いろはにほへと ちりになれ!

藤丸セブン

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七十四限目 花粉死すべき慈悲はない

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 花粉とは、この世で最も憎き存在であり常世全ての悪である。この存在を全滅させる手段があるのならば我々は迷う事なく全てを灰塵へ帰すだろう。つまり何が言いたいかと言うと。
 
 <七十四限目 花粉死すべし慈悲はない>
 
「む゛、花粉を殺す」
 とある一日。そんな何の変哲もない一日に苦しんでいる者がいた。波留である。波留は顔中鼻水だらけで怨念を溜め込んでいたのだ。
「きったね」
「心配より先にその一言がきますか!?」
「だってきったねえよ」
 確かに綺麗ではない。綺麗ではないが、こんなに苦しんでいる友人をみて言うことがそれとは。人の心とかないんか?
「そこになかったらねえな」
 そうかぁ、在庫切れかぁ。
「む!!!花粉を殺す!!!」
 勢いよく鼻水をティッシュに放出しながら波留が決意を固めた。そう。決意を決めたのだ。
「駆逐、してやる。花粉を、この世から!一匹残らず!!!」
「進⚪︎の花粉!?そう言うことなら私も参加するぞ!!!」
 先程まで超絶ドライだったいろはが面白そうな雰囲気だけを感じ取って波留の計画に乗った。
「はぁぁぁっくしょぉぉぉん!!!やはり花粉か。ウチも同行すんでぇぇぇぇぇくしょぉぉぉぉん!!」
「よっかいん」
「む、妙に元ネタに近づけようとしたせいで変な名前になってる」
 マガ⚪︎ンの次はジャ⚪︎プの漫画のセリフを真似する一同。それはいつものおふざけに見えるが波留と楊花の目は真剣そのものだった。花粉を殺す気満々なのだ。
「待ってください!花粉を殺すって、何するつもりですか!?まさか森林伐採なんて言いませんよね!?」
「環境破壊は気持ちいいZOy!!」
「紛らわしいので会話に入ってこないでください!!」
 六花に怒られたいろははしょぼんとしながら肩を落とした。
「こほ、こほ。花粉を殺すなら私も連れてって、けほ、けほ」
「む、にーもなのか」
「日華ちゃんは咳かぁぁぁぉぁぁぁくしょぉん!!みんなそれぞれ症状が違うやなぁぁぁぁぁはぁぁくしょぉぉん!!!」
 鼻水の波留、くしゃみの楊花、咳の日華。花粉症三銃士かな?
「おい!花粉症じゃない私も入れて四天王だろ!!」
「む、消え去れ」
「工藤、これは遊びやないでぇぇぇぇくしょぉぉぉぉーん!!」
「ふざけないでくれる?」
「すんませんでした」
 圧のある声達(楊花を除く)に一瞬で屈したいろはは静かに土下座をした。花粉に苦しむ者を、花粉に苦しまぬ者は分からないのだ。一生。とは言わないが。花粉症とはいつなるか分からない恐怖の根源なのだ。奴らはあなたのすぐ後ろにいるかも知れない。
「けほけほ。それで?具体的にはどうするわけ?」
「せやで!ほんまに森を焼くなんてしたら大罪人っっっっっっっくしょどぉぉぉぉん!!」
「む゛、わがっでる。ずびぃぃぃぃぃ!!!だから私達は私達の周囲の花粉だけを殺す。より具体的に言えば、花粉をブロックする」
 花粉を防ぐ。初歩の初歩にして重要な一手だ。しかし花粉症患者は基本やっている事だ。マスク、花粉対策メガネ、ミストの花粉バリアのよく分からないやつ。それら全てが効いていれば我々はこんなに花粉へ殺意を抱かないだろう。
「む、だから開発するしかない。絶対に花粉から守ってくれる最強の鎧を!」
「開発ぅぅぅうぅっくしょぉぉぉん!!」
「げほげほ!!最強の鎧!?!?」
「ろっちゃん。私今日は帰るな。明日結果だけ教えて」
「え!?あ、は、はい」
 そう。花粉から完璧に我らを守ってくれる存在はない。ならば、作るしかあるまい。案ずる事はない。我らが悪友、橋本波留は天才である。
「そうなんですか!?」
 他のどの人類にも成し遂げられない事を、彼女ならば成し遂げられる。
「本気で言ってます!?」
 これは嘘でも誠でもない。
「どっちなんですか!!」
「む!!!そして完成したものがこちらです!!」
「本当に作ったんですか!?あと三分クッキング並みの準備の良さですね!?」
 そしてその完成した『ソレ』を。
「むぉぉぉぉぉぉぉ!!」
「覚悟せぇえやぁぁぁぁぁくしょぉぉぉん!!」
「ぎぃやぁぁぁぁぁっ!ごほぉぉ!!」
 阿吽の呼吸で波留と楊花が日華に装着した。そう、その正体とは!!!
「む!サムゥス!!!!」
 そう、いろはにほへと、ちりになれ!第六十七限目『寒すぎてサ⚪︎スになった』に登場した、アレである。正確に言うとそれの改良版である。
「ぶち殺すぞマジで」
「む!!!待った!!!今回は脱げる!!!!」
 必死で叫ぶ波留の言う通り今回は脱衣が可能な様だ。故に日華は一度スーツを脱ぐ。
「本当だ。良かった、ガチで殺すとこだっごほっ!!ごほっっぉ!!」
 スーツを脱いだ瞬間、急に喉が刺激され、日華は酷く咽せる。その衝撃はそのまま数秒続いた。
「サ⚪︎スじゃなくなった瞬間この咳。間違いないで!!!このスーツは完璧や!!!」
「偶然でしょ?けほけほ。言うてスーツ一瞬しか着てないし」
「ずびびびぃぃぃ!!!む、試してみれば分かる」
 鼻水を思い切りかんで波留がスーツの頭部分を持って日華ににじり寄る。逃げようと背後を見るとこちらは体部分を持った楊花が目を爛々と輝かせていた。
「頭はともかくどうやって体部分を一瞬で着せたんですか!?」
「む、言わせるな恥ずかしい」
「恥ずかしい事してたの!?」
 六花の疑問に波留が答え、日華が驚く。この一瞬が命取りである。
「今や!!」
 楊花が日華にスーツを押し付けるとスーツが半分に割れ、日華の体を包み込む。そして、日華の体を完全に包むとそのまま元の姿へ戻った。
「む!サムゥ⚪︎!!」
「何なのこの技術の無駄遣い!!!」
 体だけサムスになった日華に六花は優しく頭を被せる。良かった。これで完璧なサムスだ。とはならない。
「ぶぇぇぇくしょぉぉぉぉん!!それで、咳はどうや?」
「どうって言われても。・・・悔しいけどなんか収まってるね」
 日華の言葉に楊花と波留はハイタッチをした。
「というか花粉を完全にブロック出来たとして、その瞬間から咳などの症状って収まるもの何ですか?」
「む、知らん」
「そうなんやない?知らんけど」
 正直な所作者もよく知らないが、花粉がブロック出来ているなら問題ないのではないだろうか。問題なのはデザインだけだ。
「思ったんだけど。体部分要らなくない?」
「む!いる!」
「そりゃいるやろ!!何を訳分からん事言うてんねん!!」
 信じられないものを見る顔で日華を見る二人に日華は少し苛立ちながら、一応、一応!理由を聞いておくことにした。
「何で体部分がいる訳?」
「「体がないとサムスじゃない!!!」」
「あんたらさ。真面目にやるって言ってなかった?花粉は殲滅対象だからおふざけ無しでガチでやるんじゃないの?」
 日華がスーツを着ながら腕を二人に向ける。このスーツの腕は、銃になる。
「か!堪忍な!!!確かにウチもこれを着て生活するんは御免や!!!」
「む!!!サレンダー!!!」
 本気で取り組んでいてもおふざけが抜けないのがこいつらの悪い所である。その証拠に自分達は花粉がブロックされると言っている癖に装着する気が一才ないのが余計腹立たしい。
「はぁ。この技術のままマスクの形にして。重いとかちょっとメカメカしいとかその辺は目を瞑ってあげるから」
「む!承知!」
 こうして花粉を全て防ぐマスク作りが開始した。波留は日夜汗水、ではなく鼻水を垂らしながら努力を重ね。遂に、努力は形となった。
「む!完成した!これが花粉全ブロックマスク!!!」
「色を白にして」
「・・・む」
 オレンジに緑のラインが入ったマスクは着色されて白になった。これにて今度こそ完成!花粉全ブロックマスクである!!!
「やったでぇぇぇぇくしょぉぉぉぉん!!!」
「ずびびびびぃぃぃ!!!!む、鼻水垂らして頑張った」
「こほこほ。これで忌々しい花粉とおさらば出来る!!!」
「良かったですね皆さん!」
 一同は感涙の涙、ではなく鼻水とくしゃみと咳をして早速そのマスクを装着した。メカメカしくもなく大して重くもない。まさに完璧な商品が完成した。
「やった。やったよ!!!これ普通に全国に売り出そうよ!!!大儲けできごほごほっ!」
 マスクを装着して満面の笑みを見せていた日華が真顔になる。
「ま、まあ。装着してすぐ咳が無くなる訳ではないのでは?ほら、まだ鼻に花粉が残っているので」
「あ、ああ。そうだよね」
「せやで!!この程度大した問題じゃなぁぁぁぁぁぁくしょぉぉぉぉん!!!」
 六花のフォローを台無しにするくしゃみに三人は波留を見た。
「む、マスクの中身見る?」
 波留はマスクを外して見せた。するとそこには、鼻水まみれの顔面。
「・・・む、実験は失敗」
 波留はこれからも実験を続けると全員に悲しく言って、この場は解散になった。花粉全ブロックマスクは
 果たして完成するのか。それは、神のみぞ、知る。



 
「この世界において神は作者だろ?完成しねえの?」
 完成するかは知らんが次回からみんな花粉に苦しまなくていいよ。だってわざわざ咳とかくしゃみさせるのペース悪いし。いいよな、お前らは一回だけで花粉から解放されて。以上。鼻水を垂らしながら一話書き上げた作者でした。
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