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68話 攻防戦 その1
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「やべぇ、奇襲攻撃だ!! シャルムさんは居ないか!?」
冒険者ギルドの中に入って来たのは、ギルドの職員と思われる男だった。
「慌てるでない。郊外より、傭兵団体のメンバーが来ておるのか?」
「シャルムさん! はい、おそらくは傭兵団体の手の者かと思われます!」
「ふむ……シリンス家の令嬢誘拐には失敗したのじゃから、強引に攻めて来るとは思っておったが」
それでも、シャルムの予想よりも早いものだった。リリーを救出してから、まだ数日しか経過していないのだ。敵も焦りを感じているということか。
「シャルムさん……! ど、どうしましょうか……!?」
最強冒険者「アルノートゥン」の片割れであるシャルム・ローズ。その実力を知っている者はデュラン以外には居ないと言われる程に戦線に立つことは少ない人物だ。だが、こういった現状では彼女は頼られることが多い。司令塔として、冷静な判断が可能であるからだ。
「相手側の本隊については問題ない、既に手は打ってある」
「し、しかし……楽に100人以上いますよ!?」
「大丈夫だと言っておるじゃろう。あとの懸念はソウルタワーの方じゃな、おそらくはそちらに本命が来るであろうし……」
アゾットタウン占領戦はこうして静かに開始されることになった。
----------------------
「シャルムの野郎……こちらに戦力が割かれていないことわかっていやがったな……」
「……がはっ!」
アゾットタウンに攻め込む囮の部隊……ほとんどが傭兵団体で構成されており、その数は3桁になっていた。一人一人の実力も決して弱くはなく、戦力としては各国の雇われ兵として十分な活躍を見せている連中だったが……
「な、なんなんだよ、こいつは……!! こんな化け物が居るなんて、聞いてねぇぞ!!」
攻め込んで来ていた囮部隊の内、8割程度は既にデュランにより戦闘不能にさせられていた。彼からすれば準備運動にすらなっていない。二本の剣は取り出してはいるが、適当に肩に乗せながら欠伸をしている。
「こ、こいつまさか……アルノートゥンのデュラン・ウェンデッタじゃねぇか!?」
残っている傭兵団体の一人が彼の顔を見て叫んだ。他の者達も一斉にデュランを見る。
「う、嘘だろ……? あのソウルタワーの制覇に最も近いと言われている男が、こんなところに……?」
「ラーデュイの奴は何も言ってなかったぞ!」
残っている傭兵団体のメンバーはそれぞれ戦意を喪失していた。その上で、事前に情報を与えなかったジープロウダのメンバーに怒りの念をぶつけているのだ。まさに意味のないことである。
「勝てる戦いにしか参加できないのなら、すぐにでも引退するべきだったな。貴様らの敗因はシンプルなものだ……実力不足、ってな」
次の瞬間、デュランの剣には雷エネルギーが収束した。そのまま彼は、剣を地面に突き刺す。
「ぎゃあああああ!!!」
突き立てられた剣を軸として、雷エネルギーは地面を伝い、残っていた傭兵団体の全てを蹴散らした。後に立っていたのは、溜息混じりのデュランだけだ。
「この俺が雑魚退治に狩り出されるとはな」
「ははははっ、退屈そうだな。ならば、俺っちが遊んでやろうか?」
「……」
突如、現れた強者の気配。デュランはその方向に視線を向けた。彼の前に現れたのは、アビサル・ノックスだ。
「デュラン・ウェンデッタだな? 噂には聞いていた……俺っちと同じく、ダブルブレードの使い手だってね」
「誰だ、貴様は?」
デュランは興味がないという表情だ。強さ的にも彼からすれば、脅威の域には達していない。
「俺っちの名前はアビサル・ノックスだ。現在の賞金首ランキングは1位……覚えておいて損はないと思うよ」
「……繰り上がりの1位か。ならば、なおさら期待できねぇな」
以前の1位であるヴィンスヘルム以下の存在……デュランはそのように考えていた。例えヴィンスヘルムであってもデュランの相手などできないのだ。彼の落胆はより大きくなったと言える。
「後悔させてやるよ……驕り高ぶった人間はいつだって惨めに負けていくものだ」
アビサル・ノックスは闘気を開放させていく。さらに、二本の曲刀も取り出した。そして、デュランに向かって走り出して行く。その自信に満ち溢れた顔つきを消し去ってやる為に。
冒険者ギルドの中に入って来たのは、ギルドの職員と思われる男だった。
「慌てるでない。郊外より、傭兵団体のメンバーが来ておるのか?」
「シャルムさん! はい、おそらくは傭兵団体の手の者かと思われます!」
「ふむ……シリンス家の令嬢誘拐には失敗したのじゃから、強引に攻めて来るとは思っておったが」
それでも、シャルムの予想よりも早いものだった。リリーを救出してから、まだ数日しか経過していないのだ。敵も焦りを感じているということか。
「シャルムさん……! ど、どうしましょうか……!?」
最強冒険者「アルノートゥン」の片割れであるシャルム・ローズ。その実力を知っている者はデュラン以外には居ないと言われる程に戦線に立つことは少ない人物だ。だが、こういった現状では彼女は頼られることが多い。司令塔として、冷静な判断が可能であるからだ。
「相手側の本隊については問題ない、既に手は打ってある」
「し、しかし……楽に100人以上いますよ!?」
「大丈夫だと言っておるじゃろう。あとの懸念はソウルタワーの方じゃな、おそらくはそちらに本命が来るであろうし……」
アゾットタウン占領戦はこうして静かに開始されることになった。
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「シャルムの野郎……こちらに戦力が割かれていないことわかっていやがったな……」
「……がはっ!」
アゾットタウンに攻め込む囮の部隊……ほとんどが傭兵団体で構成されており、その数は3桁になっていた。一人一人の実力も決して弱くはなく、戦力としては各国の雇われ兵として十分な活躍を見せている連中だったが……
「な、なんなんだよ、こいつは……!! こんな化け物が居るなんて、聞いてねぇぞ!!」
攻め込んで来ていた囮部隊の内、8割程度は既にデュランにより戦闘不能にさせられていた。彼からすれば準備運動にすらなっていない。二本の剣は取り出してはいるが、適当に肩に乗せながら欠伸をしている。
「こ、こいつまさか……アルノートゥンのデュラン・ウェンデッタじゃねぇか!?」
残っている傭兵団体の一人が彼の顔を見て叫んだ。他の者達も一斉にデュランを見る。
「う、嘘だろ……? あのソウルタワーの制覇に最も近いと言われている男が、こんなところに……?」
「ラーデュイの奴は何も言ってなかったぞ!」
残っている傭兵団体のメンバーはそれぞれ戦意を喪失していた。その上で、事前に情報を与えなかったジープロウダのメンバーに怒りの念をぶつけているのだ。まさに意味のないことである。
「勝てる戦いにしか参加できないのなら、すぐにでも引退するべきだったな。貴様らの敗因はシンプルなものだ……実力不足、ってな」
次の瞬間、デュランの剣には雷エネルギーが収束した。そのまま彼は、剣を地面に突き刺す。
「ぎゃあああああ!!!」
突き立てられた剣を軸として、雷エネルギーは地面を伝い、残っていた傭兵団体の全てを蹴散らした。後に立っていたのは、溜息混じりのデュランだけだ。
「この俺が雑魚退治に狩り出されるとはな」
「ははははっ、退屈そうだな。ならば、俺っちが遊んでやろうか?」
「……」
突如、現れた強者の気配。デュランはその方向に視線を向けた。彼の前に現れたのは、アビサル・ノックスだ。
「デュラン・ウェンデッタだな? 噂には聞いていた……俺っちと同じく、ダブルブレードの使い手だってね」
「誰だ、貴様は?」
デュランは興味がないという表情だ。強さ的にも彼からすれば、脅威の域には達していない。
「俺っちの名前はアビサル・ノックスだ。現在の賞金首ランキングは1位……覚えておいて損はないと思うよ」
「……繰り上がりの1位か。ならば、なおさら期待できねぇな」
以前の1位であるヴィンスヘルム以下の存在……デュランはそのように考えていた。例えヴィンスヘルムであってもデュランの相手などできないのだ。彼の落胆はより大きくなったと言える。
「後悔させてやるよ……驕り高ぶった人間はいつだって惨めに負けていくものだ」
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