 波留が買ってきたものはきゅうりと縄。そして大きめの籠だった。
「きゅうりは百歩譲ってコンビニに売っていたとして、その縄と籠は何処から買ってきたのだわ!?この近くにホームセンターは無かった筈なのだわ!!」
「む、細かい事は気にしちゃダメ。いいから手伝って」
 波留がどういう経緯でこれらのアイテムを手にしたのかは気になるが知りたくない気持ちもある。故に智奈は波留の言う通り細かい事は気にせず言われた通りに波留を手伝う事にした。
「む!出来た!」
 自信満々に波留が鼻を「むふー!」と鳴らす。そこにあったのは縄に括り付けられたきゅうり。その上に籠。河童がきゅうりに釣られてきゅうりを手にした瞬間上の籠が落ちるという仕組みである。
「馬鹿なのだわ!?」
「天才だな!」
 まるで違う二つの言葉を受け波留は胸を張った。どうやらいろはの言葉を間に受けた様だ。
「あなた達は河童を猫か何かと勘違いしてるの!?河童っていうのは人間くらいの大きさがあるし(諸説あり)相撲を好むくらいに賢い妖怪なのよ!?こんな小学生の工作に引っかかる訳ないのだわ!?確かに実際に会ったら尻子玉を取られて殺されるかも知れないから出会わずに捉えるという方法は評価出来るけれど、あまりに幼稚なのだわ!!」
「お、おおう」
「む、詳しい」
 鋭いツッコミと流れて来る知識の量。そして早口な智奈の言葉達にいろはと波留は圧倒されて言葉を失っていた。
「ま、まあ。妖怪とかに興味を持った過去があって。ほら、ひとりぼっちの子供って妖怪とか怪異とかに出会う確率高いじゃない?いざ会った時に仲良くなれる様知識を」
 言い訳の様な言葉を捻り出した智奈だが、捻り出せたのは言い訳でなく墓穴だった。話している間に段々と智奈の顔が赤くなっていき、最後には両手で顔を覆っていた。
「そうだよな!妖怪とかと友達になりたいよな!!分かるぜー!分かる!」
「む!これからもいっぱい遊びに誘うから!元気出して!ちーは一人じゃない!!!」
「慰めないで。余計惨め」
 そんなこんなで罠作戦は終わった。
  ◇
「む、という事で第二の矢。落とし穴を掘ります」
 またしても何処から調達してきたのか分からないが波留は三個のスコップを持っていた。
「任せろ!うぉぉぉぉぉぉぉ!!」
「行動が早い!?待つのだわ!!河原の硬い地面なんてスコップで掘れる訳、えぇぇぇぇぇぇ掘れてる!?」
 いろはが小さなスコップで目にも止まらない速度でどんどんと穴を掘っていく。試しに智奈も穴を掘ろうとしたが少し砂や石を掬えるだけで穴など到底掘れそうにない。
「出来た!」
「む、じゃあこの布を被せて上にきゅうりを置く。完成!」
 いろはが苦労して作った落とし穴の完成度はかなり高く、穴は深い。が、隠し方が雑だ。これでは遠目から見ても何かあると分かる。そして更に。
「そんなところにきゅうりがポツンと置いてあったら簡単にバレるのだわ!!!さっきの話聞いていた!?河童は頭がいいの!!!」
 そんなこんなで落とし穴作戦は中止に終わった。
  ◇
「む、もうきゅうりが一本しかない」
 買ってきたきゅうりは三本セットだったので残り一本しかない。いや、正確に言えば罠と落とし穴に使ったきゅうりは無くなった訳ではないのだが「地面に落としたきゅうりを喰わせるわけにはいかんだろうが!」といろはが謎の衛生面を気にしたので一度川で洗ってそのまま違う袋に入れてある。いろはのその言葉を肯定するのなら罠も落とし穴もきゅうりのそのまま地面に置いていたのでその地面においたきゅうりを河童に食べさせる計画だったのだが、それは言っても無駄だろう。どうせいろはは何も考えずに言葉を口にしている。
「む、ちーもいーの事分かってきたね」
「出来れば知りたく無かったのだわ」
 さて、この残る一本のきゅうりをどうしようか。罠もダメ。落とし穴もダメ。となると。
「川に投げ込む?」
「川底で食べられて終わりなのだわ」
「そっか」
 つまり、もう作戦がない。ネタ切れである。う、この言葉は物書きには良くない。言い方を変えよう。もう作戦が思いつかない。う、思いつかないも物書きに良くない。
「ええいまどろっこしい!」
 そんな事を考えているといろはが残りのきゅうりを突然掴み、勢いよく走り出した。
「うぉぉぉぉぉ!!!河童ぁぁぁぁぁ!!私はここだあぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」
「馬鹿なのだわ!?」
 きゅうりを手にしたいろははそう叫びながら河原を走り回る。そして、
「河童ぁぁぁ!出てこいやぁぁ!!今出てきたらこのデリシャスなきゅうりをアゲリシャスぅぅ!!!?」
 勢いよく自分が掘った落とし穴に突っ込んでいった。
「馬鹿なのだわ!?いいや!馬鹿なのだわ!!!」
 疑問が確信に変わった。随分前から確信を持ってはいたが。
「きゅうりがぁぁぁ!!」
 いろはが落とし穴に潜り続けながら叫ぶ。いろはが握っていた一本のきゅうりはいろはが走り回った勢いのままいろはの手からすっぽ抜けていた。そしてきゅうりは見事な孤を描いて、川に落ちた。
「きゅうりぃぃぃぃぃぃ!!!」
 いろははきゅうりが川に落ちたのを確認するや否や即座にカサカサと四つん這いになりながら落とし穴から抜け出し、川に飛び込んだ。
「馬鹿なのだわ!?」
「む!それは洒落にならない!!」
 昨日は雨が降っていた為川の水は増水していた。いろはの身体能力なら川で溺れて最悪の事態になる心配は少なそうだが、万が一という事もある。というかきゅうり一本にそこまでする必要はない。
「何だよー。きゅうり流されちまったじゃんかー」
「きゅうりくらいまた買ってくるからいいのだわ!!!!それより貴方の安全が大事!!」
「む!流石にちーに同意!無茶良くない!」
「無茶でもねーけどわーったよー」
  ◇
「さて、きゅうりが無くなって万策尽きたと思ったろ?残念。天才いろはちゃんには次の計画があるんだよなー」
「む、それがこれ?」
 川から上がったいろはは服を乾燥させながら波留が用意した変えの服を着て地面に円を書いた。変えの服のこの数秒でどうやって用意したのかだって?これはギャグ漫画のノベル番だぜ?その程度朝飯前よ。
「よっしゃ出来た!」
 いろはの声がしたので地面に目を向けるとそのには円と一定期間に引かれた線があった。その説明だけでは非常に分かりにくいので正解をいうと、相撲の土俵を描いていたのだ。
「河童は相撲好き。だから相撲をして気を引こうって?」
「そーいーうーこった!」
「馬鹿なのだわ!? と、言いたい所だけど。もう学習したのだわ。貴方は馬鹿なのだわ」
「失礼なー」
 しかし別段他の方法が思いつく訳でもないので、この馬鹿に付き合って相撲をする事になった。
「にーしー。いろはの山ー」
「こうやって言われると私が山所有してるみたいだよな。テンション上がるぜ」
 そう言われるとそんな気もするが、別に山所有しててもテンション上がらん。(作者は)
「ひがーしー。はるのうみー」
「む、あえて平仮名にする事で本物の力士っぽく見せる。試合はやる前から始まっている」
 いろはと波留が土俵に立ち、智奈が審判を務める。
「見合って見合ってー」
「ワタクシ、こういうものです」
「む、ご趣味は?私はゲームクリエイトです」
「・・・何言ってるのだわ?」
 智奈が二人のしている事に疑問を抱くと二人は信じられないと言った表情で否を見る。
「ちっちゃんが見合いしろって言ったんだろ!」
「む!お見合いといえば趣味を聞く!これが常套手段!」
「見合ってっていうのはそういう意味じゃないのだわ!!」
 そんな茶番をつつくも相撲を行った。結果はいろはの圧勝。超絶な力によって波留を投げ飛ばし、見事に落とし穴の中にぶち込んだ。
「相撲って何なのだわ?」
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