魔神として転生した~身にかかる火の粉は容赦なく叩き潰す~

あめり

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83話 アルビオン王国の対応 その2

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「南におよそ800キロメートル地点にある広大な森林地帯ヨルムンガント。そこにシルバードラゴン……果てはその主人と思しき魔神が存在しているとなると、我々マリアナ公国にとっても非常に厄介だ」

 百害あって一利なし……メドゥシアナの口調はまさにそれを物語っていた。

「近衛隊所属、メドゥシアナ・タイランレイブより提案いたします。我々の誇る最大戦力を持って、一気に攻め込むのがよいかと」


 メドゥシアナの発言は戦闘狂のそれを感じさせた。実際に戦闘狂というわけではないのだろうが、相当に短絡的と言わざるを得ない。それだけ自分の力に自信を持っている証か。

「おいおい、メドゥシアナの奴、天網評議会の連中も居るのに随分と大きく出たな?」

 評議会メンバーと他国の者が合同で会議を行うことは珍しいことでもないが、大抵の場合は他国の者の発言力は弱くなるが……。


「当然だ。コンバットサーチで測る限り、この場の者達では彼女はライラック老師に次いで数値が高い。それはメドゥシアナ自身も感じ取っているんだろう」


 メドゥシアナ自体はコンバットサーチのスキルは使えない。しかし、闘気の大まかな強さなどから、自らがこの場で第2位の強さであることを悟っているのだ。

 ギリアンとグウェインの会話はアナスタシアたちにも聞こえていた。アナスタシアは苦笑いになっている。

「コンバットサーチは本当に便利さね。で? 私は22000ということらしいけど……そこのお嬢さんは幾つなんだい?」

 アナスタシアは納得こそしていないが、メドゥシアナの方が実力は上とわかっているようだ。参考数値を確認したいと考えていた。


「メドゥシアナの数値は40000だ」


 40000という数値……それを聞いた時、アナスタシア、ダンダイラム、サラの表情は同時に変化した。評議会序列3位のアナスタシアと比較してあまりにも高かったからだ。


「40000……? それって凄まじい数値なんじゃないのかい?」

 基準数値がイマイチわかっていないアナスタシアだったが、自らの数値の22000と比較すれば相当に高いことは理解できた。実際に技などの強弱もある為に、2倍の実力差というわけではないかもしれないが……。


「参考までに……以前、測ったことがある傭兵団体トップのラーデュイが25000だった。それを考えれば、メドゥシアナの実力はわかってもらえると思うよ」


「ラーデュイで25000……そう考えると、メドゥシアナ様の実力はとても高いと言えます」

 サラは実際にソウルタワーでラーデュイを見ている。その時は明確な強さはわからなかったが……こうしてコンバットサーチでの強さ指数を示されるとわかりやすいというものだ。

 メドゥシアナの闘気はおそろしく強いと言える……流石に智司やデュランよりも強いということはないだろうが……それでも高すぎる数値であった。

「しかし、ライラック老師はさらに高いよ。それで? 俺としては現評議会序列1位のランファーリと2位のネロの数値を測ってみたいところだが……」

 最重要の会議であるはずだが、評議会メンバーが3人しかいないことにグウェインは違和感を覚えていた。


「ああ、他のメンバーは忙しくてね。ネロはソウルタワー占領戦の現地調査に行ってるし。まあ、ランファーリの奴は孤児院を優先したってだけだけど……」

 他のメンバーはそれぞれが担当する仕事があった為に、咄嗟に来ることができなかったのだ。評議会序列1位のランファーリだけは、自らの出身である孤児院の仕事を優先しただけではあるが。


「でもまあ、私たちの切り札の数値がわからないようで何よりだったよ」

 アルビオン王国の最終兵器であるランファーリ。彼女の実力を、コンバットサーチで計測されなかったことは幸いであると、アナスタシアは考えていた。実際にはランファーリは強力なサモナーである為、総合的な強さと直結した数値を出すのは難しいのだが。同時に、ネロの数値も出されなかったことも良かったと言えるだろう。

 アルビオン王国の決して底をみせないという教えは守られたことになる……。交渉の為の会議はそのままの面子で続けられていった。


------------------------------



「じゃあ、ヨルムンガントの森に交渉へ向かう人物は、私とサラ、ライラック老師、メドゥシアナにグウェインの5人でいいわけさね?」

「あまり多くても問題があるだろうし……その面子でいいんじゃないか」


 協議は進められていき、最終的にアナスタシア、サラ、ライラック、メドゥシアナ、グウェインの5人で向かう手筈が整った。万が一の為に、後方の待機役としてハンニバル率いる部隊が検討されている。


「ライラック老師とメドゥシアナの二人は護衛役だ。万が一、敵側が強行手段に出た場合にそれを排除する役割を担う」

「そして……私とサラが交渉役だね」

「そうなるね」

 魔神の軍勢も休戦協定を言ったのだから、問答無用で攻撃は仕掛けてこないだろうという希望的観測だ。王国最強のランファーリは簡単に出すわけには行かない。かといってネロたちも状況的には難しいのだ。

 やはり、先ほどの5人で行くのがもっとも効率的であると言えた。ライラックとメドゥシアナが護衛を務め、アナスタシアとサラで休戦協定についての交渉を行う。そして……」

「その間に、俺がコンバットサーチで敵の戦力を把握という流れさ」

 抜け目ないグウェインの計画だった。休戦協定が上手くいこうがいくまいが、敵の戦力の把握は絶対に必要だ。もしも交渉が決裂した場合でも、彼のコンバットサーチは必ず役に立つ。

 幾つかの想いが錯綜している休戦協定だが……こうして、アルビオン王国とマリアナ公国側でのメンバーも決まることになった。
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