いろはにほへと ちりになれ!

藤丸セブン

文字の大きさ
53 / 57

五十三限目 道は険しければ険しい程見える景色は美しい

しおりを挟む
 一匹縛りとは。特定のキャラクター一匹でそのゲームをクリアするという所謂縛りプレイの一種である。
「嗚呼!波留先輩!ボクに縛りプレイをしてくだるのですね!!?」
「む!?近寄るなキモい!!」
「ありがとうございます!!!」
 
 <五十三限目 道は険しければ険しい程見える景色は素晴らしい>
 
「と、言う訳で。ポ⚪︎モン新作で一匹縛りをするぞ」
 本日は土曜日。時刻は朝の九時。日華の家でいろははその様な事を口走った。寝ている日華の耳元で。
「ん、んんっ」
「まだ寝るか!?起きろ来客だ!!!」
 いろはから離れてもう一度寝ようとした日華の布団を勢い良く剥ぎ取る。すると日華にとてつもない寒さが襲いかかった。
「寒っ!ちょっとぉ。せっかく人が気持ち良く寝てるって言うのにぃ。ふぁぁ」
「折角の休日に寝るやつがあるか!!?休日は!遊ぶ為にある!!!」
「はぁぁ。仕方ないなぁ。・・・何で私の部屋にいる訳?」
「にっちゃんの父ちゃんが入れてくれた」
「お父さんめぇー!」
 恨み言を言いながら一旦パジャマから私服に着替えてリビングに行く。父に恨み言を言う為と、朝食を食べる為だ。
「お父さん!勝手にいろは家に上げないでよ!」
「む!おかわり!」
 リビングを開け放ちながら文句を言った日華の声はリビングで高らかにおかわりを宣言した声にかき消される。誰かは皆さんお分かりの筈なので敢えて言わないが、波留である。
「言ってんじゃねえか」
 言っちまった。
「はは。そう焦らなくても良い。食事は逃げたりしないからな」
「む。けれど時間は有限。にーが起きるまでに食べ終わっておきたい」
「何自然に朝ごはん食べてるの!?」
 目の前の光景に驚いた日華に波留は無言で手を上げて挨拶をし、日華の父、新田障は「おはよう、よく眠れたか?」と声をかけてきた。
「よく寝るつもりだったのにお父さんのせいで起こされたの!!」
「はは、すまない。それより日華も座るといい。今日の朝食はフレンチトーストだぞ」
「ぬぐぐ!フレンチトーストに罪はないから食べるけど、お父さんとは暫く口聞かないから!」
「ならばフレンチトーストは没収だな」
「ああもう!分かった!許すからちょうだい!」
「私にも寄越せぇぇ!!」
 こうして新田家のメンバーと来客達は朝食を共にした。
「今日にっちゃんの母ちゃんは?」
「遊びに行ってる」
「友人とランチだそうだ。まあランチとは名ばかりの談笑会と言った所だろう」
「ふーん。そんなんよりトレカの方がおもろいのに」
 いろはも友人と話すのは好きだが談笑する時間があるならトレカをやりたい。そういう生き物である。
「ってすっかりのんびりしちまったじゃねえか!!さっさと一匹縛りするぞ!!」
 ゆっくり朝食を食べ終えた瞬間思い出した様にいろはが椅子から飛び上がり日華の部屋へと駆けていく。
「にっちゃんの父ちゃん!洗い物よろしく!!」
「む。なんて失礼な。朝食をご馳走になった挙句洗い物を依頼するとは」
「構わないさ。元よりそのつもりだ。ほら、二人も行ってくるといい。あまり長い時間ゲームをし過ぎない様にな」
「む!ドロン!」
 その言葉を待ってましたとばかりに障の言葉を聞くと波留は漫画の様な走り方で日華の部屋へ駆けて行った。
「失礼な奴らだなぁ」
「いい友人を持ったな」
「あれが!?」
 確かに失礼極まりないが、子供なんてそんなものである。それより朝早くから日華を遊びに誘ってくれる友人がいる事の方が障としては嬉しかったのだ。
「はぁ。まあいっか」
 そんなこんなで日華は自身の部屋に入ると既にテレビとゲーム機の連携が完了していた。
「よし!一匹縛りするから二人は見ててな」
「しかも一緒にやるやつじゃないの!?いろはのプレイを見てるだけって!?暇じゃん!!」
「む?誰かがゲームしてるのを見るのって楽しくない?」
 こればかりは価値観の問題である。例えば作者は誰かがゲームをしているのを見るのは好きだ。リアクションとか楽しいし、苦戦してる様子とか見てるとそれはそれで楽しい。しかしただ見ているだけでは退屈なのも分かる。
「だから二人は他ごとしながら実況解説してくれや。一人じゃ悲しいからな」
「身勝手だなぁ」
「む。じゃあナルシオの探索やろ。こないだ全然やってないって言ってたやつ」
「ああ!手伝ってくれるなら助かるー!」
 こうして三人のゲーム会が始まった。
「オープニングムービーはスキップな。もう見た」
「む、初見プレイじゃないのがミソ。初見プレイじゃないからどんなポケ⚪︎ンがどこに出るのか分かる」
「そーいやどのポケモ⚪︎で一匹旅するの?」
「スター⚪︎ー」
 なぞの⚪︎ケモンと分類されるそのポ⚪︎モンで今回は旅をする。理由は簡単、話題になったからだ。
「だからヒトデ⚪︎ンを捕まえるまでは普通にやるぞ。ゲットしてからが本番な」
 そうしてプレイを始めて、目当てのポケ⚪︎ンが出る場所が見つけた。
「あった!あそこだ!!」
 そうしてプレイキャラがそこへ向かおうとすると。
 <そっちじゃないだろ。今はあっちに行こうぜ>
 ゲーム内のキャラが行く場所を制限してきた。
「私こいつ嫌い!!行き場を制限してくるし!常にこっちを監視してるし!借金してるし!弱いくせに粋がってて嫌い!」
「む、あくまで個人の感想です」
 仕方がないのでそのまま進めて遂にその場所へ。
「よっしゃ探すぞ!!」
「む、でもヒト⚪︎マンって夜にしか出なくない?」
「へ?」
「夜にするには暫くストーリー進めないとじゃない?」
「へ?」
 まずヒトデマ⚪︎ンを捕まえるのにかなりの時間がかかった。しかし、遂にゲットを果たした!
「よっしゃ!今日からお前の名前は『サイキョウ』だ!天下取ろうぜサイキョウ!!」
「む、安直な名前。でも、悪くない」
「ええー。何そのノリ」
 今まで使っていた手持ちをボックスに収納し、いろははサイキョウと一人で旅に出る。目標は当然頂点!
「早速初陣行くぞぉぉ!」
「え!?進化させないの!?」
 サイキョウはレベルアップで進化ではなくアイテムで進化する。そして、そのアイテムは今作では割と序盤に手に入る。その為日華はてっきり直ぐ進化させるものだと思っていたが、いろはは進化前のまま初陣へ駆け出した。
「いやな、進化させてもいいけどな?いきなり進化させたらつまらないだろ?そんなことしたら無双旅になっちまう」
「そうかなぁ?」
 まず一匹で戦う時点で大分不利だし、お世辞にもサイキョウとの名を与えられたモンスターは強くない。本当にいろはが危惧する様な事が起きるのだろうか。
「いや、でもまあ。序盤では確かに無双しちゃうかもか」
「ラスボス戦も余裕だぜ?」
「む、じゃあレベルアップも控えめにするの?」
「無闇にあげるつもりはねえけど、別に制限するつもりもねえかな。ユーチューバーじゃねえんだし、緩く行こうぜ年末ブッ⚪︎オフ」
 年末にしかしないCMやないか。知ってる人バカみたいに限られてくるだろ。
「行くぜ初陣!」
 そんなこんな話している間に初陣の相手であるトレーナーと会ったらしい。しっかりと名前のある強いトレーナーだ。
「行くぜサイキョウ!!!」
 相手のポ⚪︎モンは三匹。こちらは一匹。当然不利なこの戦い、制したのは!!
「え?」
 当然相手だ。なんなら相手を一匹も倒せずにサイキョウは散った。
「「「・・・」」」
「行くぞ」
「ん?」
「ウォーターストーン買いに行くぞぉぉぉぉ!!!」
 序盤無双の不安は消え、遂にサイキョウは頂点の姿へ。
「いや!まだだ!サイキョウは進化を超える!!まだ出来ねえけど。待ってろよ遥か高み!!!」
 いろはのサイキョウの冒険は!まだ始まったばかりだ!!!
 
 
「む、ポ⚪︎モン楽し過ぎて小説なんて書いてられない」
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

ちょっと大人な物語はこちらです

神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な短編物語集です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

クラスメイトの美少女と無人島に流された件

桜井正宗
青春
 修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。  高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。  どうやら、漂流して流されていたようだった。  帰ろうにも島は『無人島』。  しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。  男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?

隣に住んでいる後輩の『彼女』面がガチすぎて、オレの知ってるラブコメとはかなり違う気がする

夕姫
青春
【『白石夏帆』こいつには何を言っても無駄なようだ……】 主人公の神原秋人は、高校二年生。特別なことなど何もない、静かな一人暮らしを愛する少年だった。東京の私立高校に通い、誰とも深く関わらずただ平凡に過ごす日々。 そんな彼の日常は、ある春の日、突如現れた隣人によって塗り替えられる。後輩の白石夏帆。そしてとんでもないことを言い出したのだ。 「え?私たち、付き合ってますよね?」 なぜ?どうして?全く身に覚えのない主張に秋人は混乱し激しく否定する。だが、夏帆はまるで聞いていないかのように、秋人に猛烈に迫ってくる。何を言っても、どんな態度をとっても、その鋼のような意思は揺るがない。 「付き合っている」という謎の確信を持つ夏帆と、彼女に振り回されながらも憎めない(?)と思ってしまう秋人。これは、一人の後輩による一方的な「好き」が、平凡な先輩の日常を侵略する、予測不能な押しかけラブコメディ。

彼女に振られた俺の転生先が高校生だった。それはいいけどなんで元カノ達まで居るんだろう。

遊。
青春
主人公、三澄悠太35才。 彼女にフラれ、現実にうんざりしていた彼は、事故にあって転生。 ……した先はまるで俺がこうだったら良かったと思っていた世界を絵に書いたような学生時代。 でも何故か俺をフッた筈の元カノ達も居て!? もう恋愛したくないリベンジ主人公❌そんな主人公がどこか気になる元カノ、他多数のドタバタラブコメディー! ちょっとずつちょっとずつの更新になります!(主に土日。) 略称はフラれろう(色とりどりのラブコメに精一杯の呪いを添えて、、笑)

上司、快楽に沈むまで

赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。 冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。 だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。 入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。 真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。 ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、 篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」 疲労で僅かに緩んだ榊の表情。 その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。 「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」 指先が榊のネクタイを掴む。 引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。 拒むことも、許すこともできないまま、 彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。 言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。 だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。 そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。 「俺、前から思ってたんです。  あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」 支配する側だったはずの男が、 支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。 上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。 秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。 快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。 ――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。

あるフィギュアスケーターの性事情

蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。 しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。 何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。 この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。 そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。 この物語はフィクションです。 実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。

処理中です...