魔神として転生した~身にかかる火の粉は容赦なく叩き潰す~

あめり

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108話 智司とアリス その2

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「魔神様~~~」

「ん? なに?」


 ロードスター宮殿を目の前にした二人は、アウグス帝国が緊急に配備した兵器群を破壊しながら進んでいた。主にアリスの髪の刃が切り刻んでいる形だ。先ほどまでは彼らに対する銃撃なども行われていたが、まったく無意味であることが悟られたのか、いつの間にか止んでいる。


 攻撃をしてきた者達は一人残らずアリスの刃の餌食になっていたのもあるが……。


「このドーナツ美味しいですよ、食べません?」

「店にある食べ物、勝手に拝借するなよ」

「えへへ、戦闘前の腹ごしらえって感じです~~」


「まったく……」


 一片の迷いすらなく、抵抗してくる者は殺しているアリス。役割分担で、智司はボスを狙うことが決まっていた為に、余計な露払いは全てアリスが行っているのだ。


 周囲からは逃げ遅れた市民や兵士達の悲鳴が聞こえ、平和なデイトナの日常は既に消えている。


「た、助けて……!!」


「ひ、ひいいい!」



 市民や兵士達は建物の隅で縮こまるしか出来ていない。先ほどまでの応戦は嘘のように無くなっていた。


「そっちの人は助けてあげる~~~。でも、そっちの兵士は戦っていたから駄目~~~」

「な……ぐえっ!」

「きゃああああ!!」


 精密機械のように精確な髪の刃「ヴォロスソード」は、兵士の首を斬り飛ばし、すぐ隣の市民には傷一つ付けてはいなかった。最早、勝負にすらならない戦いが続いている……。無傷状態の市民の悲鳴は鳴りやむことはなかった。


 無慈悲な魔神の行進が続いて行く……。



----------------------------------------



 兵器の類をあらかた破壊し、宮殿の入り口付近へと立った二人。待ち構えていたのは、天網評議会序列1位のランファーリだった。その近くにはグウェインの姿もある。



「くふふふふ、よく此処まで来たな。お前の相手はワタシだよ、魔神」

「……貴様は?」


「ランファーリ……天網評議会序列1位だ」

「ほう……そのドラゴン達を召喚したのもお前か……」


 自信家のランファーリの裏の人格は意気揚々とした態度で頷いた。彼女の傍らに控えるダークドラゴンとホワイトドラゴンの放つ闘気も相当な闘気を放っているが、彼女自身の闘気はそれを凌駕しているようだ。智司も仮面越しではあるが、表情を一変させていた。


 もしや、この相手は自らを危機に陥れるほどの強さかもしれない……。智司は念のために警戒心を強めている。


「アリスは周囲の警戒を頼む。ないとは思うが、目の前の敵は囮かもしれない……他に強大な戦力が来たら、優先的に叩いてくれ」

「了解です!!」


 戦局は智司とランファーリ、そしてアリスと大きく二分された。ランファーリには事実上、二体の竜が付いてくるが、アリスの相手は居ない。正確にはグウェインが居たが、最早勝負にすらならない相手だ。アリスも敵の一人とは認識していない。


「なんだ、あの数値は……嘘だろう……?」


「数値……? あ、私の強さ指数のことかな? ねね、幾つなの?」


 殺す対象にすらなっていない、マリアナ公国の重鎮の一人、グウェイン。アリスは無邪気な声で彼に話しかけていた。


「28万……誰か、俺を助けてくれ……!」


 敵方の戦力数値が見えるこのスキルの存在が憎かった……。この数値は今までの中で最強を誇っていたレドンドの2倍なのだから、無理はないと言える。グウェインはあまりの事態に智司本人の戦力分析は行えないでいた。同時にランファーリ自体の戦力分析も行ってはいない。

 敵味方ともに全ての戦力を把握したわけではないが、彼は既に戦意を失っていた……。少なくとも、28万の化け物を相手に何をしても意味がないことは分かり切っているからだ。マリアナ公国最強を誇るライラック老師だろうとそれは変わらない……。


「グウェインの奴は戦意喪失になっているみたいだ……くふふふふ、楽しめそうだな? 初めてだよ、裏の私とやり合えそうな相手は……!」


 「表」のランファーリですら、アルビオン王国最強の実力を誇る猛者だった。それを軽く凌駕する「裏」の人格……魔神の能力を開放した智司と相まみえる。勝負の行方や如何に……?
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