婚約破棄令嬢、不敵に笑いながら敬愛する伯爵の元へ

あめり

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30話 人助け その2

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 タイネーブからの質問は、ある意味では残酷なものだった。ゲシュタルト王国の圧政、民衆をそれから救う為とはいえ、アイリーンの出身であるヴァルハーツ家を打倒する可能性を聞かれているのだから。

「……」

 ゲームの通りストーリーが進めば、彼女の親は死亡することはない。ただし、責任を負わされ全てを失うに等しい末路となっている。アイリーン自身はその中で死亡する場合が多かったりするが。

 アイリーンは非常に返答に困っている……隣に座るミランダは彼女の心を汲み取っていた。しかし……


「いいわよ、そんな覚悟はとっくに出来てたし」


「へえ……すごいんやなぁ……」


 アイリーンはいつもの元気な笑顔でそう言った。タイネーブもあまりに屈託なく話す彼女に少し驚いていたが、それ程の覚悟があるのだろうと理解する。

 実際は、アイリーン自身がこういう事態を想定していたことが決め手にはなっているが。

 アイリーンはヴァルハーツ家に幼少の頃より住んでいるが、その時の記憶は当然ない。転生しているのだから当たり前だが、そのために親に対する気持ちも非常に薄かったのだ。

 そうでなくては、自ら追放されるように仕向けるなど行うはずはなかった。


「アイリーン殿は本当に素晴らしいですね……今後も見て行きたいといいましょうか」

「アルガス伯爵……こういうところで、そういう発言は不味いでしょ?」

「ははは、これは失礼」


 唐突に現れた二人の惚気の空気。前方に座っているタイネーブや、他の冒険者はなんとも言えない表情をしていた。


「あのさ~、そういう惚気は良いと思うんやけど、本題に戻ってもいい?」

「あ、失礼。では、戻りましょうか」


 タイネーブの発言を受け、アルガスはすぐに素の状態に戻った。アイリーンも同じく。


「とりあえず、今のところは気前の良い返事をいただけそうと思っててもいいかな?」

「そうですね。女王陛下含め、あなた方の提案を断るとは考えづらいので……確約ではありませんが、ご期待に添えると考えていただければと思いますよ」


「ホンマに安心したわ。私達だけやと、どうしても不安が残るからな」


 タイネーブは聡明な判断力を有している。たかが冒険者が警察紛いのことをしても、国家に与える影響は少ないのだ。民衆を救う上では役に立つが、その後の改革にはつながらない場合も多い。

 それをアルガス伯爵含むアランドロ女王国を巻き込むことで、大きな改革を断行しようと考えていた。


「ありがとう、アルガス伯爵。改めてお礼を」

「ええ、まだ私は何もしていませんが」


 二人は立ち上がると、誓いの握手を交わす。今後ゲシュタルト王国が、衰退の一途を辿ることは確定的となった瞬間であった。
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