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90話 人類存続に向けて その3
しおりを挟むライラック老師からの指導……ネロとランファーリの呼び出しなど、本来であれば断るところではあるが……。状況が切迫している為に、彼女は渋々了承した。
現在の天網評議会の中でも癖の強さは人一倍のネロ。言葉遣いは粗暴だが、意外に常識的な感性は持っているランファーリ。ある意味では正反対の二人が広場に集結していた。
「……この爺さん、誰だっけ?」
呼び出されたランファーリの開口一番。ライラック老師を前に緊張感のない発言をしている。
「マリアナ公国の重鎮、ライラック老師さランファーリ。元天網評議会の序列1位……あんたの大先輩だね」
「へえ……そうなのかよ。初めまして、ランファーリと言います」
彼女は老師の正体が分かると、頭を深々と下げて挨拶をした。それを見た老師は笑っている。
「こんなに可愛らしいお嬢さんが評議会序列1位とはの……ふぉふぉふぉ。歴代最強との呼び声もあるのじゃろう?」
「さすがに詳しいさね。その通りだよ」
評議会序列1位にして、評議会が発足して以来の天才と称されているランファーリ。彼女一人で周辺国家の牽制が可能なことは伊達ではないのだ。
「盛り上がっているところ悪いけど、僕も居ることを忘れてないか?」
「うむ、これは済まなかったの。評議会序列2位のネロ……じゃな」
ネロは人間の中でおそらくは最高齢に該当しているであろうライラック老師を、目を細くしながら見据えていた。自らと同じくワイバーンを使役できる存在だ。しかも、老師の場合は召喚でありその数も5体と多かった。
ネロはコンバットサーチは持ち合わせていないが、老師の闘気を探っていた。立ち振る舞いの印象としても相当なものだ。もしかしたら、自分よりも強いかもしれない……。
「ここへ来てもらったのは言うまでもない。来るべき魔神との戦いに備えての戦力把握じゃ。コンバットサーチで測るのが手っ取り早いのじゃろうが、戦術なども見ておきたくての。どれ、ワシがお主らの指導をしてやろうて」
圧倒的な戦闘経験を誇るライラック老師。今までに経験した戦いの数は3桁では収まらないレベルだ。コンバットサーチの数値だけではない、戦術面について彼は教える意気込みだった。だが、そうは問屋が下ろさない。
「あんた程の人間に教わるなら、光栄だよな」
ランファーリは案外素直ではあったが、アナスタシアとネロの二人はそうはいかなかった。
「戦術面の探り合いってところかい? まあ、老師と戦えるのは光栄さね。ただし、教わる気もないけどさ」
「同感だね。敵国の重鎮に教えを乞うなんて恥、とてもじゃないが出来ないよ」
評議会序列2位と3位のプライドの高さと言えるだろうか……ヨルムンガントの森の一件があろうとも、あくまでも老師は敵という認識なのだ。これでは建設的な指導は行えない。
「ふむ……意外にも1位のランファーリは素直なんじゃな。しかし、評議会序列のトップクラスを張る者達はプライドも重要じゃ。どれ、少し揉んでやろうか。二人がかりで来るがよい」
老師はネロとアナスタシアにそう言ってみせた。大陸内のほとんどの人間が言えないであろうセリフだ。老師は序列2位と3位の二人を相手にしても負けることを考えていなかった。
デイトナの中央広場での戦い……それはなんと、ライラック老師VSアナスタシア、ネロのコンビとなったのだ。
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