【完結】可愛い義妹は最強腐女子でした〜義妹が私に婚約破棄を突き付けた王子をそっちの世界に引きずり込もうとしている件〜

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16、暴露された王子の秘密

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 あれから数日……私は久々に楽しい気分に包まれていた。

 先日、偶然出逢ったクリス様。彼は隣国からこられた行商の方で、とても珍しい花の種やアンティークの小物などを扱っていたのだ。そしてとあるオルゴールを見せて頂いたのである。

「とても素敵なオルゴールですね」

 そのアンティークオルゴールはネジを回すとパカッと蓋が開き、メロディーに合わせていくつもの小さな薔薇の花が踊るように動くという細やかな細工が施されたものだ。どうやらこのメロディーも異国のもので、薔薇をモチーフにした歌のメロディーなのだとか。

 そういえばロゼリアは薔薇の花が大好きだった。いつも薔薇の花びらを撒き散らしたいって叫んでいたくらいだ。

「このオルゴールを是非、売って頂きたいですわ。私の義妹が喜ぶと思いますの」

「いもうとさん、ですか?」

「はい。今は離れて暮らしているのですが、その子は薔薇が大好きでとても心の優しい私の自慢の義妹なのですわ」

 ロゼリアが喜ぶ姿を思い浮かべて、つい口角が上へ上がる。すると、クリス様はなんだか柔らかい笑みを浮かべいた。

「テイレシア様は、その義妹さんがとてもお好きなんですね」

「はい!それはもう!」

 私が思わずロゼリアの可愛いところを語り出すと、クリス様は嫌な顔をせずに笑顔のままずっと私の話しを聞いてくれた。

 こんなに楽しく誰かと会話するのは久しぶりたった気がする。

 もちろんお父様やお義母様とはロゼリアの可愛さについて語り合ったりするけれど、フレデリック殿下なんかは私の話などまともに聞いてくれたことがなかったからだ。ロゼリアの話をしていても必ず「ロゼリアはそんなに可愛いのに、お前にはそんなものは欠片もないな」などと口を開けば嫌味ばかり言われていた記憶しかない。わざわざ比べられなくても、私よりロゼリアの方が可愛いのは当たり前の事だ。フレデリック殿下はそれをわざわざ定期的に口にして話の腰を折ってくるつまらない男のなのである。せっかく楽しくロゼリアの話をしているのにそんなことばかりされるので、だんだん話しをするのも嫌になってきていた。

 でも、クリス様は全然違う。最初は買い物をするお客だからご機嫌をとってくれているのかもと疑ってしまったが、言葉を交わすうちにその優しさに触れた気がしたのだ。ちゃんと話しを聞いてくれて、返事をしてくれて、私の気持ちを認めてくれる。あんまりにも嬉しくて、つい「お友達になってください」とお願いしたら心良く了承してくれたのだ。出逢ったばかりでこんなことを言うなんてはしたないと思われただろうか。本当ならこんな婚約破棄された悪い噂の付き纏う女など嫌だろうに、それでもワガママを受け入れてもらえてすごく嬉しかった。

 しばらくこの街で商売をするつもりだと聞いたので宿屋と街の商人のまとめ役の方を紹介することにした。街にも私が婚約破棄された噂は広まっているはずなので少し身構えていたのだがそれについて私を責める人間はいなかった。もしかしたら嫌悪されるかもしれないと覚悟していたのに、逆に心配までしてもらって嬉しいのに涙がこぼれてしまう。これもこうやって街に足を運ぶきっかけを作ってくれたクリス様のおかげだ。彼には感謝しかなかった。
     
 あぁそれと、私からの紹介と言ってもまとめ役の方はとても厳しい方なので話を聞いてくれるだけである。例え王家が口を挟もうが絶対に贔屓はしないと有名なまとめ役なのだ。だからこそ各方面からの膨大な信頼を勝ち取っているのだろう。最近は書物も取り扱っているそうなのだが……そう言えば以前ロゼリアがまとめ役になにか話しをしていたような……あれは結局なんだったんだろうか?気にはなるがまとめ役の口はかなり固い。例え私が聞き出そうとしても絶対に話したりはしないだろう。

 それくらい厳しいまとめ役なのだ。なので、きちんと商売できるかどうかはクリス様次第なのである。もちろん応援はしますけどね。

 翌日、クリス様は無事に商売をする許可をもらえたと報告に来てくれた。なんでもクリス様の扱ってらっしゃる品物はとても珍しく価値があるそうなのだ。売上金の何割かを渡すことで売り場も借りられたそうだ。

 それからクリス様は午前中にお仕事をして、午後は私を散歩に誘いにくるようになった。

 最初は戸惑ったが、家族が私が外へ足を運ぶのは良いことだと後押ししてくれたこともあり、誘われる度に散歩にいくようになった。少し恥ずかしいが侍女も一緒だし、クリス様との会話は楽してくて途切れることはなかった。





 そんなある日、いつものようにクリス様と街へ散歩へでかけると、とんでもない事を聞いてしまったのだ。

 なんとフレデリック殿下は実は男色家で、とある男性を愛人にするためにロゼリアを利用したと言うでないか。

 なんでもその男性はロゼリアの親しい方だったそうなのだが、男色家であることを隠しながら事を進めるためには私が邪魔だったから適当な罪で断罪したとかなんとか。そして自分の欲望のために嫌がるロゼリアを無理矢理連れていき酷い目に合わせた。それも全ては、ロゼリアにその男性を呼び出させるためだけに。

 なんということなのか。まさかの暴露本が出回っていたなんて……。しかもまとめ役がこの暴露本の販売を許可したとなればその信憑性はかなり高いだろう。

 侍女がすぐさま手に入れてくれたその本には、名前は変えてあるがあきらかにフレデリック殿下だとわかる人物が自分の性癖を隠すために隠れ蓑として女性を侍らせ、その影で純真無垢な少年とあれやこれやと睦まじくなる話が書いてあったのだ。

 また、別の本にもまたもやフレデリック殿下そのままな人物がかなり爵位の低い男性に言い寄り無理矢理組敷こうとしたら逆に組敷かれてしまった話があるではないか。

 その他、いかにもフレデリック殿下らしき人物がありとあらゆる年齢・職業・爵位または平民の少年から妙齢の方まで幅広くお付き合いなさってて様々なシチュエーションのお話の暴露本が出回っているのだ。

 この暴露本がどこまでが真実なのかはわからないが、あの殿下の態度を思い出せば真っ向から否定は出来まなかった。――――いや、あり得る!だって自分は女性にモテると公言されている割にはそこまで深くお付き合いされていたご令嬢はいなかったはずだし、どちらかと言うと男友達と遊んでいる方が多かったからだ。今回の婚約破棄がそんなことのために仕組まれていただなんて!

 つまり、本命を手に入れるために私とロゼリアを利用したのね!元々最低の馬鹿王子だとは思っていたが、自分の性癖のためにロゼリアを利用するなんて許せない……!

 しかし、これはとんでもないことになってしまった。それでは本命の男性を手に入れたフレデリック殿下が利用価値の無くなったロゼリアをどうするかわからないではないか!

 それに、この事をロゼリアが知ったらどれほどショックを受けるだろうかと考えたら胸が傷んだ。

 早くロゼリアを助け出さなくては……!






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