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Ⅴ
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その日、俺は朝から笑いを堪えるのに必死だった。
***
俺の名はこの国の第3王子ことカースレットだ。幼い頃から末っ子だからと、とても可愛がられた。欲しい物はなんでも手に入ったし、兄上たちも俺には優しくしてくれたものだ。
兄上たちには幼少の頃から婚約者がいたが俺には最近までいなかった。それは俺が両親から真に愛されていた証拠だと思っていた。
だって、所謂兄上たちの婚約は国の為の政略結婚だ。そこに愛は無くあるのは義務と政治の事情だけ。なんとも憐れなものだ。それに比べて俺だけは真実に愛する相手と婚約するのを許されている。だから俺には今になっても婚約者がいないのだ。そう思っていた。
それなのに、唐突にあてがわれた婚約者。
由緒正しい公爵家とはいえ、その相手は身分卑しき平民の女から生まれた庶子だと言うではないか。しかも足を患い車椅子での生活を余儀なくされている欠陥品だ。
確かに見目は美しいかもしれない。だが黒髪に黒目の儚げな少女は決して俺に微笑むことはなかった。なんとも生意気だ。
しかも、俺は将来この欠陥品と結婚して公爵家に婿入りすると聞かされて絶望した。
せっかく自由を許された愛される王子として生まれたのに、この女のせいで王族ではなくなるなんて。と。
きっとこの欠陥品女がこの素晴らしい俺に惚れて無理矢理この婚約を結んだに違いない。この公爵家は歴史だけは深くその血筋は貴重なのだと母上が言っていた。あんなに可愛がっていた俺を公爵家への生け贄にするなんて、父上も母上もなんて酷いんだ!もしかして公爵家に何かを弱味でも握られているのではないだろうか……。そうでもなければ可愛い俺を婿養子になど出す訳がない。きっと血反吐を吐くほどの決断だったに違いない。なんて、可哀想な俺なんだ!
そんな絶望だらけで日々を過ごしていた頃、俺の前に女神が現れた。
男爵令嬢のユリファ・ワンズデッドだ。
なんと、ユリファはワンズデッド男爵の愛人の子供……庶子だそうだ。だがユリファは心清らかな、とても美しい女性でいつも優しく微笑んでくれる。
いつも俺を褒め称え、いつも俺に優しくしてくれて、決して俺を否定しない。
俺のすることは間違ってない。いつもそう言ってくれた。
そうだ。俺は正しい。
周りが「ワガママも酷すぎると問題だ」なんて騒ぐことも、ユリファは「大丈夫です」と優しく微笑んでくれた。
やはり俺には“愛される”ことが似合っている。
嫌いな勉強を放棄することも、女と楽しく遊ぶことも、“愛される”べき俺には正しいことなのだと、ユリファは改めて教えてくれた。
同じ貴族の庶子なのに、こんなにも違うなんて……ユリファの人間としての価値があんな女とは価値が違い過ぎるんだろうな。そう思った。
ユリファは素晴らしい女性だ。俺はいつしかユリファを愛するようになった。だがこれは必然だと思う。だってユリファは俺にとって理想的な女だったからだ。
俺たちは誰にもバレないようにひっそりと愛を育んだ。だってあの欠陥品が邪魔しないとも限らないじゃないか。もちろん「婚約者の為に」と渡されたお金も全部ユリファに使った。あんな欠陥品女など着飾っても金の無駄だ。どうせ車椅子でうろうろするだけなのだからな。それならユリファをきらびやかにしたほうがどんなにいいか……。あの欠陥品はなぜか俺に絡んでこないので特にバレることはない。だから、どれだけユリファに使ってもいいはずだ。
そうして俺とユリファは秘めた愛をひっそりと育んでいた。婚約者のいる身でこんな事をするなど背徳的だが、きっとユリファが俺の真実の愛の相手なのだと思ったら止められなかった。
だが、俺と愛するユリファの秘めた愛が暴露される。ふたりで蜜月を過ごす日々を暴かれる日が来たのだ。
まさか、あの欠陥品女がユリファを虐めるなんて。
第3王子の婚約者という地位を笠に着て、あいつは男爵令嬢の庶子だからとユリファを虐げたのだ。
お前だって庶子の分際でユリファを虐げるなど何様のつもりだ。と憤慨した。
教科書を破り、ドレスを汚し、階段から突き落としたなど……容認できるはずがない。
泣きながら訴え来たユリファを優しく抱きしめ、俺はあいつを断罪することを決めた。
あの欠陥品女は車椅子がないと碌に動けないはずなのにユリファを階段から突き落とすなんて……もしかしたら足を患っているなんて嘘なのではないか?
そう考えたら、すべてはしっくりとしたのだ。
本当は普通に歩けるのに歩けないフリをして車椅子で生活をしてそう結論付けると一気に周りの同情を引く。なんて浅ましい女なのか。虫酸が走った。最低だ!
だから、俺は車椅子でも参加できるパーティーを催して、あの女を誘ってやったんだ。
いつもは冷たくあしらう俺がわざわざパーティーに誘ってやったんだから、きっと大喜びのはすだ。だが、その天にも登る幸福から地獄に落としてやろう。
だから俺は正義の鉄槌を落とすのだ。
「お前のような醜く卑しき女とは婚約破棄する!」
さぁ、俺のターンだ!そう思ったら、俺の興奮は留まる事を知らなかった。自分の婚約者を蔑む言葉は止めどなくあふれたし、自分の正統性を示す言葉もちゃんと言えた。
俺は確信していたのだ。
あの嘘つきな車椅子女と婚約破棄し、ユリファと新たな婚約者となる。そうすれば全てがうまくいくと、信じて疑わなかった。
なぜかって?それは、今日この日に俺は真実の愛を貫き、“真実の愛”とは神聖かつ正しいからだ!
たが。まさか。
あんなことになるなんてーーーー。
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俺の名はこの国の第3王子ことカースレットだ。幼い頃から末っ子だからと、とても可愛がられた。欲しい物はなんでも手に入ったし、兄上たちも俺には優しくしてくれたものだ。
兄上たちには幼少の頃から婚約者がいたが俺には最近までいなかった。それは俺が両親から真に愛されていた証拠だと思っていた。
だって、所謂兄上たちの婚約は国の為の政略結婚だ。そこに愛は無くあるのは義務と政治の事情だけ。なんとも憐れなものだ。それに比べて俺だけは真実に愛する相手と婚約するのを許されている。だから俺には今になっても婚約者がいないのだ。そう思っていた。
それなのに、唐突にあてがわれた婚約者。
由緒正しい公爵家とはいえ、その相手は身分卑しき平民の女から生まれた庶子だと言うではないか。しかも足を患い車椅子での生活を余儀なくされている欠陥品だ。
確かに見目は美しいかもしれない。だが黒髪に黒目の儚げな少女は決して俺に微笑むことはなかった。なんとも生意気だ。
しかも、俺は将来この欠陥品と結婚して公爵家に婿入りすると聞かされて絶望した。
せっかく自由を許された愛される王子として生まれたのに、この女のせいで王族ではなくなるなんて。と。
きっとこの欠陥品女がこの素晴らしい俺に惚れて無理矢理この婚約を結んだに違いない。この公爵家は歴史だけは深くその血筋は貴重なのだと母上が言っていた。あんなに可愛がっていた俺を公爵家への生け贄にするなんて、父上も母上もなんて酷いんだ!もしかして公爵家に何かを弱味でも握られているのではないだろうか……。そうでもなければ可愛い俺を婿養子になど出す訳がない。きっと血反吐を吐くほどの決断だったに違いない。なんて、可哀想な俺なんだ!
そんな絶望だらけで日々を過ごしていた頃、俺の前に女神が現れた。
男爵令嬢のユリファ・ワンズデッドだ。
なんと、ユリファはワンズデッド男爵の愛人の子供……庶子だそうだ。だがユリファは心清らかな、とても美しい女性でいつも優しく微笑んでくれる。
いつも俺を褒め称え、いつも俺に優しくしてくれて、決して俺を否定しない。
俺のすることは間違ってない。いつもそう言ってくれた。
そうだ。俺は正しい。
周りが「ワガママも酷すぎると問題だ」なんて騒ぐことも、ユリファは「大丈夫です」と優しく微笑んでくれた。
やはり俺には“愛される”ことが似合っている。
嫌いな勉強を放棄することも、女と楽しく遊ぶことも、“愛される”べき俺には正しいことなのだと、ユリファは改めて教えてくれた。
同じ貴族の庶子なのに、こんなにも違うなんて……ユリファの人間としての価値があんな女とは価値が違い過ぎるんだろうな。そう思った。
ユリファは素晴らしい女性だ。俺はいつしかユリファを愛するようになった。だがこれは必然だと思う。だってユリファは俺にとって理想的な女だったからだ。
俺たちは誰にもバレないようにひっそりと愛を育んだ。だってあの欠陥品が邪魔しないとも限らないじゃないか。もちろん「婚約者の為に」と渡されたお金も全部ユリファに使った。あんな欠陥品女など着飾っても金の無駄だ。どうせ車椅子でうろうろするだけなのだからな。それならユリファをきらびやかにしたほうがどんなにいいか……。あの欠陥品はなぜか俺に絡んでこないので特にバレることはない。だから、どれだけユリファに使ってもいいはずだ。
そうして俺とユリファは秘めた愛をひっそりと育んでいた。婚約者のいる身でこんな事をするなど背徳的だが、きっとユリファが俺の真実の愛の相手なのだと思ったら止められなかった。
だが、俺と愛するユリファの秘めた愛が暴露される。ふたりで蜜月を過ごす日々を暴かれる日が来たのだ。
まさか、あの欠陥品女がユリファを虐めるなんて。
第3王子の婚約者という地位を笠に着て、あいつは男爵令嬢の庶子だからとユリファを虐げたのだ。
お前だって庶子の分際でユリファを虐げるなど何様のつもりだ。と憤慨した。
教科書を破り、ドレスを汚し、階段から突き落としたなど……容認できるはずがない。
泣きながら訴え来たユリファを優しく抱きしめ、俺はあいつを断罪することを決めた。
あの欠陥品女は車椅子がないと碌に動けないはずなのにユリファを階段から突き落とすなんて……もしかしたら足を患っているなんて嘘なのではないか?
そう考えたら、すべてはしっくりとしたのだ。
本当は普通に歩けるのに歩けないフリをして車椅子で生活をしてそう結論付けると一気に周りの同情を引く。なんて浅ましい女なのか。虫酸が走った。最低だ!
だから、俺は車椅子でも参加できるパーティーを催して、あの女を誘ってやったんだ。
いつもは冷たくあしらう俺がわざわざパーティーに誘ってやったんだから、きっと大喜びのはすだ。だが、その天にも登る幸福から地獄に落としてやろう。
だから俺は正義の鉄槌を落とすのだ。
「お前のような醜く卑しき女とは婚約破棄する!」
さぁ、俺のターンだ!そう思ったら、俺の興奮は留まる事を知らなかった。自分の婚約者を蔑む言葉は止めどなくあふれたし、自分の正統性を示す言葉もちゃんと言えた。
俺は確信していたのだ。
あの嘘つきな車椅子女と婚約破棄し、ユリファと新たな婚約者となる。そうすれば全てがうまくいくと、信じて疑わなかった。
なぜかって?それは、今日この日に俺は真実の愛を貫き、“真実の愛”とは神聖かつ正しいからだ!
たが。まさか。
あんなことになるなんてーーーー。
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